甘い蜜と苦い蜜

五嶋樒榴

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ブルジョワなクッキングスクール

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私は前から行ってみたいと思っていた、人気のお料理教室に体験に行くことにした。
タワーマンションの上階で景色もとても素晴らしく、キッチンも生活臭は全くなく、キッチンスタジオと言われれば頷けるような感じだった。
無駄な物は一切置いていなくて、広々としたキッチン、ダイニング、リビング。
こんなマンションで暮らせたらと羨望の眼差しで見渡してしまった。

「はじめまして。今日1日よろしくお願いします。この教室で皆さんにお料理をお伝えする来也きなり涼香すずかです」

美しく優しい笑顔の涼香先生がはじめに挨拶をした。年齢は私より2歳下の33歳。この素晴らしいキッチンに本当に似合っている人だった。

「はじめまして、佐藤里緒奈です。本日はよろしくお願いいたします」

順番が回ってきて私も自己紹介をした。
今日は全員体験の人で、初めて訪れた料理教室だったけど緊張することもなかった。
いつも少人数でやっていると聞いていたが、この日も私を入れて3人だけだった。
予約が取れない料理教室と有名で、私もこの日を迎えるまで半年近く待ったのだった。
涼香先生のクオリティの高さを生で見て、その味を味わって、確かに予約が取りにくいのも頷けた。
素晴らしく座り心地の良いダイニングテーブルの椅子に腰掛けて、作った食事をみんなで頂いて、気持ちだけでもブルジョワの仲間入りをしたような気になった。
入会金はないが年会費はある。年に5万。
レッスン料はその都度予約をして当日払う。食材にもよるが、平均2万。
ただ、病気、冠婚葬祭以外で予約をキャンセルすると、次に予約を入れるのはとても大変で、そう言った厳しいルールがあっても、この教室の予約は常にいっぱいだった。
涼香先生は独身だった。
バツもついていないと本人談。
この広いマンションで、午前10時から15時までが仕事の時間だと言った。
今日は体験と言うこともあって、料金は1万円だった。
割高なフルコースだと言われそうだが、贅沢な素材+レッスン料だと思えば安い物だと思った。もちろん、家で作る時は食材のランクを下げれば良いので、味が資本なのは言うまでもない。
最後に入会の手続きがある。
もちろん断っても良い。
でも私は入会した。
普段の生活では得られないものを体験できたから。
夫の浮気を知ってから、高額なものにお金を使うのも罪悪感がなくなっていたから。
きっと夫の浮気を知らなかったら、この料理教室も体験だけで終わっていただろう。
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