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●100万分の1●

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その後も1週間、健は蓮司に菜々緒の行動を見張らせた。
菜々緒はほぼ毎日のように、色々な男と待ち合わせをしてはラブホテルに入ると言う行動を繰り返す。
健は、不特定多数の相手をする菜々緒の身の安全を考え、菜々緒に一体何をやらせているのか真古登を探るために、真古登が籍を置く子会社本社の人事部の会議室に呼び出した。

「ここへ呼び出された理由は分かりますか?」

仕事中なので、健は真古登に敬語で接する。

「いえ、全然分かりません」

真古登は訳がわからず、憮然とした態度を取る。

「あなたが勤務する営業店へ、闇金まがいの消費者金融の業者が取り立てに来た様子なので」

健の言葉に真古登は顔を顰める。店長が報告したんだと考えた。

「私たちの仕事で、多額の借金は信用問題になるのは理解されてますよね?自己破産なんて絶対にされては困るんですよ」

この先真古登が借金返済に困って自己破産をするようになると、真古登が持っている宅地建物取引士の資格にも影響が出る。
宅地建物取引士が自己破産をした場合、裁判所での自己破産の手続き開始後、30日以内に自身が住む各都道府県に届け出る必要がある。
その後、宅地建物取引士の資格は制限され、復権する免責許可が出るまでの期間は、宅地建物取引士としての仕事が出来なくなる。
自己破産の内容によって、なかなか免責許可を受けられなければ、復権に何年かかるか分からないのであった。

「自己破産してもバレないとは思って無いですよね?」

健は厳しい眼差しを真古登に向ける。
自己破産をする場合、自己破産の手続き開始や免責許可は官報(国が発行する機関紙)の公告に掲載される。
官報を管理する部署が健が属する親会社にはあるので、真古登が黙っていても自己破産をすれば健にバレてしまうのである。

「ただ、問題なのは、品川さんが消費者金融にどの様な理由で借金をしたかです。ギャンブルなどの浪費では、自己破産もできないかもしれない」

真古登のように、借金の大半が多額のギャンブルなどの浪費の場合、自己破産をしようとしても免責不許可事由に該当すれば、自己破産も出来ずに自身で借金を返済していかなくてはならない。

「直ちに今の生活を改めて頂かないと、今後会社への不利益があった場合、懲戒処分も検討しなければならない」

真古登の借金が原因で、裁判所から給料の差押の通達が来ないとも限らないのだ。
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