田辺君はずるいから

五嶋樒榴

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30ずるい・マジで凄い

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抱きしめられて頭をポンポンされて、諭もやっと落ち着いた。

「華麗な一族でマジにビビった」

「でも俺は普通っすよ。って、思ってるのは俺だけか」

過去を思い出す田辺。

「俺が元総理大臣のひ孫だってのは、今まで付き合ってた相手には言ってないから知らなくても、旅館のことは知られてたから、きっとそれも俺の価値だったんでしょうね」

元総理大臣のひ孫のことは伏せていたんだと諭は思った。
それでも北陸一の超高級旅館の息子の田辺に、群がる女子がいてもおかしくはない。
ただ、富裕層の子女が多い大学なので、さすがの田辺でも家のことで他学年まで噂が上がってくることはなかった。

「先輩は俺の性格が好きだって言ってくれた。いつも好きになられる理由と違ったから、正直変な人だと思った」

「おまッ!変とか言うなッ!つーか、お前の素性知ってたら……………」

「知ってたら、相応しくないとか気後してコクって来れなかった?」

田辺の上からな言い方にプッと諭は笑う。

「……………やっぱりコクってた。お前がそう言う性格だから」

悔しいが、田辺が田辺だから好きになった。家柄とか、そう言うことはどうでも良い。

「本当に素直なんですね。諭先輩みたいな人初めてです」

そう言いながら田辺は嬉しい。
自分を選んでくれた人が、自分が欲しい人だったから。

「素直なのは俺の取り柄なのッ。意地張ったりしないよ」

確かに諭は甘えん坊で素直。

「そうっすね。じゃあ、これからもエッチの時も意地張らずに、素直に言ってくださいね」

諭は一気に顔が真っ赤になる。

「違ッ!それは意地を張ってるんじゃなくてッ!恥ずかしいからでッ!」

分かっていてわざと田辺は諭を弄る。
諭が側で笑ってくれるのが居心地が良くて、田辺はキャンキャン騒ぐ諭の頭を撫で続けた。
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