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●100万分の1●

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蓮司は健が用意してくれたアパートの部屋から、真古登が住むアパートを眺めた。
少し離れてはいるが、蓮司の部屋から真古登の部屋は確認できる。ただ、真古登の部屋は2階だったので、外からはもちろん様子を伺う事はできない。

「女性を探すためだけに、わざわざアパートまで用意するか?マジでヤバい感じなのかよ」

健から今回の調査として、真古登のアパートの直ぐ目の前のアパートの鍵と、資料のファイルを渡されていた。
蓮司が使う部屋には一通りの生活用品も揃っていて、菜々緒を探すためだけに、何故ここまでお金をかける必要があるのか逆に怖くなる。

『山内さんが、うちの子会社の社員との間にトラブルを起こしていたのなら、早期に解決しなくてはならなかったからね』

蓮司との電話で健は答える。
健はまだ、真古登が菜々緒に手を下しているのでは無いかと思っている。
もちろん行方の分からない菜々緒が心配なのもあるが、大事件になって会社の信用が失墜するのも避けなければならない。 
まして、自社が扱う不動産物件で殺人事件などもってのほかである。

「おいおい、マジかよー。遺体と御対面とか勘弁してよー」

蓮司は健の考えている事を察して、背筋がヒヤリとして武者震いをする。

『本当にそこまでヤバいならお前に頼まない。素人に危険な真似はさせられないだろ』

万が一、真古登が菜々緒を殺害して部屋に隠しているのなら、蓮司が訪ねて行っても、部屋を開ける事は絶対ないだろうと健は思っている。

「……健サンならやらせそうですけど」

蓮司の反応に健は笑う。

『とりあえず、部屋の様子が知りたい。資料を参考に、分かる範囲で見てきてくれないか?』

「へーい。了解」

蓮司は健との電話を切ると、そろそろ真古登が帰宅するかと部屋の窓からアパート周辺をチェックした。
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