すいぎょのまぢわり

五嶋樒榴

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第九話

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絢斗と一哉は無言のままジュースを飲んでいる。
お互い何から突っ込もうかと牽制し合う。

「で?お前ら、付き合ってんだろ」

一哉が先にかます。

「とりあえず、な」

含みを持たせる絢斗。

「どこまでイけた?」

一哉が興味津々で聞くと、絢斗は頬杖をついたまま一哉を見つめる。

「でことほっぺにちゅーは大丈夫。あと、ハグもか」

絢斗が言うと一哉は目が見開きびっくりする。

「それって、どー言う事?」

聞き間違いかと一哉は驚く。

「言った通りだよ。両思いになれたのに、キスすらお預けっすよ」

テーブルに頬杖をついたまま、ムッとしている絢斗。

「マジか?それ、付き合ってるって言うか?」

信じられない一哉。

「うっせーよ。やっとここまで漕ぎ着けたんだよ。褒めろ」

ブスくれている絢斗に、一哉はご愁傷様としか言えない。

「んで、お前らは?どこまでOKなの?」

絢斗が鋭い視線で質問する。

「えーと、お前が茉理にやってる事プラス、キス。とぉ、後は………………」

真っ赤になって、先日臨にしてもらった事をぼやかして言う。

「ケッ!そうですかそうですか。よかったですねー」

棒読みの絢斗。
一哉は最大の悩みを吐露する。

「無駄にデカいナニが恨めしい!」

泣き真似をしながら言う一哉に、絢斗は呆れた顔をする。

「お前だってきっとそうだ!お前のブツを見りゃ茉理だって拒否するに決まってる!」

指をさして一哉が言うと、絢斗は一哉の頭を叩く。

「喧嘩うってんのか、ごらぁ!まだキスもしてねーのに、そこまで考えられるかッ!ぼげぇ!」

怒り心頭の絢斗に一哉は笑う。

「………………何だろーね。何で男が好きになったんかなー」

考え込みながら言う一哉。

「茉理は九蘭に来たせいだと言っていたぞ。俺は違うけどな。今思えば、幼稚園の時から茉理が好きだったんだろうな」

絢斗の告白に、一哉はふーん、と言う顔をする。

「九蘭に来たせいか。だとしたら、周りにすぐ女がいる大学行ったら、この気持ち、なくなんのかね」

遠い目をして一哉が言う。

「お前は何で臨が好きなんだ?臨が女みたいだからか?」

絢斗の言葉に一哉は絢斗を見つめる。

「何だろうなぁ。女みたいって言うより、とにかく可愛い。大事にしたい。一緒にいると嬉しい。気がついたら、マジ惚れしてた。そんな感じ」

一哉は告白するとニヤリと笑った。
絢斗は一哉のそんな感覚も不思議ではないと思った。
結局お互い、マジに好きになったのが、たまたま男だったと言う事なのだ。
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