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真幸から報告を受け、伊織は招待パスワードから正式に会員になり、六本木の鴉を注文する。
注文方法は、指定口座への振り込みの後、エリア留めで発送されるとなっていた。
これなら住所が分からない相手にも、本名だけで送る事ができる。
とりあえず後は六本木の鴉が無事手元に入るだけになった。
伊織は真幸の事務所に顔を出して、その報告をしていた。
「お前の叔父さん大手柄だな。全て解決したら全員で祝杯でもあげようぜ。とりあえず後は俺に任せてくれ。動きが見えるまでお前は高みの見物してろ」
伊織が意気揚々と言うと真幸は笑う。
「これ、元々はジュリから頼まれたもんなんだろ?ああ、もちろん会長には何も話すつもりはねーよ。お前ら、ずいぶん仲良しじゃねーか」
またはぐらかされるかと思いながらも真幸は聞く。
「仲良しっていうか、伊丹さんから仕事の依頼もあって、ジュリとは会う機会も多いしな。そう言えば、お前の叔父の真春とも、去年伊丹さんの家で会って一緒に飯食ったんだっけ」
伊織の言葉に真幸は怪訝そうな顔をする。
「それ、いつ?真春がひとりで伊丹さんの家に行ったのか?」
「いや。工が運転手で付いてきたぜ。って言っても工は車に待機してて、一緒に飯は食ってないけど?」
伊丹家で夕飯を食ってきた話が確か去年あった事を思い出した。
なぜ工が、伊織と会ったことを言わなかったのか真幸には謎だった。
噂の工は、真春の送りを終え事務所に帰ってきた。
「頭は?」
真幸の舎弟に尋ねる。
「今、伊織さんが来とる。入ってくるなって指示だ」
「そうですか」
工は呼ばれるまでパソコンで仕事を始めた。
伊織はおそらくジュリを気に入っているので、もう真幸と何か有るとは思わず、どうせ六本木の鴉の件だと気に留めなかった。
「じゃあ、邪魔したな」
真幸の部屋のドアが開いて工はそちらを見る。
「ああ。また何かあれば連絡よろすー」
ドアのところで真幸は掌をヒラヒラする。
工は立ち上がり伊織に頭を下げると真幸を見る。
真幸は工の顔を見て顎をクイッと動かし、工に部屋に入る様に促す。
「なんでしょうか」
部屋に入ると工は尋ねる。
「んー。そろそろ家に帰るわー。その前にちょっと聞きたいことあってさ。お前さ、前に真春と伊丹さんちに行っただろ?」
「ええ。それが何かありましたか?」
工は突然どうしたのか分からない。
今更、何かあったのか疑問に思う。
「なんで、伊織とそこで会ったこと黙ってた?」
真幸が聞くと、あー、と工は思った。
「別にお知らせするほどのことでも無いかと。田嶋さんが伊丹会長と懇意にしていることは頭もご存知ですし。報告しなかったことに何か不都合でも?」
工が流暢に話すと真幸は笑う。
「お前、俺があいつと仲が良いのが面白くなくて、わざと俺に言わなかったのかと思ってな。俺の勘違いか」
真幸の言葉に、工は目を瞑ってから真幸をジッと見つめた。
「伊織が嫌いだろ?」
「…………別に」
「どっかの女優かよ」
真幸はそう言って鼻で笑う。真幸のツッコミに工は分からずキョトンとする。
「…………確かに、好ましくは思ってません。以前のマンションで頭に何か良からぬことをしたと思ってますので」
「否定はしねぇ」
忌々しそうに工が顔を顰めると楽しそうに笑う真幸。
「…………今はなんとも思ってません。頭に危害を加えそうな感じでも無いので」
「ふーん。伊織がジュリに夢中になってるからか?」
真幸はジッと工を見つめる。工も真幸から目を離さない。
「夢中かどうかは分かりませんが、今回の件はわざわざジュリのために動いてる感じですから、ジュリを多少なりとも特別視してるのかと思ってますが」
真幸は深く息を吐く。
「言い方が硬てーよ。全く、面白味のない奴だ」
真幸が笑っても工は無表情で真幸を見つめ続ける。
「帰るわ。お前が送ってそのまま泊まって行け」
真幸は立ち上がる。
「車、表に回してきます」
真幸は車のキーを工に渡す。
「俺と伊織が仲が良いのをお前が嫉妬してるってずっと勘違いしてたわ。でもそれネタで今夜も興奮できそうだ」
真幸がニヤリとすると、工はキーを受け取りながらため息をつく。
「頭の勘違いでは無いです。本気で嫉妬してました」
工はそう言うと真幸の部屋を出た。
「…………ったく、たまにそうやって素直になるから可愛いんだよねー!」
真幸はわざと大声で言う。
