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第一章──冒険者登録が無双の門出
迷宮見学と初めての魔法
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「どりゃあァ!!」
「え、えげつねぇ……」
ダゴマが構える巨大なハンマーがムカデのような魔物を潰す。
思わず顔を引き攣らせたテルだったが、その反面シエラは冷静に分析をしていた。
『ありゃかなりシンプルな魔法だね、魔力を直接衝撃に変えて威力を増強してるみたい。でも武器に魔力纏わせるのって確か結構難しいし、凄いよこれは』
「こんなのよく平気で見られるな」
『テルは相当育ちがいいんだね、こんなの普通だよ? ていうか見慣れてもらわなきゃ困るんだけど……』
「……善処する」
アルトリア大迷宮第五層は広いながらにも一本道で、囲まれて襲われるような事は無い。
「……マジでただの見学だなぁこれ」
ただ皆が魔物を倒しつつ、その魔物の特性や気をつけるべき点をレクチャーしてくれるだけ。
立場に合っているとはいえ、ただ守られている感じがどうにも歯がゆい。
「おとと、五層のゲートモンスター復活してるみたいアル。先行って仕留めてくるアル~」
「待て……って、あーぁ……」
ムルはそう楽しそうに告げ、先行して何体もの魔物を一撃で華麗に屠っていく。
制止したレンリィもあまり本気で止める気は無いらしい。半ば諦めたような顔だ。
「ったく、あいつは……シエラ、あれは真似しちゃダメだからな。いくら余裕のある敵でも事故ってのはあるもんなんだ、皆となら笑い事で済むことが一人じゃ致命傷になりかねん」
「あ、あぁ……やんないよ、怖いし命が惜しい」
「それでいい。何より大切なのはてめぇ自身の命だからな」
「……僕らはいのちだいじに。ムルはガンガンいこうぜ」
『……! テル、後ろ!!』
正に間一髪、といったところだろうか。
倒されたはずの魔物が起き上がり、尻尾についたハリを猛烈な勢いでテルへと飛ばしたのだ。
シエラの掛け声に反応して力んだテルの目の前に見えない壁のようなものが展開し、ハリをなんなく弾いた。
……魔法!?
「!? っぶな……!」
「こンの野郎ッ!!」
最早力を使い切った魔物にすかさずダゴマが一撃を加える。
「……た、助かった……に、にしても……」
「……迷宮の怖さが分かっただろう、にしてもよく反応できたな、偉いぞシエラちゃん」
「凄い。僕だったら食らってたかも」
「あー、えっと、嫌な予感がして、さ。ダゴマもすぐやっつけてくれてありがとな」
「当然だ。むしろ爪が甘くてすまなかった……見学などと安心させながら、危険に晒した」
「……うん。配慮、足りなかった、ごめん」
「そんな……気にしないでくれ、頭下げるのはむしろこっちの方なんだから」
「……君は本当にいい子だな」
「そんなことはないよ」
ただでさえ頭が上がらないのだ。
彼らのおかげでどれ程の未来が約束されたことか。それを考えれば当然、いやむしろもっと敬うべきで、罰当たりなくらいだ。
それを言うと、ダゴマはまた君は賢いななどと言うのでテルは首を傾げた。
『ほんとダゴマさんもレンリィさんも、ビビっちゃうくらいお節介ないい人だよね』
「(あぁ、ほんとに)」
しかし──なるほど、シエラがいることには物理的なアドバンテージがあるらしい。
死角がない……その優位性には計り知れないものがあると思う。
それに今、魔法が使えた!!
火事場の馬鹿力のようなものとはいえ、普通に魔法が使えたのだッ!!
