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四人の室1
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瞬は、紗々羅が職務中、体術に励んでいた。
紗々羅は、20日間の修業を終えて三人が入宮する前日に、瞬と話したくて、職務を早めに切り上げて瞬の元に行く。
「瞬、精が出るな。」
紗々羅が声をかけて後宮内の訓練場に入ると、体術の講師は頭を垂れて端に控えた。
「陛下、こんな早い時間にお会い出来て嬉しいです。」
「邪魔したかと思ったが、良かった。」
紗々羅はにこっと笑って近くの長椅子に腰をかける。その後ろに侍女のアヤメはそっと立った。
「そなたが訓練しているところを見たい。」
「それならば、そこの衛兵と手合わせさせてください。」
後宮内の要所に配置されている衛兵を指した。
「大丈夫なのか?」
もうすぐ11歳になるとはいえ、まだ瞬は140センチほどしかないのだ。それなのに、180センチ以上はある衛兵と手合わせなどと紗々羅は心配でしかなかった。
「問題ありません。小さい体でも自分より大きな相手を倒す方法を講師より教わっております。」
譲らない黒い瞳に紗々羅は観念する。
「それなら…そこの衛兵、鎧と武器を置いて、一星室の相手をせい。」
女王の命令に戸惑いながら、衛兵は武器を置いて鎧を脱ぎ去り瞬の相手をする。
「はじめ!」
女王の掛け声で手合わせが始まる。
瞬は、教わったとおりに動こうとするが、相手は軍で鍛え上げ、その中でも優秀な軍人であるため、習った通りには当然、ならなかった。
衛兵は、この勝負の決着をどうつけようか悩んでいた。
負けようとしても力に差がありすぎて、不自然になるし、勝つわけにもいかぬ。
そのうち、瞬の呼吸が荒くなり、途切れ途切れになってきた。
衛兵が紗々羅の近くに来て、離れたところに瞬がいる間合いが出来た。
紗々羅は、つかさず、
「お前が勝て。少しぐらいケガさせても構わぬ。」
と指示を出す。
「しかし…。」
「瞬は、まだ幼いが男だ。お前なら分かるだろ。」
わざと負けたところで余計に自尊心を傷つけるだけだ。
その言葉に衛兵がうなずくと瞬が向かって来たところで、うまくいなしつつ、転ばせた。
瞬は勢いをつけすぎたせいで、派手に転び、肘と膝そして頬に擦り傷を作る。
「そこまで!」
紗々羅が更に立ち向かおうとする瞬を引き留めた。
衛兵は、鎧を付け武器を持ち、すっと自分の立ち位置に戻った。
「瞬、良くやったな。」
紗々羅は瞬の気概を褒めたが、瞬は地面に手を付いたまま悔しさに顔を歪めた。
瞬は、立ち上がるのを侍従のコウが手助けしようとするのを断り、よろよろと一人で立ち上がって、紗々羅の前に立つ。
「ずいぶんケガをしたな。」
瞬は、悔しさを隠さない顔のまま紗々羅の前に跪き、ドレスの裾を握り口元に当てた。そして震えた声で告げる。
「私は、陛下の初めての室とはなれませぬ。けれど、せめて陛下を守れる男と証明したかった。でもまだまだ未熟でした。いつか陛下が私を五星室としたいと思っていただけるよう、精進いたします。」
一呼吸おいて、瞬は、
「さーしゃ、私の敬愛する姫。」
と幼き頃の呼び名を呼び、ドレスの裾を離した。
瞬は明日からは、自分だけの女王ではないことを覚悟していた。
そして紗々羅も幼い頃のように、心地の良い馴れ合いの関係ではいられないことを悟る。
本当は手を添えて椅子に座らせて、自らケガを診てやりたかった。でも女王陛下が一星室にそんなことをしてはおかしいのだ。
「その言葉、信じて待っている。明日は恙なく三人を受け入れられるようにな。」
すっと紗々羅は立って去り際に、『しゅんしゅん、またね。』とこれまた幼き頃の別れの挨拶を静かに耳打ちした。
