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母は強くなる
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家に帰ると、中学生になった麻奈がもう帰っていた。
「お帰り。今日は部活がなかったの?」
私が尋ねると麻奈は私におやつをねだった。
「涼香先生のクッキー本当に美味しい!私の体は涼香先生のご馳走でできてるね」
まだ会ったことがない涼香先生を崇拝する娘は、クッキーを嬉しそうに食べる。
「ねぇ、麻奈。一度涼香先生に会ってみる?」
ずっと会ってみたいと麻奈が言っていたので、誘うのは簡単だった。
ただ私が、涼香先生と恋人同士だったから会わせるのが恥ずかしかった。
「会わせてくれるの?会いたい!ママの話だと、すっごい美人だって言うし!」
「まだ涼香先生には聞いてないの。今日は出張でいなかったから。後でLINEしてみるわ。もし会えるならいつが良い?」
麻奈はスマホを取り出してチェックをする。
「んーと、来週の日曜日は部活が午前中だけだから、午後は空いてるよ」
麻奈のスケジュールを聞くと、私は頷いた。
「その日に会えるかは分からないけど、涼香先生が麻奈に会いたいって言ったら、別の日でも会って欲しいの」
私の言葉に麻奈はキョトンとする。
「会って欲しいって?」
「ママね、ずっと涼香先生と仲良くしたいの。とても大事な人なの。だから家族ぐるみのお付き合いがしたいの。麻奈とも仲良くしてくれたらって思って」
言っていて、なんだか私は恥ずかしくなってきた。
両親に初めて恋人を紹介した時のような気持ちになっていた。
「うん!分かった!でも家族ぐるみならパパは?」
「パパは良いの!」
私が強い口調で言うと麻奈は驚いた。
「ママ、どうしたの?怖いよ?」
「ごめんなさい。ほら、女同士で仲良くしたいでしょ?だからよ」
私が誤魔化すように言うと麻奈は私をジッと見つめた。
「ママもやっぱり気がついてるんだ」
麻奈の言葉に私はビクッとした。麻奈が何を知っているのか不安が襲う。
「何を?」
声が震えてしまった。
「パパが、浮気してることだよ」
麻奈が夫の不倫に気付いてた事に私はびっくりした。
「前にパパと車で買い物に行った時、ナビに変な履歴が残ってたの。逗子なんて行ってないのに。その後も気になって車乗る度にチェックしたの。そしたら行ったことがない場所の履歴を何度も見たわ。パパがひとりでそんな場所に行くわけないもの」
麻奈の言葉に、夫の馬鹿さ加減に私はため息が出た。
せっかく私が知らないフリを通してきたのに、麻奈にバレていたなんて思いもよらなかった。
「麻奈はパパが好きでしょ?だったら知らないフリしてて」
私が言うと麻奈は真っ赤な顔になって怒り出した。
「おかしいよ!なんでママは平気なの?私、ママのために今まで黙ってたんだよ!パパなんて嫌いだよ!私たちを裏切ってるじゃない!ママはなんで黙ってるの?パパを愛してるから?」
麻奈の言う事はもっともだと思うが、本当に私たちが離婚したら、1番傷つくのは麻奈。それだけは嫌だった。
口では嫌いだと言ったとしても、本当に失えば、麻奈が壊れるに決まっている。
「愛してはいないわ。不倫してるって知る前から愛してないわ。でも、ママはズルイから、今の生活を手放せないの。ママだけで麻奈を養う自信がないの。麻奈が結婚する時だって、両親が揃っていてあげたいと思っているの。ただの見栄かもしれないけど、ママはそう考えてるの」
私の言葉を麻奈は黙って聞いていた。
「パパとの全てを諦めて、ママも自由なことをしていると、今の生活も良いかなって思ってるわ。ママは涼香先生のアシスタントになってこの家から出て外の空気も吸えてるし、ママ友以外のお友達も増えて本当に毎日が楽しいの」
私がそう語ると麻奈は嬉しそうに微笑んでくれた。
「ママがそれで良いなら私も嬉しい。でもさ、最近は親が離婚してる家庭なんていっぱいあるし、私のために我慢とかしなくて良いからね!」
麻奈が私に気を遣って言ってくれてるのが分かる。
「バカね。我慢なんてしてないわ。ただのママの見栄よ。でも、パパから離婚したいと言われたら、離婚しても良い?」
そんな事はないと思うが、念のため私は聞いてみた。
「うん!でも絶対私はママについていくからね!だってママと一緒の方が楽しいもの!涼香先生と私も仲良くできたら良いな!」
キラキラの笑顔の娘を見て、私は少しだけ心がチクチクした。
私は夫に対して裏切ってるとは思っていないが、もし麻奈に私と涼香先生の事がバレたら、きっと麻奈は私にも嫌悪感を抱くだろう。
