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●アンビバレント●
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「これもあくまでも推測です。賢一郎君が思春期になってもエディプスコンプレックスを克服できず、父親を邪魔な存在として排除したかもしれません」
「それならなぜ父親を殺すだけでなく、母親をも殺したんですか?愛していた母親まで毒牙にかける意味が分からない」
母親を愛していたのになぜ牙を向いたのか。本当はエディプスコンプレックスではなく、両親に対してただの憎しみだったのではないか。
「葛藤だったのではないでしょうか?」
高槻は別視点で考える。
「葛藤?」
「母親に対して、性的感情を抱く禁忌を実は恐れていたのでは?愛しているからこそ、自我を解放するために、母親への感情を消してしまいたかった。それが失敗に終わり、結果的に母を亡き者にする事だった」
「分かっていたと言う事ですか?実の母親に対する感情が破滅的だと」
「そこまでは正直、分かりません。でもタブーを犯すことから逃げるために母親を殺したと言うならば、それほどまでに彼にとって母親とは唯一無二の存在だったのかもしれません」
自己の欲求で母親を穢し蔑まされるなら、自分の手で殺してしまうことも厭わなかったと言う事かと、健は思いながらも信じられない。
もし高槻の仮説が正しいものなら、賢一郎の心の闇が深すぎて、健には理解不能だった。
「……愛情と憎悪、父親と母親に向けられたものは、全く相反するものだったのかもしれませんが、賢一郎君が本心では、両親を、家族を愛していたのは間違いない事だと思いますよ」
高槻はそう言って、タイムカプセルの中に有った最後の1枚の写真を健に見せる。
健もそれだけは、見た時に高槻と同じ事を考えた。
生まれたばかりの賢一郎を母が抱き、その小さな手で父の指をギュッと握った3人揃っての写真。
その写真だけは黒く塗りつぶされることなく、父と母の笑顔と我が子への愛情が溢れていた。
「それならなぜ父親を殺すだけでなく、母親をも殺したんですか?愛していた母親まで毒牙にかける意味が分からない」
母親を愛していたのになぜ牙を向いたのか。本当はエディプスコンプレックスではなく、両親に対してただの憎しみだったのではないか。
「葛藤だったのではないでしょうか?」
高槻は別視点で考える。
「葛藤?」
「母親に対して、性的感情を抱く禁忌を実は恐れていたのでは?愛しているからこそ、自我を解放するために、母親への感情を消してしまいたかった。それが失敗に終わり、結果的に母を亡き者にする事だった」
「分かっていたと言う事ですか?実の母親に対する感情が破滅的だと」
「そこまでは正直、分かりません。でもタブーを犯すことから逃げるために母親を殺したと言うならば、それほどまでに彼にとって母親とは唯一無二の存在だったのかもしれません」
自己の欲求で母親を穢し蔑まされるなら、自分の手で殺してしまうことも厭わなかったと言う事かと、健は思いながらも信じられない。
もし高槻の仮説が正しいものなら、賢一郎の心の闇が深すぎて、健には理解不能だった。
「……愛情と憎悪、父親と母親に向けられたものは、全く相反するものだったのかもしれませんが、賢一郎君が本心では、両親を、家族を愛していたのは間違いない事だと思いますよ」
高槻はそう言って、タイムカプセルの中に有った最後の1枚の写真を健に見せる。
健もそれだけは、見た時に高槻と同じ事を考えた。
生まれたばかりの賢一郎を母が抱き、その小さな手で父の指をギュッと握った3人揃っての写真。
その写真だけは黒く塗りつぶされることなく、父と母の笑顔と我が子への愛情が溢れていた。
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