インシデント~楜沢健の非日常〜

五嶋樒榴

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●100万分の1●

7-1

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救急車で病院に運ばれた健の手術が始まり、葵は駆け付けた静真に健が輸血ができない事を話す。

「そんなッ!同じ兄弟なのに、俺は何も出来ないの?俺が救うことが出来ないなんて!」

葵は慰めるように静真の背中を優しく撫でる。

「健は静真が自分の元に戻ってくれただけで救われているんだ。今は無事に手術が終わることをここで待つしかない」

葵と静真は関係者待合室で、ただ無言でお互い心の中で手術が無事に終わることを祈る。
静真は健と初めて会った時のことを思い出していた。
祥子を巡ってライバルだと思っていた健が、実は同じ血を分けた兄弟だったと知り、本当の両親はもうこの世にいないことを知った。
今は健に認められたい一心で仕事も頑張っている。
その姿を見せられない事態だけは、絶対に何があっても避けたい。
まだ健に伝えてない事が沢山あるのだから。

「手術は終わりました。ご説明が有りますので、こちらにお願いします」

どれだけ時間が経ったのか、もうそんな事を考える余地も無くなった時に、手術が無事終わった知らせが看護師から葵と静真に伝えられた。
医師からの説明で、健の手術は困難を極めながら成功したものの、予断を許さない状況が続いていた。
最悪、2度と目を覚まさないかもしれなかった。
それでも葵と静真は再び目を覚ますことを信じて、ICUで眠る健を見守る。

「俺、兄さんと暮らしていた子供の時のこと、何も覚えてないんだ。俺は石浜静真として暮らしていたから。兄さんが居たことすら何も知らなくて」

「仕方ないさ。お前のせいでも、健のせいでもない。もちろん、お前達の両親のせいでもない」

全て糸坂の悪行だと静真も分かっている。
その事で、愛した祥子とも今は距離を置いているのだから。

「もっと……もっと早くに、素直になれば良かった。意地張ってないで、素直に兄さんと呼べば良かった」

静真は悔しくて、健の寝顔を見ながら後悔する。

「馬鹿だな。そんなの、いくらでも呼べるだろ。健はきっと目を覚ます。こんな事で簡単に死ぬ奴じゃない」

葵の言葉に、静真は無言で何度も頷く。
きっと目覚めてくれる事を信じて、2人は健の寝顔をただ見詰めた。
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