インシデント~楜沢健の非日常〜

五嶋樒榴

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●100万分の1●

3-8

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健は静真を誘い夕飯を食べながら、真古登が勤務中どういう男か尋ねる。

「品川さん?」

「ああ。勤務態度を知りたくてね」

健自らが、わざわざ子会社の従業員を気にかけるとは、真古登が上から目をつけられた事に静真は暗い顔をする。

「どうした?」

静真がおとなしくなったので健は尋ねる。

「わざわざ本社のあんたが俺に聞くってことは、品川さんの素行がバレてるって事だよね?」

静真が健をあんたと呼ぶ。
まだ素直に兄さんとは言ってくれないが、可愛い反抗だと健は微笑む。

「バレてると言う事は、やはりお前も何か知っているのか?」

静真が真古登を気にかける事に、営業店の中でも真古登の行動はおかしな点がある事が分かり、健は静真にカマをかける様な言い方をした。

「かなり多額の借金があるようで、ヤバい消費者金融に手を出したのか、先日も客を装った借金取りが来たんだよ」

借金と聞いて、菜々緒も真古登に金の無心をされていたのを、コーヒーショップの店長から聞いた話と擦り合わせる。
わざわざ借金の取り立てが職場にまで来るとは、闇金に手を出しているのかと健は顔を顰め、真古登の借金と菜々緒の失踪は、何か関連があるのではと頭の中で整理する。
金銭トラブルで殺害している可能性も再び浮上する。

「お前は貸したりしていないか?」

静真は首を振る。

「他の人達に最初に言われて、俺は1度も貸していない」

健はホッとした。
ただ菜々緒の件とは別の意味で、借金取りが営業店に来る状態を見過ごすわけにもいかない。

「悪いが、この先品川の仕事中の様子を報告してくれないか?」

「俺が?」

「お前にしか頼めない。品川が問題を起こすのは、会社にとって不利益になる。会社を助けると思って協力して欲しい」

本当は、真古登が付き合っていた相手である菜々緒を知っているかも聞きたかったが、菜々緒の件を匂わせて、そのせいで静真を危険な目には合わせられない。
あくまでも、真古登の素行調査と言う名目で健は静真に頼んだ。

「……分かったよ。あんたには色々恩もある」

健の切羽詰まった顔に、静真は拒否できない。
内心では健の力になれる事が嬉しいが、それを知られるのが嫌で静真はわざとぶっきらぼうを装う。

「ありがとう」

健が笑顔で素直に礼を言うと、静真は恥ずかしくてニヤけそうになるのを必死に堪えた。
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