自分は違うと思っていても、側から見れば、私がしてる事は不倫なのだから。
「お帰り。今日は部活がなかったの?」
私が尋ねると麻奈は私におやつをねだった。
「涼香先生のクッキー本当に美味しい!私の体は涼香先生のご馳走でできてるね」
まだ会ったことがない涼香先生を崇拝する娘は、クッキーを嬉しそうに食べる。
「ねぇ、麻奈。一度涼香先生に会ってみる?」
ずっと会ってみたいと麻奈が言っていたので、誘うのは簡単だった。
ただ私が、涼香先生と恋人同士だったから会わせるのが恥ずかしかった。
「会わせてくれるの?会いたい!ママの話だと、すっごい美人だって言うし!」
「まだ涼香先生には聞いてないの。今日は出張でいなかったから。後でLINEしてみるわ。もし会えるならいつが良い?」
麻奈はスマホを取り出してチェックをする。
「んーと、来週の日曜日は部活が午前中だけだから、午後は空いてるよ」
麻奈のスケジュールを聞くと、私は頷いた。
「その日に会えるかは分からないけど、涼香先生が麻奈に会いたいって言ったら、別の日でも会って欲しいの」
私の言葉に麻奈はキョトンとする。
「会って欲しいって?」
「ママね、ずっと涼香先生と仲良くしたいの。とても大事な人なの。だから家族ぐるみのお付き合いがしたいの。麻奈とも仲良くしてくれたらって思って」
言っていて、なんだか私は恥ずかしくなってきた。
両親に初めて恋人を紹介した時のような気持ちになっていた。
「うん!分かった!でも家族ぐるみならパパは?」
「パパは良いの!」
私が強い口調で言うと麻奈は驚いた。
「ママ、どうしたの?怖いよ?」
「ごめんなさい。ほら、女同士で仲良くしたいでしょ?だからよ」
私が誤魔化すように言うと麻奈は私をジッと見つめた。
「ママもやっぱり気がついてるんだ」
麻奈の言葉に私はビクッとした。麻奈が何を知っているのか不安が襲う。
「何を?」
声が震えてしまった。
「パパが、浮気してることだよ」
麻奈が夫の不倫に気付いてた事に私はびっくりした。
「前にパパと車で買い物に行った時、ナビに変な履歴が残ってたの。逗子なんて行ってないのに。その後も気になって車乗る度にチェックしたの。そしたら行ったことがない場所の履歴を何度も見たわ。パパがひとりでそんな場所に行くわけないもの」
麻奈の言葉に、夫の馬鹿さ加減に私はため息が出た。
せっかく私が知らないフリを通してきたのに、麻奈にバレていたなんて思いもよらなかった。
「麻奈はパパが好きでしょ?だったら知らないフリしてて」
私が言うと麻奈は真っ赤な顔になって怒り出した。
「おかしいよ!なんでママは平気なの?私、ママのために今まで黙ってたんだよ!パパなんて嫌いだよ!私たちを裏切ってるじゃない!ママはなんで黙ってるの?パパを愛してるから?」
麻奈の言う事はもっともだと思うが、本当に私たちが離婚したら、1番傷つくのは麻奈。それだけは嫌だった。
口では嫌いだと言ったとしても、本当に失えば、麻奈が壊れるに決まっている。
「愛してはいないわ。不倫してるって知る前から愛してないわ。でも、ママはズルイから、今の生活を手放せないの。ママだけで麻奈を養う自信がないの。麻奈が結婚する時だって、両親が揃っていてあげたいと思っているの。ただの見栄かもしれないけど、ママはそう考えてるの」
私の言葉を麻奈は黙って聞いていた。
「パパとの全てを諦めて、ママも自由なことをしていると、今の生活も良いかなって思ってるわ。ママは涼香先生のアシスタントになってこの家から出て外の空気も吸えてるし、ママ友以外のお友達も増えて本当に毎日が楽しいの」
私がそう語ると麻奈は嬉しそうに微笑んでくれた。
「ママがそれで良いなら私も嬉しい。でもさ、最近は親が離婚してる家庭なんていっぱいあるし、私のために我慢とかしなくて良いからね!」
麻奈が私に気を遣って言ってくれてるのが分かる。
「バカね。我慢なんてしてないわ。ただのママの見栄よ。でも、パパから離婚したいと言われたら、離婚しても良い?」
そんな事はないと思うが、念のため私は聞いてみた。
「うん!でも絶対私はママについていくからね!だってママと一緒の方が楽しいもの!涼香先生と私も仲良くできたら良いな!」
キラキラの笑顔の娘を見て、私は少しだけ心がチクチクした。
私は夫に対して裏切ってるとは思っていないが、もし麻奈に私と涼香先生の事がバレたら、きっと麻奈は私にも嫌悪感を抱くだろう。
自分は違うと思っていても、側から見れば、私がしてる事は不倫なのだから。
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