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七夕の終わる日2

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彦星様、突然の訪いで申し訳ありませんわ。



突然後ろから愛しい織姫の声がして驚いたよ。
僕の顔を見てはらはらと涙する織姫を見て、抱き寄せて宥めるのは当然だよね。

丁度日付が変わって、逢瀬の日になっていた。
見張りはこの小屋の周辺に数名いるだろうけど、使者を名乗った押し掛け男は意識を刈り取って転がしているから、織姫が来たことはバレてないと思う。

僕が無事で気が緩んで涙が止まらなくなったって、泣きじゃくりながら言う織姫もすごく可愛らしい。
きっとここに来る直前まで気を張りつつ怒っていたんだろうな。
そして織姫の逆鱗に触れたということは、天界はもう救えない。

次代を蔑ろにした上で、中継ぎの分際で先代の命を覆すなどありえない話だよ。
そしてそれに従う重臣も、織姫の存在を娯楽の対象にした民も赦される事はない。



僕が1人で片付けようと思ったけれど、織姫が来てくれたのだから2人で幕引きしよう。

そう、正当な次代から天帝の座を奪った簒奪者と、そこに与したものは神の怒りの雷が落ちる。
今織姫が天界から去れば、夫婦を引き裂くものから逃れたという正当な理由がある。そしてあの男は次代を蔑ろにして追い払った事になる。

天界の殆どが崩壊するだろうけど、一部の善良な者がいればいつか再建するかもしれない。新しい天帝が産まれることがあれば、だけれどね。







織姫、どこへ行きたい?
柵なんか捨ててのんびり暮らそう。
お母上の元侍女一家も一緒に行こう。
子供が授かったらきっと賑やかになるね。



別居話の七夕なんてもう終わりだ!
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