3 / 38
第一章──冒険者登録が無双の門出
他の誰でもない自分のために
しおりを挟む
『とりあえず冒険者登録しよっか』
「転生っぽいのキタァァァァア!!! って、待て待て。嬉しいけどそもそも、何で?」
もっと別にやらなきゃいけないことがあるのではないかと、厨二男子の思考を打ち払って冷静に返す。奇妙に慎重な生き物であった。
『お金ないの。少しでも魔法が使えるなら登録くらいはできるからさっさとしちゃおう』
お金が無い。なるほど、最悪だ!!
今日の宿代すらないと。なるほど、終わりだ!!
うんしよう、是非しよう冒険者登録ッ!!
「……今までなんでしてなかったのか、一応聞いても?」
『無能だから。魔法使えるようになったらしたいことランキング堂々の三位だよ』
「お、おう……そりゃよかったな……」
理にはかなっているし、それが最善ではあるものの。
割とシエラの私情的にも最優先事項のようだった。
■ ■ ■
「もっとこう……ないのか、ステータスとか、こう……なんて凄い資質なんだ! 君は最初っからS級! みたいな……」
『訳分からんぽっと出の馬の骨にそう易々と権利渡すわけないじゃん……てか、すてーたす? って何?』
どうやら、テルが想像しているゲームチックな異世界とはかなり異なるらしい。
あくまで現実は現実。そう突きつけられた気がしてしょぼくれる。
『ともあれこれで冒険者登録完了だね。清級だから月給は十一万ジスト……私にとっちゃ夢のような大金だよ』
「でも確か、ノルマこなさないと下の階級に落とされるんだっけか」
『そ。キャリアがない場合最初は清級で、下から順番に辱級、劣級、廉級、清級、勇級、英級、帝級。下がるのは簡単だけど上がるのは難しいよ』
「明らかに侮辱的な名前が使われてんのがいやらしいな……」
『一番下なんてむしろ冒険者解約に多額の借金を背負わされてその後は奴隷扱い……絶対になりたくないし、魔法の使えない私じゃそこに行くのがオチだからやめといたんだよ』
「なるほどな。まぁ今ならそんな心配はないわけだ」
『そうとも限らなーい、君がさっさと魔法制御できるようにならなきゃ意味がなーい』
「……あぁ、頑張るよ」
魔力制御というのをシエラから教わってはいるものの、どうにもこれが難しい。
今までなかった感覚だけに、おそるおそる一歩ずつ進んでいくしかないのだ。
「お嬢ちゃん、さっき見てたんだが……冒険者登録したのか? その年齢で」
ふとテルは辺りを見回す。
お嬢ちゃん、と呼ばれたのが自分であることに気づかなかったのだ。
「お嬢ちゃんってお嬢ちゃんしかいないだろう」
苦笑しながらそう言うのはやたらめったらデカい巨漢だ。前の輝の体だったとしても見上げる形になるだろう。
「……ん、あぁ俺? まぁ金がなくてさ」
「そりゃ、大変だな……親御さんは?」
「いない。身寄りなんてどこにもない……(よな?)」
『うん。うちは没落貴族だからね、戸籍を抹消してもらって逃げおおせた私以外は皆もう……』
「そうか、そうか……大変だなぁお嬢ちゃん……大変だなぁ……」
目頭を抑える巨漢に、テルは罪悪感を募らせた。
確かに周りから見ればテルは背伸びする少女にしか見えないが、テル自身はもう働くべきいい大人なのだから当然だ。
そのチグハグで、自分がズルをしているような気になってしまう。良心が痛む。
「そんな、大袈裟な……俺より辛い思いしてる人なんて、きっともっと、たくさんいますよ」
「んなこた関係ねェぞお嬢ちゃん。自分より辛い奴がいるからって、お前さんが辛くないわけじゃなかろうに。……! そうだ、うちのパーティに来ないか。勇級の集まりだからよ、きっと楽させてやれる」
「いや、そんな、さすがに足引っ張るし悪いですって……」
「いいや、子供には子供のやるべきことってのがあるんだよお嬢ちゃん。君はきっとそれを出来てねぇから、今ここで俺らとやるんだ」
「出来て……ないこと?」
「パーッと遊んでパーッと大声出して笑うんだよ。楽しいぜ? せっかく可愛い顔してんだからよ、眉間に皺寄せてちゃ台無しだ」
『…………』
テルとしては罪悪感しかなかった。
だが、黙りこくるシエラを見てふと気づいた。
───これは、シエラの人生だ。
巨漢の言うことは的を得ていて、シエラは実際そうするべきだった。
周りの環境が、今までそれを許さなかったのだ。
「……シエラ」
「ん?」
「お嬢ちゃん、じゃなくてシエラです。……よろしくお願いします」
そう、これはシエラの人生だった。
シエラの人生を手伝った先に、テルの人生がある、そういう関係だから。
「おうシエラちゃん。俺はダゴマだ。呼び捨てで、敬語じゃなくていいんだぞ」
「そうか? 俺は口が悪いから気をつけろよダゴマ」
「おう!! 子供はそれでいいんだ!!」
つまるところテルは、一切のテルを棚に上げてシエラを満喫しなければならないのだ。
他の誰でもない、シエラのために。
そして、他の誰でもない、テルのために──。
「転生っぽいのキタァァァァア!!! って、待て待て。嬉しいけどそもそも、何で?」
もっと別にやらなきゃいけないことがあるのではないかと、厨二男子の思考を打ち払って冷静に返す。奇妙に慎重な生き物であった。
『お金ないの。少しでも魔法が使えるなら登録くらいはできるからさっさとしちゃおう』
お金が無い。なるほど、最悪だ!!