それだけで、瞬は心の中が温かくなって、力が湧いてくるようだった。
紗々羅は、20日間の修業を終えて三人が入宮する前日に、瞬と話したくて、職務を早めに切り上げて瞬の元に行く。
「瞬、精が出るな。」
紗々羅が声をかけて後宮内の訓練場に入ると、体術の講師は頭を垂れて端に控えた。
「陛下、こんな早い時間にお会い出来て嬉しいです。」
「邪魔したかと思ったが、良かった。」
紗々羅はにこっと笑って近くの長椅子に腰をかける。その後ろに侍女のアヤメはそっと立った。
「そなたが訓練しているところを見たい。」
「それならば、そこの衛兵と手合わせさせてください。」
後宮内の要所に配置されている衛兵を指した。
「大丈夫なのか?」
もうすぐ11歳になるとはいえ、まだ瞬は140センチほどしかないのだ。それなのに、180センチ以上はある衛兵と手合わせなどと紗々羅は心配でしかなかった。
「問題ありません。小さい体でも自分より大きな相手を倒す方法を講師より教わっております。」
譲らない黒い瞳に紗々羅は観念する。
「それなら…そこの衛兵、鎧と武器を置いて、一星室の相手をせい。」
女王の命令に戸惑いながら、衛兵は武器を置いて鎧を脱ぎ去り瞬の相手をする。
「はじめ!」
女王の掛け声で手合わせが始まる。
瞬は、教わったとおりに動こうとするが、相手は軍で鍛え上げ、その中でも優秀な軍人であるため、習った通りには当然、ならなかった。
衛兵は、この勝負の決着をどうつけようか悩んでいた。
負けようとしても力に差がありすぎて、不自然になるし、勝つわけにもいかぬ。
そのうち、瞬の呼吸が荒くなり、途切れ途切れになってきた。
衛兵が紗々羅の近くに来て、離れたところに瞬がいる間合いが出来た。
紗々羅は、つかさず、
「お前が勝て。少しぐらいケガさせても構わぬ。」
と指示を出す。
「しかし…。」
「瞬は、まだ幼いが男だ。お前なら分かるだろ。」
わざと負けたところで余計に自尊心を傷つけるだけだ。
その言葉に衛兵がうなずくと瞬が向かって来たところで、うまくいなしつつ、転ばせた。
瞬は勢いをつけすぎたせいで、派手に転び、肘と膝そして頬に擦り傷を作る。
「そこまで!」
紗々羅が更に立ち向かおうとする瞬を引き留めた。
衛兵は、鎧を付け武器を持ち、すっと自分の立ち位置に戻った。
「瞬、良くやったな。」
紗々羅は瞬の気概を褒めたが、瞬は地面に手を付いたまま悔しさに顔を歪めた。
瞬は、立ち上がるのを侍従のコウが手助けしようとするのを断り、よろよろと一人で立ち上がって、紗々羅の前に立つ。
「ずいぶんケガをしたな。」
瞬は、悔しさを隠さない顔のまま紗々羅の前に跪き、ドレスの裾を握り口元に当てた。そして震えた声で告げる。
「私は、陛下の初めての室とはなれませぬ。けれど、せめて陛下を守れる男と証明したかった。でもまだまだ未熟でした。いつか陛下が私を五星室としたいと思っていただけるよう、精進いたします。」
一呼吸おいて、瞬は、
「さーしゃ、私の敬愛する姫。」
と幼き頃の呼び名を呼び、ドレスの裾を離した。
瞬は明日からは、自分だけの女王ではないことを覚悟していた。
そして紗々羅も幼い頃のように、心地の良い馴れ合いの関係ではいられないことを悟る。
本当は手を添えて椅子に座らせて、自らケガを診てやりたかった。でも女王陛下が一星室にそんなことをしてはおかしいのだ。
「その言葉、信じて待っている。明日は恙なく三人を受け入れられるようにな。」
すっと紗々羅は立って去り際に、『しゅんしゅん、またね。』とこれまた幼き頃の別れの挨拶を静かに耳打ちした。
それだけで、瞬は心の中が温かくなって、力が湧いてくるようだった。
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