「の割にしょっぼい魔法だけどな……」
異世界転生物で初めての魔法といえば、もっとこう、ワイバーンだとかドラゴンだとかを一撃で仕留めてしまうようなものだ。
現実との落差にテルは肩を落とす。
『いやいや、ビックリしたよ……ほんと迷宮って何が起こるか分かんないね。魔法のコツが掴めたんだったら、かえってラッキーだよ今の』
「(ポジティブシンキングか? まぁ、確かになんとなく使えるような気がするけど……もしあのハリが当たってたらと思うとゾッとするぞ)」
『たらればを話してもしょーがないでしょ、しかも悪い方にだなんて超非合理的だよ』
それもそうだな、とテルは苦笑した。
「おーいゴマ野郎、もうゲートモンスターは片付けたアルよー、今日のノルマはもう終わりアル」
「あぁよくやった。だがムル、一人で行動するなとあれ程言っているだろう」
「悪いアル、うち血の気多くてつい突っ走っちゃうアル。許して欲しいアル~」
「悪い癖。分かってるなら直す努力、するべき」
「……普段あんま喋らないだけに一言一言の威力が凄いアルね……耳が痛いアル」
「つーわけで今日はもう帰るぞシエラちゃん。お疲れ様だ」
「あぁ、新鮮で楽しかった、ありがとう」
『ゲートモンスターは貢献値美味しいからなぁ……普段はもっと長い間潜るはずだよ。ラッキーだったねテル』
「(ゲートモンスター? 貢献値……? 詳しく教えてくれ)」
『あぁえっとね、迷宮はたくさんの階層に分かれてるって話をダゴマさんがしたでしょ? その五層毎にゲートモンスターっていう強い魔物が時折出現するんだよ。貢献値っていうのは魔物を倒すと浄化される魔力分を数値化したもので、ほら、えーっと……ダゴマさんがつけてる腕輪、あれにそのデータが書き込まれるの』
「(ほんほん……?)」
『それでその貢献値にはギルド側が定めるノルマがあって、定めた貢献値に応じた報酬が貰えるってわけ』
「(……あぁ、ノルマを達成できなかったら級が下がるってのはつまり……)」
『そういうこと。迷宮を攻略出来ない人間はどんどん級が下がっていくんだよ。それでも、最低限の生活の保証を求めて冒険者になる人は跡を絶たないんだけどね』
「(まぁ死ぬわけにはいかないしな、闇が深いなぁ……って、ん?)」
ひとつの疑問が、テルを貫いた。
「(それならシエラはどーやって生活してたんだ?)」
『あー……私はほら、自分で言うのなんだけど外見がいいし、まだ十五歳だから……最大限活用して乞食してたよ』
「(……やっぱ闇深いな、聞かなきゃよかった)」
とはいえそんな生活は決してシエラの望むものではなかっただろう。
自分がきっかけで一人の少女が夢に向かって歩き出せたという事実に、テルは少し嬉しくなった。
「え、えげつねぇ……」
ダゴマが構える巨大なハンマーがムカデのような魔物を潰す。
思わず顔を引き攣らせたテルだったが、その反面シエラは冷静に分析をしていた。
『ありゃかなりシンプルな魔法だね、魔力を直接衝撃に変えて威力を増強してるみたい。でも武器に魔力纏わせるのって確か結構難しいし、凄いよこれは』
「こんなのよく平気で見られるな」
『テルは相当育ちがいいんだね、こんなの普通だよ? ていうか見慣れてもらわなきゃ困るんだけど……』
「……善処する」
アルトリア大迷宮第五層は広いながらにも一本道で、囲まれて襲われるような事は無い。
「……マジでただの見学だなぁこれ」
ただ皆が魔物を倒しつつ、その魔物の特性や気をつけるべき点をレクチャーしてくれるだけ。
立場に合っているとはいえ、ただ守られている感じがどうにも歯がゆい。
「おとと、五層のゲートモンスター復活してるみたいアル。先行って仕留めてくるアル~」
「待て……って、あーぁ……」
ムルはそう楽しそうに告げ、先行して何体もの魔物を一撃で華麗に屠っていく。
制止したレンリィもあまり本気で止める気は無いらしい。半ば諦めたような顔だ。
「ったく、あいつは……シエラ、あれは真似しちゃダメだからな。いくら余裕のある敵でも事故ってのはあるもんなんだ、皆となら笑い事で済むことが一人じゃ致命傷になりかねん」
「あ、あぁ……やんないよ、怖いし命が惜しい」
「それでいい。何より大切なのはてめぇ自身の命だからな」
「……僕らはいのちだいじに。ムルはガンガンいこうぜ」
『……! テル、後ろ!!』
正に間一髪、といったところだろうか。
倒されたはずの魔物が起き上がり、尻尾についたハリを猛烈な勢いでテルへと飛ばしたのだ。
シエラの掛け声に反応して力んだテルの目の前に見えない壁のようなものが展開し、ハリをなんなく弾いた。
……魔法!?
