六本木の鴉-カラス-(鳴かない杜鵑 episode2)

五嶋樒榴

文字の大きさ
50 / 106
cinque

しおりを挟む
真春はもう春休みに入っていたが、工と会う口実を作るためにバイトを始めていた。その送り迎えを工にさせていた。

「真春さんの大学で、六本木の鴉って聞いたことありますか?」

工から話しかけることがほぼないので、話しかけられて真春はびっくりして工を見る。

「六本木の鴉?何かのお店?」

見当違いの返事に、真春は知らないんだと理解した。

「いえ。ドラッグの一種です」

ドラッグと聞いて、真春はピクッとする。

「どうしたの?急にそんなこと聞くとか」

不審がって真春は尋ねる。

「俺と真春さんが出会った場所を覚えてますか?」

自分の質問を無視さてれ真春はムッとしたが、工の問いに素直に頷く。

「覚えてるよ。新宿のあの場所」

「あの時俺は、組のシマの様子を見に行ってたんですよ。最近は半グレ集団がやりたい放題やってはシマを荒らすもんでね」

工が何を言いたいのか真春は理解できない。
どう聞いても、自分との出会いの思い出話ではない事は理解した。

「その半グレ集団、愚嵐怒って奴らですが、六本木の鴉と言うドラッグを資金源にしているようなんです」

これで質問の意図が繋がるのかと真春は思った。

「六本木の鴉と言うのは、高校生、大学生を中心に広まってます。それを今、頭が潰そうとしてるんですが、なかなか使用者と接触ができません。真春さんに協力してもらいたいと思って」

工が協力して欲しいと言うなんて、珍しすぎて真春は嬉しくなる。

「協力するよ!何をすればいいの?」

嬉しそうに真春は言う。工はため息をつく。
停車できる場所に車を止めると、後部座席の封筒を手に取る。

「はしゃがないでください。遊びじゃないんです。このリストの中で知っている名前はありますか?もし親しい友達がいたら、六本木の鴉を知っているか聞いてみてください。もし接触したがる人物がいたら報告してください。勝手な判断はしないでください」

工は説明をすると真春に封筒から出したリストを渡した。
真春用に、東京、神奈川、千葉、埼玉に住所のある、年齢は18歳から22歳の男女の氏名が載っているリストだった。
真春が知っている名前があれば、そこから招待をしてもらおうと言う考えだった。
真春は工に頼まれたのも嬉しかったが、探偵みたいでワクワクしてきた。

「ワクワクしない」

工に釘を刺されて真春は照れ笑いをする。

「六本木の鴉を購入するにはサイトを利用するんですが、そのサイトは招待制なんです。どうやって招待されているのかが知りたいんです。それさえ分かれば任務終了です」

淡々と工は語る。

「分かったよ!リストを今夜から目を通すね!もしヒットしてもドラッグじゃそう易々と話してくれる人がいるかわかんないけど」 

どうしようか考えながら真春は言う。

「とにかく深入りは禁物です。数日探って何も情報を得られなければ終了します。良いですね?」

真春は頷く。少しでも工の役に立って、工に喜んで欲しかった。

「深入りしないと言う約束を破ったら、もう送り迎えは終了です」

「そんな!」

咄嗟に真春は言う。

「約束を破る気ですか?」

工が厳しい顔で睨みながら聞くと真春はしょんぼりする。

「だって、工の欲しい情報でしょ?少しぐらい危険でも情報を集めたい」

真春の言葉に、工はこれだから嫌だったんだと心の中で思った。

「何も情報が得られなくても良いです。約束は守ってください。守ってくれたら、一日中お付き合いしますから」

ご褒美があると聞くと、真春は目を輝かせた。

「分かった!約束もちゃんと守る!だから工もちゃんと約束守ってよ!」

嬉しそうな真春を見ると工はため息しか出ない。
でもそうでも言わないと真春が暴走しそうで怖かった。
嬉しそうにリストを眺める真春の横顔を見ながら、工は頭痛までしてきた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

Take On Me 2

マン太
BL
 大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。  そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。  岳は仕方なく会うことにするが…。 ※絡みの表現は控え目です。 ※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。

ふたなり治験棟 企画12月31公開

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

薔薇摘む人

Kokonuca.
BL
おじさんに引き取られた男の子のお話。全部で短編三部作になります

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...