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葛藤2
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「陛下、次の月ものの予定日まであと10日しかありません。そろそろ次の室をお選びください。」
女王補佐官である久遠の仕事には、女王の閨の管理も含まれていた。
「次の室をお選びいただいたタイミングで風雅様には、三星室となっていただきます。」
女王が生む御子がどの室の子か表立って分からないようにするために、できるだけ多くの室と交わらないといけない。18歳の恋をした少女にはあまりにも残酷な規則である。
「選ばなくてはならないのか?」
震えた声で問いかける。
「はい。」
久遠は女王の気持ちを知っていたいので、余計なことは言わずに答えた。
「瞬は、だめなんだろ?」
「はい、まだ子供ですから。それに瞬様から、軍の養成所の方に連絡があったようで、そちらに入所して鍛えていただきたいとのお願いがあったようです。」
「そのようなこと、何も聞いていない。」
「そうですか。養成所の方は、許可したそうですので、あとは陛下の許可だけになっているようです。」
「瞬は、まだ子供なのに許可が下りるなんて。」
「おそらく、養成所のさらに予備組織の方でしょう。」
そこは、親を亡くして行き場を失った子供たちを養うための場所でもある。ただ、将来国のために働けるように養いながらも軍人として生きていけるよう子供に合った訓練をするのである。
紗々羅は、数年前に母と一緒に視察に行ったことを思い出した。
「養成所に入ってもし瞬に合わなかったら、すぐに出られるんだろう?」
「そうですね。ですが、瞬様は、お覚悟を決めて入られるようですから、そのようなことはないと思いますよ。」
「…昼餐を瞬と取る。」
「はい、陛下。それと次の室を本日中にお決めください。後宮の方で準備がありますから。」
「…。」
紗々羅は、返事ができなかった。
昼餐は、後宮に戻り瞬の居室で取ることにした。
「陛下、お待ちしておりました。」
瞬自ら椅子をひいて紗々羅を出迎える。
紗々羅は、瞬の顔を1日に1回は見るようにしていたが、食事を一緒に取る回数はだいぶ減ってしまっていたので、瞬は満面の笑みを浮かべる。
終始和やかで、侍従のコウは主が楽しそうにしているのを心の底から喜んでいた。
食事が終わり最後のお茶を飲む段になってから、紗々羅は、本題に入ろうとしたが、その前に瞬が口を割った。
「陛下、お願いしたきことがございます。」
「なんだ?」
「軍の予備組織への入所を認めていただけませんか。」
「なぜ、入所したいのだ。」
「私は他の室と違って、幼い時よりずっと後宮に守られて生きて来ました。このままここで大人になってしまっては、陛下をこの先、支えお守りすることができません。」
「しかし、まだ早いのでは?」
「予備組織には、私より幼い者はたくさんおります。どうか私に一人前になる機会をお与えください。」
「何年も入ることになるかもしれない。それでもか?」
「はい。」
瞬は、自分の近くで紗々羅がほかの室と特別な関係を結んでいくのを見続けることはできない。自分が大人になれば、その機会も巡ってくると分かり、少しは落ち着いていられるかもしれない。でも今の自分にその可能性はない。だったら、外に出て、紗々羅が頼れる男となって戻った方が良いのだ。
「決意は固そうだな。…では、入所を許可しよう。ただし、11歳の誕生日を一緒に祝ってからだぞ。」
「はいっ。」
と嬉しそうに瞬は返事した。
昼餐から再び執務室に戻った紗々羅は久遠に告げる。
「瞬の入所を許可した。ただし、1か月後の瞬の誕生日の祝いを終えてからにする。」
「はい、承知いたしました。それと…」
久遠が続けて何か言う前に紗々羅は、命ずる。
「これから上皇様にお会いしたい。今すぐ手配をしてくれ。」
「分かりました。」
突然の要求にもっと渋るかと思っていた紗々羅は、あっさりと要求が通ったことを不思議に思う。
「実は、上皇様から陛下が突然自分に会いたいと言って来たら、そうしてくれと言われておりました。また、お会いする場所は、上皇様のワイナリーにして欲しいとのことです。陛下が上皇様の宮に行かれると室の皆さまがお祭り騒ぎのようになってしまうからとおっしゃってましたよ。」