「!? っぶな……!」
「こンの野郎ッ!!」
最早力を使い切った魔物にすかさずダゴマが一撃を加える。
「……た、助かった……に、にしても……」
「……迷宮の怖さが分かっただろう、にしてもよく反応できたな、偉いぞシエラちゃん」
「凄い。僕だったら食らってたかも」
「あー、えっと、嫌な予感がして、さ。ダゴマもすぐやっつけてくれてありがとな」
「当然だ。むしろ爪が甘くてすまなかった……見学などと安心させながら、危険に晒した」
「……うん。配慮、足りなかった、ごめん」
「そんな……気にしないでくれ、頭下げるのはむしろこっちの方なんだから」
「……君は本当にいい子だな」
「そんなことはないよ」
ただでさえ頭が上がらないのだ。
彼らのおかげでどれ程の未来が約束されたことか。それを考えれば当然、いやむしろもっと敬うべきで、罰当たりなくらいだ。
それを言うと、ダゴマはまた君は賢いななどと言うのでテルは首を傾げた。
『ほんとダゴマさんもレンリィさんも、ビビっちゃうくらいお節介ないい人だよね』
「(あぁ、ほんとに)」
しかし──なるほど、シエラがいることには物理的なアドバンテージがあるらしい。
死角がない……その優位性には計り知れないものがあると思う。
それに今、魔法が使えた!!
火事場の馬鹿力のようなものとはいえ、普通に魔法が使えたのだッ!!
「の割にしょっぼい魔法だけどな……」
異世界転生物で初めての魔法といえば、もっとこう、ワイバーンだとかドラゴンだとかを一撃で仕留めてしまうようなものだ。
現実との落差にテルは肩を落とす。
『いやいや、ビックリしたよ……ほんと迷宮って何が起こるか分かんないね。魔法のコツが掴めたんだったら、かえってラッキーだよ今の』
「(ポジティブシンキングか? まぁ、確かになんとなく使えるような気がするけど……もしあのハリが当たってたらと思うとゾッとするぞ)」
『たらればを話してもしょーがないでしょ、しかも悪い方にだなんて超非合理的だよ』
それもそうだな、とテルは苦笑した。
「おーいゴマ野郎、もうゲートモンスターは片付けたアルよー、今日のノルマはもう終わりアル」
「あぁよくやった。だがムル、一人で行動するなとあれ程言っているだろう」
「悪いアル、うち血の気多くてつい突っ走っちゃうアル。許して欲しいアル~」
「悪い癖。分かってるなら直す努力、するべき」
「……普段あんま喋らないだけに一言一言の威力が凄いアルね……耳が痛いアル」
「つーわけで今日はもう帰るぞシエラちゃん。お疲れ様だ」
「あぁ、新鮮で楽しかった、ありがとう」
『ゲートモンスターは貢献値美味しいからなぁ……普段はもっと長い間潜るはずだよ。ラッキーだったねテル』
「(ゲートモンスター? 貢献値……? 詳しく教えてくれ)」
『あぁえっとね、迷宮はたくさんの階層に分かれてるって話をダゴマさんがしたでしょ? その五層毎にゲートモンスターっていう強い魔物が時折出現するんだよ。貢献値っていうのは魔物を倒すと浄化される魔力分を数値化したもので、ほら、えーっと……ダゴマさんがつけてる腕輪、あれにそのデータが書き込まれるの』
「(ほんほん……?)」
『それでその貢献値にはギルド側が定めるノルマがあって、定めた貢献値に応じた報酬が貰えるってわけ』
「(……あぁ、ノルマを達成できなかったら級が下がるってのはつまり……)」
『そういうこと。迷宮を攻略出来ない人間はどんどん級が下がっていくんだよ。それでも、最低限の生活の保証を求めて冒険者になる人は跡を絶たないんだけどね』
「(まぁ死ぬわけにはいかないしな、闇が深いなぁ……って、ん?)」
ひとつの疑問が、テルを貫いた。
「(それならシエラはどーやって生活してたんだ?)」
『あー……私はほら、自分で言うのなんだけど外見がいいし、まだ十五歳だから……最大限活用して乞食してたよ』
「(……やっぱ闇深いな、聞かなきゃよかった)」
とはいえそんな生活は決してシエラの望むものではなかっただろう。
自分がきっかけで一人の少女が夢に向かって歩き出せたという事実に、テルは少し嬉しくなった。
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