あなたの指先で触れられたい

五嶋樒榴

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天使の悩み

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酔った星川をタクシーに乗せると、橋元は蓮見の家の庭で一服を始めた。
「さっきの耳打ち聞きたいんだろ?」
橋元がニヤリとして蓮見を見つめる。蓮見はキッと橋元を睨む。
「全く、ガキかお前は」
煙草を旨そうに吸いながら橋元は言う。
「何がだよ」
ムスッとして蓮見は言う。
「真冬君とデキてんだろ」
橋元があっさり言うので、蓮見はブッと吹き出した。
「なんで、分かったんだよ!」
焦る蓮見に橋元は飄々としたままポツリと言う。
携帯灰皿を出すと、きちんと灰をその中に落とす。
「俺と同類だから」
橋元の告白に蓮見はビックリして橋元から目が離せない。
「俺のツレも男だよ。しかも、俺はもう早い段階でそっちの自覚があったわけ。お前みたいに真冬君が初めてって訳じゃねーの」
聞けば聞くほど橋元がわからなくなる。
「じゃあ、大学時代も?もう、そっちだったの?」
蓮見は狼狽する。全く気がつかなかった。
「ああ。お前と好みが被ったな。俺も真冬君みたいなのタイプ。ツレが居なかったら口説いてた」
楽しそうに橋元が言うと、蓮見は口を真一文字にする。
「お前は知り合った時から全く好みじゃなかったから話があったし、ダチにもなれたが、その当時に開眼してたらライバルになってたかもな」
ケラケラとずっと楽しそうに橋元は笑う。
「真冬だから、俺は真冬と付き合ってるんだよ。真冬じゃなきゃダメなの!」
蓮見は真冬大好きをアピールする。ムキになって力説する。
「そうだろうな。思いっきり女好きだったもんな。ゆるーいシモだったしな」
昔のやんちゃを言われると蓮見は何も言い返せない。
「女の趣味も悪かったなー。だから大学病院やめた途端にフラれんだよ」
その事についても何も言い返せない。
「今は違うぞ!一途だ!真冬だけが大事だ!」
「うん。真冬君見てればわかる。やっとまともな恋愛してると思った」
あくまで上から目線で、変わらねーなと蓮見は笑う。
「さっきのメール交換だけどさ」
それを気にしてイジけてんのかと橋元は笑う。
「不安なんだろ。ノンケがいきなり男の恋人ができたんだからさ。お前には言えない事を聞きたいんだろ」
「そんな!聞くことなんてないだろッ!」
蓮見がまだムキになる。
「どうせまだセックスしてないんだろ?」
橋元の言葉に蓮見は顔を背けた。
「真冬君見てれば分かるって言ってるだろ。お前が本気の相手に無茶しないことぐらい分かってるよ」
吸い殻を携帯灰皿に入れて橋元は蓮見を見る。
「セックスだけがすべてじゃねーけど、正直プラスαで欲しいもんなんだよ。とにかく、お前は少し冷静になれ」
クスクス笑いながら橋元は言う。
「さてと。タクシー呼んでくれよ」
橋元はそう言うと部屋に戻った。
蓮見はスマホでタクシーを呼ぶ。
部屋の中に目をやると、キッチンで真冬と橋元が楽しそうに笑っている。
その自然な感じに、蓮見は嫉妬しつつも笑った。
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