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●愛したのが始まり●

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2021年。

高級住宅街にある、一代で財を成した糸坂家の屋敷。当主の糸坂功一は凄腕で有名だったが、その分悪評も多かった。
糸坂には別れた妻との間に、23歳の一人娘の祥子がいて、昨年春に大学を卒業した祥子は糸坂の会社に籍は置いてあるものの、もう婚約者もいる身でほとんど出勤する事はなかった。

「お嬢様。楜沢様がお見えになりましたよ」

祥子が生まれる前から家政婦をしている道子が、祥子の部屋の外から声をかける。もう耳も遠くなっていて、家事をするのがやっとだった。
裸の祥子は憂鬱そうな顔で、ベッドから身を起こしドアを見た。

「今行くわ」

祥子が大声で返事をすると、祥子の隣で横たわる静真が、祥子の長い髪を指に絡める。

「今日、来る約束があったの?」

不満顔で静真が祥子に尋ねると、祥子はフッと笑顔になって静真にキスをする。
昼間から情事にふけている2人。
静真が東京の、糸坂の会社に就職して5年の月日が経っていた。

「ううん。突然だわ。全く迷惑な人」

「本当に邪魔者だね」

静真は同意すると、祥子に抱き付き押し倒す。

「もう、ダメだよ。待たせたら怪しまれるわ」

静真は祥子の言葉を無視して、祥子の首筋にキスマークを付ける。

「浮気したら許さないよ」

静真の嫉妬が祥子は嬉しい。

「大丈夫だよ。私が愛してるのは静真だけなんだから」

小悪魔な笑顔の祥子に、静真は激しくキスをした。
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