トライアングル

五嶋樒榴

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久利・リスタート

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俺は早々に茉莉花を連れて、茉莉花の知らない部屋に帰ってきた。
茉莉花は躊躇したが、俺に背中を押されて部屋に入ってくれた。
玄関のドアを閉めると、茉莉花はフッと息を軽く吐いた。

「前のマンションより、新しい気がする」

茉莉花は俺にそう言うと、白いクロスを貼った壁を撫でた。

「新築のマンションだったからね。いい物件だったよ」

上がるように促すと、茉莉花は「お邪魔します」と呟いてリビングに入って行った。

「部屋の広さは前とあまり変わらないんだけど、新しい分気持ちがいいでしょ?」

俺はなるべく、他愛もない会話を投げかけた。
茉莉花の今の気持ちがまだ掴みきれてないのが本音。
正直茉莉花はまだ遠慮がちだった。あんなに慣れ親しんでいたのによそよそしい。
その壁を作ったのは俺のせいでもあるんだけどね。

今すぐにでも茉莉花を抱きしめたい衝動に駆られながらも、失った時間と信頼をまず回復させるのが先だった。

「久利だけずるいなぁ。こんなステキな部屋見つけてたんだ」

茉莉花が言うと、俺は冗談半分、本音半分に「じゃあ、一緒に住む?」って言ってみた。
昔の茉莉花なら絶対喜んでくれたであろうセリフも、まだ今の茉莉花には響かなかったらしい。

「なんて、ね」

誤魔化して付け足してみた。なんか、めっちゃカッコ悪い俺。つい笑ってしまった。茉莉花がキョトンとしている。
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