鳴かない杜鵑-ホトトギス-(鳴かない杜鵑 episode1)

五嶋樒榴

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膨よかな水

8

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「お前、ムショにいたって聞いたけど」

真幸の前に、スーツを着たガタイの良い男、恵比寿工が立っている。冷酷な瞳を持ったイケメンで、女にモテそうだと真幸は思った。
ソファーに腰掛けているのは、五島と伊丹だった。

「傷害で入ってました」

表情を変えずに工は言う。

「ふーん。年は?」

「28です」

「自衛隊にいて、刑務所いて、なんで五島組にいるの?」

「刑務所にいた時に、五島組所属って言うおやっさんと会って、出たら来いって言われたので」

冷たい目の工を真幸はじっと見る。
部屋に入ってからずっと、顔色1つ変えず無表情。ただ質問に淡々と答える。

「傷害で捕まったくらいで、ヤクザなる?」

「なっちゃいましたね」

工の言い方に真幸はイラっとした。
デスクに足をガンッと乗せ工を睨む。

「お前、なんか闇深そー。いつ死んでも良いですって顔してんな。そんなんで俺の為に死ねる?俺、めっちゃ狙われてるけど」

真幸の言葉にも反応は薄い。

「それが俺の仕事なら、遂行するまでです」

生きることに何も楽しみのない顔に真幸はただ工を見る。

「どーするー?伊丹さんと五島さん。こいつ信用していーの?」

伊丹と五島は笑う。

「お前が気に入らねーなら連れて帰るまでだが、俺にとっては忠犬ハチ公になってくれたぁぜ」

ニヤニヤしながら五島は言う。

「気にいるとか気に入らないとかってより、何考えてるのか分かんない奴だぜ、この無表情君」

「まずはお試しってどうだい。腕は確かだぜ。殺し屋としては俺の知る中でトップレベルだぜ。度胸もな」

五島が薦めるので、真幸も断る理由がない。

「分かりましたよ。とりあえず試用期間ね。気に入らなかったらクビね」

真幸はそう言って工を見る。工は無言で頭を下げた。

「じゃあ、俺たちは帰るぜ。後はお前の好きにしな」

五島がそう言って立ち上がると伊丹も立ち上がる。

「あ、会長。うちの事務員の身体どうだった?もうやっちゃったんでしょ?」

五島が伊丹を見る。

「この野郎。このタイミングで言うか?」

伊丹が苦笑しながら言う。またかと冷ややかな目で五島は伊丹を見る。
五島は女に対しては真面目で、もう20年以上連れ添った年の離れた妻だけに一筋だった。その点伊丹は女好きで、それだけは五島に呆れられている。

「全く。子分の女にまで手を出すとは。女で身を滅ぼすなよ。じゃあな、真幸」

あははと笑いながら五島は出て行った。
伊丹は真幸を噛みつきそうに見ながら、五島の後に着いて部屋を出て行った。その顔を面白おかしく真幸は見た。
静かになった部屋で、真幸は工を見つめる。

「良いガタイしてんな。ちょっと脱いでみろよ」

工は無言でスーツの上着を脱ぐと、ネクタイを外しワイシャツを脱ぐ。ワイシャツの下は素肌だった。
ガッチリとした筋肉に無駄のない身体。相当鍛えてはいるのがうかがえた。

「お前、その身体で散々女鳴かせてきただろ」

真幸がそう言って笑うと工は興味なさそうに首を振る。

「もう、着ても良いですか?」

「ああ。どうぞ」

工はワイシャツを着ると真幸を見つめる。

「……俺、男にしか興味ないですから」

工の言葉に真幸はじっと工を見る。

「あー、そっちのタイプ。んじゃムショじゃアンコにモテまくっただろう」

引きつって真幸は言った。こいつもゲイかと思いながら疾風が浮かんだ。

「まあ。ただムショで抱いたことはないですけどね」 

スーツの上着を着ると、工は真幸を見つめる。
その目に生気はない。

「お前、男をしゃぶったことある?しゃぶられる方?」

「どっちもですね」

真幸は工を見つめたまま立ち上がる。

「しゃぶってみろよ、俺の」

初めて工の目が変わった。驚いた目をしている。

「恋人でもない男のブツはしゃぶれねーか」

真幸は笑って窓辺に寄りかかるとベルトを外してスラックスを緩める。
女に勃たないが男になら勃つのか知りたかった。
男でも無理なら、やはり疾風じゃないとダメな身体になったのか知りたかった。

「無理強いはしねぇけど」

まだ柔らかいモノを出すと真幸は工を見つめる。
工は真幸に近づき跪くと、躊躇なく真幸のモノを手に持ち舌を出した。
工の舌が先端を舐め始める。敏感な部分にねっとりと舌を這わす。

「んッ!」

ビクッと真幸は反応した。
工の唇が柔らかいモノを咥える。口の中に入った先端に舌が絡まる。

「あッ、くッ!」

まるで疾風にされているようで、真幸は気持ちよくなってきてしまった。ムクムクと硬くなっていく。
ズリュッと音を立てて半勃ちのモノが工の口の中に吸い込まれた。
モノの血管がドクドクと充血していく。

「ああ、んんッ!」

真幸は窓の枠に掴まりながら悶える。

「あッ!……待て、やめろ」

真幸は声を絞り出す。このままでは工の口の中に果ててしまう。
工は静かに真幸のモノを出した。
真幸は潤んだ目でハァハァと息をすると工を見つめる。

「流石に部下の口の中に出せねーわ。お前がそっち側ってのはよく分かったよ」

真幸は勃起させたままそう言うと、まだジンジンと身体が疼きまくっている。
先端からはしずくが溢れ、少しでも触ったら果ててしまいそうだった。

「よくそこまでなっていて、我慢できますね。すごい精神力だ。俺にしゃぶられて、後悔しました?」

真幸はその問いに答えない。
後悔と言うより、疾風ばかりが浮かぶ。疾風に初めてしゃぶられた時を思い出し、疾風に抱かれたくて仕方ない。

「もういい。出て行ってくれ」

工は黙って部屋を出て行った。
真幸は目を閉じて窓辺に寄りかかったまま勃起したモノを握る。
工にしゃぶられながら、疾風がずっと目に浮かんでいた。
工にしゃぶられているのに、まるで疾風にしゃぶられている感覚だった。

「くそッ。バカ疾風」

疾風を思いながら真幸は自分で扱いて果てた。
外では工がドアに寄りかかり立っていた。
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