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●100万分の1●

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健は蓮司からの情報を元に、菜々緒失踪を整理する。
コーヒーショップの店長からは、半月程前の6月初旬の木曜日の勤務の後から消息が不明になったと聞いた。
蓮司の報告の様子から、菜々緒が真古登の部屋で殺害された可能性は少ない。
ただ、真古登が外で菜々緒を殺害したのであれば、遺体をどこに遺棄したかだ。
しかし、コーヒーショップの店長から聞いた菜々緒と真古登の様子や、蓮司が実際に真古登の部屋で見た様子を考えると、菜々緒が自ら失踪したのも否めない。

「店長が見たのはたまたまだったかもたれないが、山内さんは品川に貢いでいた可能性もあるな。そうなると、金銭トラブルで殺害。うーん、動機が短絡的か」

健は呟きながら、菜々緒が消息不明になってから今日までをボールペンで書き出す。

「品川から逃げるために失踪したなら、コーヒーショップに無断で姿を消すだろうか?」

無断で姿を消した事で、コーヒーショップの店長は真古登にも連絡を入れている。
健は菜々緒の仕事ぶりを評価していただけあり、菜々緒がそこまで考えが及ばない事や、無責任に職場を放棄する事に違和感を感じる。

「やはり、静真に聞いてみるしかないか」

真古登が菜々緒を殺害している可能性が残っている以上、やはり勤務態度を探るしかないかと健は結論に達した。
蓮司には静真から探ると言ったものの、両親のことがあって、事件性が高い可能性のある事に静真を巻き込む事は本当はしたくなかった。
ただ、やはり静真から真古登の勤務態度を聞ければ、真古登が菜々緒を殺害したのか、菜々緒が自発的に真古登から去ったのが分かるかもしれないと思った。
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