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●100万分の1●

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「子供達は苦労したんだね。僕は本家の水島の家とは、弥之さんが結婚した後に交流をしなくなったので、ほとんど何も知らないんだよ」

惟晴自身が、本家の水島家を良く思っていなかった。弥之がいたから付き合いがあったようなものだった。

「そうですか。ただ俺が本日水島さんとお会いしたかったのは、健の両親が結婚する前の話を伺いたかったからなんです」

「ん?どう言う事?」

「水島さんは、健の母親の雛絵さんをよくご存知ですよね?」

大知が雛絵の事を、なぜ自分に聞きたいのか惟晴は考える。

「……ああ。一時期、彼女が大学生の時に家庭教師をして貰ったからね」

「もしかしてその当時、お2人の間に、特別な関係があったことはないですか?」

大知の言葉に、惟晴の顔は一瞬強張る。

「……すごく失礼な事を直球でぶつけてくるね。その意図は何かな?」

惟晴はあくまでも冷静に話を聞こうと思った。

「健があなたに似ていると思ったので」

「確かに、僕は従兄弟同士と言うこともあって弥之さんと似ていた。弥之さんの息子である健君と似ている所があってもおかしくないだろう」

大知が何を疑っているのか分からず惟晴は大知を睨む。

「俺は、健の本当の父親は、あなたなのではと思って本日お会いしたかったんです」

大知は今日の目的を話す。
惟晴の反応を見たかったので、わざと会話をこの流れにしたのだった。

「なぜそう思った?正直、僕は雛絵さんに憧れていた事は認めるが、君が考えるような関係になった事はない。大体、雛絵さんは弥之さん一筋だった。弥之さんしか見ていなかったよ」

新聞記者として、観察眼は優れていると自負している大知は惟晴の反応をずっと見ていて、雛絵と惟晴の間に男女の関係はなかっただろうと判断した。
もちろん、惟晴が相当なポーカーフェイスなら話は別である。

「……実は、弥之さんと雛絵さんの間に、健が産まれることはあり得ないのではと言う事実がありまして」

「どう言う事だい?」

また大知が何を言いたいのか惟晴は理解できない。
勿体つけられて少しだけ苛つき始める。
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