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●人生の墓場●
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智和は会社を出ると、地下鉄に乗って新宿まで出た。
昔ながらの喫茶店に入ると店内を見渡す。
髪の長い色白の若い女が視界に入ると、智和は笑顔でその若い女に近づいた。
「待たせたかい?」
智和が声を掛けると、若い女は笑顔で首を振った。
「いえ、私もさっき来たばかりです。奥様は、お夕飯とお風呂は終わってますから」
若い女は、智和が雇った文香のヘルパーの木内沙耶子だった。
おっとりとした感じの、とても可愛らしい顔をしていた。
前任者が辞めたことで、文香の世話を沙耶子が受け持つ様になってもう1年近く経っていた。
「いつも済まないね。いくら女相手とは言え、動けない小太りの世話は大変だろ?」
智和は、沙耶子に恋愛感情を持っていた。
沙耶子は25歳。智和は64歳。沙耶子とは、祖父と孫と言っても良いほどの年齢差でもある。
「いいえ。私は介護の仕事大好きなんです。奥様はとても可愛らしい方だし。それより、今夜はどう言ったご相談ですか?」
沙耶子は智和に呼び出された真意が知りたかった。
こんな風に外で会うのは初めての事だった。
「いつも沙耶子さんには世話をかけているし、俺もたまには外で夕飯をとりたかったんでね。良ければ付き合って欲しかったんだよ」
夕飯の誘いだったのかと沙耶子は戸惑う。
文香の事の相談だと思っていたからだった。
「奥様のお話だと思っていたので。申し訳ありませんが、プライベートで的場さんとお食事は……」
智和の態度に沙耶子は不快感がありやんわり断ると、智和は不機嫌な顔になった。
「良いから、今夜は一緒に食事をとるんだ。俺に雇われている事を忘れたのか?」
智和が豹変し、沙耶子は顔を強張らせる。
「俺に逆らえば、今の仕事も出来なくなるぞ」
沙耶子は背筋がゾクゾクする。
沙耶子の会社は、智和の立ち上げた会社と取引があり、それが縁で沙耶子は文香のヘルパーになったのだった。
智和の機嫌を損ねると言うことは、勤務先にも迷惑をかける事になる。
「別に、食事を一緒にするだけだ。余計な事は考えるな」
ニヤつく智和に、沙耶子はただ何も言えず固まるだけだった。
昔ながらの喫茶店に入ると店内を見渡す。
髪の長い色白の若い女が視界に入ると、智和は笑顔でその若い女に近づいた。
「待たせたかい?」
智和が声を掛けると、若い女は笑顔で首を振った。
「いえ、私もさっき来たばかりです。奥様は、お夕飯とお風呂は終わってますから」
若い女は、智和が雇った文香のヘルパーの木内沙耶子だった。
おっとりとした感じの、とても可愛らしい顔をしていた。
前任者が辞めたことで、文香の世話を沙耶子が受け持つ様になってもう1年近く経っていた。
「いつも済まないね。いくら女相手とは言え、動けない小太りの世話は大変だろ?」
智和は、沙耶子に恋愛感情を持っていた。
沙耶子は25歳。智和は64歳。沙耶子とは、祖父と孫と言っても良いほどの年齢差でもある。
「いいえ。私は介護の仕事大好きなんです。奥様はとても可愛らしい方だし。それより、今夜はどう言ったご相談ですか?」
沙耶子は智和に呼び出された真意が知りたかった。
こんな風に外で会うのは初めての事だった。
「いつも沙耶子さんには世話をかけているし、俺もたまには外で夕飯をとりたかったんでね。良ければ付き合って欲しかったんだよ」
夕飯の誘いだったのかと沙耶子は戸惑う。
文香の事の相談だと思っていたからだった。
「奥様のお話だと思っていたので。申し訳ありませんが、プライベートで的場さんとお食事は……」
智和の態度に沙耶子は不快感がありやんわり断ると、智和は不機嫌な顔になった。
「良いから、今夜は一緒に食事をとるんだ。俺に雇われている事を忘れたのか?」
智和が豹変し、沙耶子は顔を強張らせる。
「俺に逆らえば、今の仕事も出来なくなるぞ」
沙耶子は背筋がゾクゾクする。
沙耶子の会社は、智和の立ち上げた会社と取引があり、それが縁で沙耶子は文香のヘルパーになったのだった。
智和の機嫌を損ねると言うことは、勤務先にも迷惑をかける事になる。
「別に、食事を一緒にするだけだ。余計な事は考えるな」
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