今日の宿代すらないと。なるほど、終わりだ!!
うんしよう、是非しよう冒険者登録ッ!!
「……今までなんでしてなかったのか、一応聞いても?」
『無能だから。魔法使えるようになったらしたいことランキング堂々の三位だよ』
「お、おう……そりゃよかったな……」
理にはかなっているし、それが最善ではあるものの。
割とシエラの私情的にも最優先事項のようだった。
■ ■ ■
「もっとこう……ないのか、ステータスとか、こう……なんて凄い資質なんだ! 君は最初っからS級! みたいな……」
『訳分からんぽっと出の馬の骨にそう易々と権利渡すわけないじゃん……てか、すてーたす? って何?』
どうやら、テルが想像しているゲームチックな異世界とはかなり異なるらしい。
あくまで現実は現実。そう突きつけられた気がしてしょぼくれる。
『ともあれこれで冒険者登録完了だね。清級だから月給は十一万ジスト……私にとっちゃ夢のような大金だよ』
「でも確か、ノルマこなさないと下の階級に落とされるんだっけか」
『そ。キャリアがない場合最初は清級で、下から順番に辱級、劣級、廉級、清級、勇級、英級、帝級。下がるのは簡単だけど上がるのは難しいよ』
「明らかに侮辱的な名前が使われてんのがいやらしいな……」
『一番下なんてむしろ冒険者解約に多額の借金を背負わされてその後は奴隷扱い……絶対になりたくないし、魔法の使えない私じゃそこに行くのがオチだからやめといたんだよ』
「なるほどな。まぁ今ならそんな心配はないわけだ」
『そうとも限らなーい、君がさっさと魔法制御できるようにならなきゃ意味がなーい』
「……あぁ、頑張るよ」
魔力制御というのをシエラから教わってはいるものの、どうにもこれが難しい。
今までなかった感覚だけに、おそるおそる一歩ずつ進んでいくしかないのだ。
「お嬢ちゃん、さっき見てたんだが……冒険者登録したのか? その年齢で」
ふとテルは辺りを見回す。
お嬢ちゃん、と呼ばれたのが自分であることに気づかなかったのだ。
「お嬢ちゃんってお嬢ちゃんしかいないだろう」
苦笑しながらそう言うのはやたらめったらデカい巨漢だ。前の輝の体だったとしても見上げる形になるだろう。
「……ん、あぁ俺? まぁ金がなくてさ」
「そりゃ、大変だな……親御さんは?」
「いない。身寄りなんてどこにもない……(よな?)」
『うん。うちは没落貴族だからね、戸籍を抹消してもらって逃げおおせた私以外は皆もう……』
「そうか、そうか……大変だなぁお嬢ちゃん……大変だなぁ……」
目頭を抑える巨漢に、テルは罪悪感を募らせた。
確かに周りから見ればテルは背伸びする少女にしか見えないが、テル自身はもう働くべきいい大人なのだから当然だ。
そのチグハグで、自分がズルをしているような気になってしまう。良心が痛む。
「そんな、大袈裟な……俺より辛い思いしてる人なんて、きっともっと、たくさんいますよ」
「んなこた関係ねェぞお嬢ちゃん。自分より辛い奴がいるからって、お前さんが辛くないわけじゃなかろうに。……! そうだ、うちのパーティに来ないか。勇級の集まりだからよ、きっと楽させてやれる」
「いや、そんな、さすがに足引っ張るし悪いですって……」
「いいや、子供には子供のやるべきことってのがあるんだよお嬢ちゃん。君はきっとそれを出来てねぇから、今ここで俺らとやるんだ」
「出来て……ないこと?」
「パーッと遊んでパーッと大声出して笑うんだよ。楽しいぜ? せっかく可愛い顔してんだからよ、眉間に皺寄せてちゃ台無しだ」
『…………』
テルとしては罪悪感しかなかった。
だが、黙りこくるシエラを見てふと気づいた。
───これは、シエラの人生だ。
巨漢の言うことは的を得ていて、シエラは実際そうするべきだった。
周りの環境が、今までそれを許さなかったのだ。
「……シエラ」
「ん?」
「お嬢ちゃん、じゃなくてシエラです。……よろしくお願いします」
そう、これはシエラの人生だった。
シエラの人生を手伝った先に、テルの人生がある、そういう関係だから。
「おうシエラちゃん。俺はダゴマだ。呼び捨てで、敬語じゃなくていいんだぞ」
「そうか? 俺は口が悪いから気をつけろよダゴマ」
「おう!! 子供はそれでいいんだ!!」
つまるところテルは、一切のテルを棚に上げてシエラを満喫しなければならないのだ。
他の誰でもない、シエラのために。
そして、他の誰でもない、テルのために──。
0
あなたにおすすめの小説
現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~
はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。
病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。
これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。
別作品も掲載してます!よかったら応援してください。
おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。
転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!
nineyu
ファンタジー
男は絶望していた。
使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。
しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!
リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、
そんな不幸な男の転機はそこから20年。
累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~
ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。
彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。
敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。
この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。
「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」
無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。
正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる