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●100万分の1●
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健はまた無駄に終わるかと思いながらも、スマホの画面に指を滑らせ電話を掛けた。
何度コンタクトを取っても、弥之の父、健の祖父である水島孝之助は健を一切無視していた。
弥之の事を、水島家の恥晒しと思っているからだった。
『少々お待ちください』
電話に出た中年の女性の声に、いつもと反応が違っていたことでホッとした。
しかし、やっと電話を取り次いでもらったと思ったのも束の間、電話の相手は弥之の兄で、長男の水島幸一だった。
『何度電話をして来ようと、父は君と会うつもりはない。全く。親の反対を押し切って、無理矢理結婚して子供まで作って家にも寄り付かなかったくせに、弥之は問題ばかり起こして。君ももういい加減電話をしてくるのは辞めてくれないか』
「父と母は結婚を反対されていたのですか?」
健は初めて聞くことに驚くが、なぜ反対されていたのか思い当たるのは、雛絵が片親だった事ぐらいだった。
健が集めた弥之と雛絵の戸籍から調べた内容によると、雛絵の母であり健の祖母は若いうちに離婚しており、シングルマザーで雛絵を育てて来た。雛絵が弥之と結婚して、しばらくして癌でこの世を去ってしまった事で、健と静真は引き取り手のないまま児童養護施設へ入所したのだった。
新聞記者で、健の親友の鵜飼大知が調べてくれた内容によると、雛絵はその母を助けるように、大学は奨学金を貰いバイトもしていた。そして弥之と雛絵は、大学時代に知り合い恋人同士になったと、ここまでは大知から聞いていた。
『ああ。弥之と君の母親とでは、父は絶対に認めないからね』
幸一の話によれば、孝之介は大手企業の取締役でも有り資産家でもあった。
雛絵が弥之の相手として相応しくないと交際も難色を示していたが、弥之が家を捨てる覚悟で雛絵と結婚した事で孝之介の逆鱗に触れ、勘当同然に音信不通になっていったと言う事だった。
『おまけに水島の家の名を汚すような事件まで起こして』
忌々しいと言うように幸一の声は敵意に満ちていた。
「父が事件に巻き込まれたのは事実ですが、それは冤罪だったと現在再捜査されています」
『確かに21年前の事件は冤罪だったのだろうが、あいつが全てにおいて甘いからこうなったんだ。人を見る目がないから騙されて殺されたんだ』
何を言っても無駄かと健は心の中でため息をつく。
何度コンタクトを取っても、弥之の父、健の祖父である水島孝之助は健を一切無視していた。
弥之の事を、水島家の恥晒しと思っているからだった。
『少々お待ちください』
電話に出た中年の女性の声に、いつもと反応が違っていたことでホッとした。
しかし、やっと電話を取り次いでもらったと思ったのも束の間、電話の相手は弥之の兄で、長男の水島幸一だった。
『何度電話をして来ようと、父は君と会うつもりはない。全く。親の反対を押し切って、無理矢理結婚して子供まで作って家にも寄り付かなかったくせに、弥之は問題ばかり起こして。君ももういい加減電話をしてくるのは辞めてくれないか』
「父と母は結婚を反対されていたのですか?」
健は初めて聞くことに驚くが、なぜ反対されていたのか思い当たるのは、雛絵が片親だった事ぐらいだった。
健が集めた弥之と雛絵の戸籍から調べた内容によると、雛絵の母であり健の祖母は若いうちに離婚しており、シングルマザーで雛絵を育てて来た。雛絵が弥之と結婚して、しばらくして癌でこの世を去ってしまった事で、健と静真は引き取り手のないまま児童養護施設へ入所したのだった。
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『ああ。弥之と君の母親とでは、父は絶対に認めないからね』
幸一の話によれば、孝之介は大手企業の取締役でも有り資産家でもあった。
雛絵が弥之の相手として相応しくないと交際も難色を示していたが、弥之が家を捨てる覚悟で雛絵と結婚した事で孝之介の逆鱗に触れ、勘当同然に音信不通になっていったと言う事だった。
『おまけに水島の家の名を汚すような事件まで起こして』
忌々しいと言うように幸一の声は敵意に満ちていた。
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