インシデント~楜沢健の非日常〜

五嶋樒榴

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●100万分の1●

5-2

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「やっと見つけた。こんな所に逃げてたのか」

真古登は菜々緒がいる逸郎の部屋の前で呟き笑う。
迷うことなくインターホンを鳴らし、真古登は中の様子を伺った。

「はい、どちら様……!」

インターホンの画面に真古登の顔が見えて、菜々緒は全身の血の気が引くのが分かった。

『菜々緒だろ?』

「……」

『菜々緒ちゃーん!無視するなよー!』

真古登が大声を出すので菜々緒は怯えるも、誰かに真古登の声を聞かれると思ったら怖くなり、慌てて玄関のドアを開けた。

「菜々緒、迎えにきたぜ。話は後でたっぷり聞いてやるからな」

ニヤつく真古登だが、その目は笑っていない。
菜々緒は背筋が凍りつき、無意識に体が震える。

「……私は真古登ともう行かない」

「ああ?何言ってんの?許してやるから一緒に帰ろうぜ」

何を許すのかと菜々緒は真古登を見つめる。

「お前がいないと俺は大変なんだよー。お前だって俺と暮らした方が楽しいだろ?って、この部屋誰んだよ。パパ活のオッサンに部屋与えてもらったんか?」

菜々緒は激しく首を振った。

「違う!好きな人と暮らしてるの!」

「はぁ?何言っちゃってんの?そう言う冗談は面白くねーんだよ」

真古登はムキになって菜々緒の腕を引っ張った。

「やめて!私はここから離れたくない!もう真古登と一緒に暮らしたくない!」

抵抗する菜々緒に真古登は腹が立ってくる。

「何訳わからねーこと言ってんの?お前は俺の女だろ?この部屋の住民を訴えても良いんだぜ?俺の女に手を出したんだからな」

真古登の理不尽な言葉に菜々緒は首を振る。
だが、実際監禁されていたことを思えば、騒ぎになれば逸郎に迷惑がかかる。

「違う!私は自分の意思でここに住んでるのよ!私は、真古登とはもう終わったのッ!」

昼間はほとんどマンションの住民がいないせいか、菜々緒と真古登の声を聞いても誰も出ては来ない。

「そっか、じゃあ警察に通報するわ。ここの住民がお前を拉致ったってな」

「辞めて!そんな嘘、誰も信じないわッ!」

真古登は無言でスマホを操作する。
そして写真の画面を菜々緒に見せた。

「お前は俺の女なんだよ。この画像をここの住民に見せて、お前が誰の所有物か教えてやるわ」

真古登にいつも、脅迫に使われる画像を見せられて菜々緒は何も言い返せない。
これ以上下手に抵抗すれば、真古登が逸郎にも何をするかと不安になる。

「お前は俺のために、これからもその体で稼ぐんだよ。売れる間、俺が付き合ってやる」

真古登との問題を解決しない限り、逸郎と幸せになる事は出来ないんだと、菜々緒は自分の無力を感じながら逸郎の部屋を後にした。
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