『母上はきっと私がこのような気持ちに陥ることを譲位の時からご存知だったのだ。』
紗々羅は、そう思いながらワイナリーに向かった。
女王補佐官である久遠の仕事には、女王の閨の管理も含まれていた。
「次の室をお選びいただいたタイミングで風雅様には、三星室となっていただきます。」
女王が生む御子がどの室の子か表立って分からないようにするために、できるだけ多くの室と交わらないといけない。18歳の恋をした少女にはあまりにも残酷な規則である。
「選ばなくてはならないのか?」
震えた声で問いかける。
「はい。」
久遠は女王の気持ちを知っていたいので、余計なことは言わずに答えた。
「瞬は、だめなんだろ?」
「はい、まだ子供ですから。それに瞬様から、軍の養成所の方に連絡があったようで、そちらに入所して鍛えていただきたいとのお願いがあったようです。」
「そのようなこと、何も聞いていない。」
「そうですか。養成所の方は、許可したそうですので、あとは陛下の許可だけになっているようです。」
「瞬は、まだ子供なのに許可が下りるなんて。」
「おそらく、養成所のさらに予備組織の方でしょう。」
そこは、親を亡くして行き場を失った子供たちを養うための場所でもある。ただ、将来国のために働けるように養いながらも軍人として生きていけるよう子供に合った訓練をするのである。
紗々羅は、数年前に母と一緒に視察に行ったことを思い出した。
「養成所に入ってもし瞬に合わなかったら、すぐに出られるんだろう?」
「そうですね。ですが、瞬様は、お覚悟を決めて入られるようですから、そのようなことはないと思いますよ。」
「…昼餐を瞬と取る。」
「はい、陛下。それと次の室を本日中にお決めください。後宮の方で準備がありますから。」
「…。」
紗々羅は、返事ができなかった。
昼餐は、後宮に戻り瞬の居室で取ることにした。
「陛下、お待ちしておりました。」
瞬自ら椅子をひいて紗々羅を出迎える。
紗々羅は、瞬の顔を1日に1回は見るようにしていたが、食事を一緒に取る回数はだいぶ減ってしまっていたので、瞬は満面の笑みを浮かべる。
終始和やかで、侍従のコウは主が楽しそうにしているのを心の底から喜んでいた。
食事が終わり最後のお茶を飲む段になってから、紗々羅は、本題に入ろうとしたが、その前に瞬が口を割った。
「陛下、お願いしたきことがございます。」
「なんだ?」
「軍の予備組織への入所を認めていただけませんか。」
「なぜ、入所したいのだ。」
「私は他の室と違って、幼い時よりずっと後宮に守られて生きて来ました。このままここで大人になってしまっては、陛下をこの先、支えお守りすることができません。」
「しかし、まだ早いのでは?」
「予備組織には、私より幼い者はたくさんおります。どうか私に一人前になる機会をお与えください。」
「何年も入ることになるかもしれない。それでもか?」
「はい。」
瞬は、自分の近くで紗々羅がほかの室と特別な関係を結んでいくのを見続けることはできない。自分が大人になれば、その機会も巡ってくると分かり、少しは落ち着いていられるかもしれない。でも今の自分にその可能性はない。だったら、外に出て、紗々羅が頼れる男となって戻った方が良いのだ。
「決意は固そうだな。…では、入所を許可しよう。ただし、11歳の誕生日を一緒に祝ってからだぞ。」
「はいっ。」
と嬉しそうに瞬は返事した。
昼餐から再び執務室に戻った紗々羅は久遠に告げる。
「瞬の入所を許可した。ただし、1か月後の瞬の誕生日の祝いを終えてからにする。」
「はい、承知いたしました。それと…」
久遠が続けて何か言う前に紗々羅は、命ずる。
「これから上皇様にお会いしたい。今すぐ手配をしてくれ。」
「分かりました。」
突然の要求にもっと渋るかと思っていた紗々羅は、あっさりと要求が通ったことを不思議に思う。
「実は、上皇様から陛下が突然自分に会いたいと言って来たら、そうしてくれと言われておりました。また、お会いする場所は、上皇様のワイナリーにして欲しいとのことです。陛下が上皇様の宮に行かれると室の皆さまがお祭り騒ぎのようになってしまうからとおっしゃってましたよ。」
『母上はきっと私がこのような気持ちに陥ることを譲位の時からご存知だったのだ。』
紗々羅は、そう思いながらワイナリーに向かった。
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