田辺君はずるいから

五嶋樒榴

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19ずるい・初デート

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「あれ?田辺じゃん」

料理の種類が豊富で美味しいと人気の居酒屋で、諭と田辺が食事をしていると、遥加が田辺を見つけて声をかけて来た。

「友部」

田辺は遥加の顔を見ていやーな顔になる。

「なんだよぉ。露骨に嫌な顔すんなって。って、友達?」

遥加が諭を見る。

「先輩だよ。大学もマンションも一緒で、現在親しくお付き合いさせてもらってる」

決して友達とは言わない田辺。その言葉選びに諭はキュンとなった。

「あ、先輩なんだ!俺、友部遥加っす。田辺と同じ学部です」

「初めまして、3年の内名諭です」

遥加は諭をじっくり見つめる。

「俺もあのマンション住んでるんですよ。今まで会った事ないけど、これからよろしくっす」

「やだね」

田辺がボソリと呟いた。

「あん?なんか言った?」

遥加が田辺を見る。

「別に。それより早く自分のところに戻れよ。どうせ合コンかなんかだろ」

さっさと遥加を離したい田辺。

「今度、田辺も絶対来いよ!じゃあ、内名先輩、また」

ひらひらと手を振る遥加。諭もつられて手を振った。

「あのバカは忘れてください。覚える必要ないですから」

苦々しく田辺は言う。

「あはは。仲良さそうだったね。でも、ありがとう」

諭が突然お礼を言うので田辺は意味が分からない。

「ん?何がですか?」

「そのッ……………友達って言わないでくれたから」

モジモジして諭は言う。

「ああ。だって友達じゃないですよね。俺たち付き合ってんですから。正直に言っただけですよ」

田辺の男前なセリフに、諭は嬉しくて真っ赤になって動きがジタバタになる。

「もう!大好きッ!」

恥ずかしくて顔を隠しながら諭が言うと、その手を田辺が外す。

「人前で可愛いことしたから、後でお仕置きですよ」

クスッと笑う田辺に、諭はもう堪えきれずキュン死した。
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