ドアの外でそれを聞いた工は、フッと笑って事務所を出た。
注文方法は、指定口座への振り込みの後、エリア留めで発送されるとなっていた。
これなら住所が分からない相手にも、本名だけで送る事ができる。
とりあえず後は六本木の鴉が無事手元に入るだけになった。
伊織は真幸の事務所に顔を出して、その報告をしていた。
「お前の叔父さん大手柄だな。全て解決したら全員で祝杯でもあげようぜ。とりあえず後は俺に任せてくれ。動きが見えるまでお前は高みの見物してろ」
伊織が意気揚々と言うと真幸は笑う。
「これ、元々はジュリから頼まれたもんなんだろ?ああ、もちろん会長には何も話すつもりはねーよ。お前ら、ずいぶん仲良しじゃねーか」
またはぐらかされるかと思いながらも真幸は聞く。
「仲良しっていうか、伊丹さんから仕事の依頼もあって、ジュリとは会う機会も多いしな。そう言えば、お前の叔父の真春とも、去年伊丹さんの家で会って一緒に飯食ったんだっけ」
伊織の言葉に真幸は怪訝そうな顔をする。
「それ、いつ?真春がひとりで伊丹さんの家に行ったのか?」
「いや。工が運転手で付いてきたぜ。って言っても工は車に待機してて、一緒に飯は食ってないけど?」
伊丹家で夕飯を食ってきた話が確か去年あった事を思い出した。
なぜ工が、伊織と会ったことを言わなかったのか真幸には謎だった。
噂の工は、真春の送りを終え事務所に帰ってきた。
「頭は?」
真幸の舎弟に尋ねる。
「今、伊織さんが来とる。入ってくるなって指示だ」
「そうですか」
工は呼ばれるまでパソコンで仕事を始めた。
伊織はおそらくジュリを気に入っているので、もう真幸と何か有るとは思わず、どうせ六本木の鴉の件だと気に留めなかった。
「じゃあ、邪魔したな」
真幸の部屋のドアが開いて工はそちらを見る。
「ああ。また何かあれば連絡よろすー」
ドアのところで真幸は掌をヒラヒラする。
工は立ち上がり伊織に頭を下げると真幸を見る。
真幸は工の顔を見て顎をクイッと動かし、工に部屋に入る様に促す。
「なんでしょうか」
部屋に入ると工は尋ねる。
「んー。そろそろ家に帰るわー。その前にちょっと聞きたいことあってさ。お前さ、前に真春と伊丹さんちに行っただろ?」
「ええ。それが何かありましたか?」
工は突然どうしたのか分からない。
今更、何かあったのか疑問に思う。
「なんで、伊織とそこで会ったこと黙ってた?」
真幸が聞くと、あー、と工は思った。
「別にお知らせするほどのことでも無いかと。田嶋さんが伊丹会長と懇意にしていることは頭もご存知ですし。報告しなかったことに何か不都合でも?」
工が流暢に話すと真幸は笑う。
「お前、俺があいつと仲が良いのが面白くなくて、わざと俺に言わなかったのかと思ってな。俺の勘違いか」
真幸の言葉に、工は目を瞑ってから真幸をジッと見つめた。
「伊織が嫌いだろ?」
「…………別に」
「どっかの女優かよ」
真幸はそう言って鼻で笑う。真幸のツッコミに工は分からずキョトンとする。
「…………確かに、好ましくは思ってません。以前のマンションで頭に何か良からぬことをしたと思ってますので」
「否定はしねぇ」
忌々しそうに工が顔を顰めると楽しそうに笑う真幸。
「…………今はなんとも思ってません。頭に危害を加えそうな感じでも無いので」
「ふーん。伊織がジュリに夢中になってるからか?」
真幸はジッと工を見つめる。工も真幸から目を離さない。
「夢中かどうかは分かりませんが、今回の件はわざわざジュリのために動いてる感じですから、ジュリを多少なりとも特別視してるのかと思ってますが」
真幸は深く息を吐く。
「言い方が硬てーよ。全く、面白味のない奴だ」
真幸が笑っても工は無表情で真幸を見つめ続ける。
「帰るわ。お前が送ってそのまま泊まって行け」
真幸は立ち上がる。
「車、表に回してきます」
真幸は車のキーを工に渡す。
「俺と伊織が仲が良いのをお前が嫉妬してるってずっと勘違いしてたわ。でもそれネタで今夜も興奮できそうだ」
真幸がニヤリとすると、工はキーを受け取りながらため息をつく。
「頭の勘違いでは無いです。本気で嫉妬してました」
工はそう言うと真幸の部屋を出た。
「…………ったく、たまにそうやって素直になるから可愛いんだよねー!」
真幸はわざと大声で言う。
ドアの外でそれを聞いた工は、フッと笑って事務所を出た。
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