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第七話 変身サーロイン? 肉?
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「……いつの間にか……眠ってたか」
気が付くと見慣れた双丘が目に入った。
俺を覗き込むように、大切に抱きかかえてくれている姿勢のままだった。
抱き込む腕をそっと外し、膝枕の上から起き上がる。
「悪魔さまの憑依は……もう解けてる?」
問い掛けても全く微動だにしない。
親密なお友達に戻ってしまっていた。
「――悪魔の認識、改めた方が良いのかも。悪魔が冷酷で残忍、非人道的で卑しいってのは、先人が創り上げた嘘に過ぎないってね」
まるで俺が幼い頃に甘えてた、優しい母のような悪魔さまを思い、そんなことを口走った。
大きく背伸びをした際、窓の付近に日和っていた、小さな生物の気配に不意に気付く。
なんだろうと見やれば、一匹の真っ黒なネズミが、暢気に日向ぼっこをしていた。
「――それは貴様の勘違いだろう? 我らは正しく冷酷で残忍、非人道的で卑しいぞ? 人の肉を喰らう輩もおるし」
首を持ち上げ俺に向けて、そう応えた。
獰猛な爬虫類のように縦に細い瞳孔の金眼――ネズミの物ではない。
「もしかして――ずっと、側に居てくれた?」
「まぁな。貴様の負の感情を嗜んで満腹したのでな? ついでだ。中々に美味だったぞ?」
「どうりで心が軽い筈だよ。――有り難う」
嫌な気分がなくなっていた。
「妙に清々しい……まるで生まれ変わったような?」
「――貴様は生まれ変わったんだよ。悪魔に組みする魔法少女としてな? 言っておくが、見た目はブサメンのままだぞ?」
妙な気配を纏うネズミ――じゃない、ハムスターかな?
「どうせならイケメンにしてくれても良いんじゃね? 悪魔さまならできそう」
「勿論、可能だぞ? 対価をもらうがな? だがしかし、貴様から滲み出る負の感情が消えるのは惜しい……。なので施してやらぬ」
後ろ足で直立姿勢になると、前足でシッシな真っ黒なハムスター。
「あっそ。――ところでその姿はアレか、魔法少女にはマスコットって言うアレだな」
「貴様が寝てる間、そこらの偏った文献を読み漁っておってな? 可愛い生物が良いと判断したのだ。現世からあまりに掛け離れた生物では、貴様も困るだろうと思ってコレに決めた」
「あれ? 憑依しかできんの違った? ハムスターにも擬態できるんだ」
「正しくは乗っ取っただがな。元々のチンケな魂は喰ろうてやった。既に存在しておらぬよ」
「酷いな……と言うことは、もう俺の友達の中には、入ってくれないのか……」
「我がその中に入って共に行動すると――下種共から奇異の目に晒されるが良いのか?」
「構わない! ハムスターよりは理想の子! それが例え人形と呼べるものであってもだ! 俺にはずっと良い!」
「解った、そっちに移ろう。――悦れ、下僕」
ハムスターが途端に脱力し、窓の外へと落下していった。
代わりに俺の親密な友達が、生きた人のように滑らかに動き始める。
「最高かよ! やっぱこうでなきゃ! 風呂も寝るのも常に一緒! これからは出掛けるのも一緒! 生きてきた人生で最も嬉しい! ……はぁはぁ」
「貴様、存外に気持ち悪いな……。衆目の目のこともある。貴様以外には……正しく人間に見えるように手を打っておいてやろう」
「悪魔さま、本当に優しいのな? 本当に悪魔さま?」
「良く言われる。まぁ、貴様には我の下僕――すなわち魔法少女として、筆舌し難い苦難に満ちた地獄を歩んでもらうのだ。このくらいは面倒みても良かろう? 但し、代わりに極上の負の心を定期的に献上せよ。――良いな?」
「了解――あ、傅いた方が良い?」
「良い。面倒臭い。特別に許す。ついでにタメ口で構わん」
「有り難き幸せ~。でもホント、変わった悪魔さまだな?」
「好きにほざいておれ、下僕」
「――早速だけどさ、ちょっと教えてよ? 自分の意思で魔法少女に変身する方法」
「そこのスマホだったか? 手にして念じろ。準備ができたら願え――それだけだ。至極簡単であろう?」
「ちょっとやってみても?」
「――好きにしろ」
スマホを手に、姿見の鏡の前に立つ。
鏡に写るのは、瓶底メガネな醜い体型の見慣れた俺。
そして魔法少女になりたいと、強く念じる。
キュイン、キュイン、キュイン――。
俺のスマホから例の電子音が鳴り響いた。
「――変身っ!」
『認識改変及び原子分解再構成を実施――Standing by』
抑揚のない機械じみた合成音声が響いた!
そして俺の身体が輝きだし――、
着ていた服が弾け飛んで全裸になった。
「うわぁ……謎のバンクシーンは裸になるのか――って、嘘⁉︎」
服どころか皮膚もなくなった!
筋肉組織丸出しの超キモい姿だよ……。
「理科室の人体人形かよ!」
そう思った次の瞬間――、
醜い短足な脚から、長くスマートな脚へ。
太く短い腕から、華奢で長い腕へ。
メタボ腹から、くびれた腰へ。
ダルダルの胸が、たわわな果実へ。
瞬く間に再構成され、少女の見目麗しい全裸に変わっていく俺。
瓶底メガネな俺の顔はまだそのまま。
アンバランス過ぎて、俺ながらドン引き。
身体が形成されると周囲の空間が歪む。
そこから痛いフリフリな衣装が出てきて、恥ずかしい部分から素早く覆っていく――。
だがしかし、ここでも瓶底メガネな俺の顔は、何故かまだそのまま。
何かの嫌がらせだろうか? ドン引きを通り越して変態としか思えず、俺ながらテラヤバい。
「――熱っ⁉︎」
急に顔が焼けるように熱くなった!
見ればボコボコと沸騰したように、顔の肉がグチャグチャになって、着ぐるみの大きなフェイスに変わった。
ここだけホラーなのも、何かの嫌がらせだろうか?
『――Complete. ――変身完了』
最後に独特の合成音声が響くと、輝きが収まった。
そして鏡の前に立つ俺は――。
両手にマジカルトンファーを携えた、魔法少女の着ぐるみ姿になっていた――。
「普段は一瞬だ。貴様が見てみたいと申すので、今回は虚数時間を利用した。――変身プロセスを自身で見た感想はどうだ、下僕?」
「……顔が最後まで残る異様さに、俺ながら引いた。あと魔法少女っぽくなくって、変身ヒロイン? 変身ヒーロー? そんな感じかな?」
「中間を取って変身サーロインでどうだ、下僕?」
「俺は肉か! 肉なのか! それを言うならヒーローインだろうが! 面白くないわ!」
「――冗談だ。さて、変身を堪能したところで、早速、出張ってくれ。どうやら……また天使が降りてきたようだ」
「了解……魔法少女遣い荒いな?」
「神に文句を言え。――行くぞ」
窓枠に立つと、直ぐ様、外に飛び出して行った悪魔さま。
「俺の親密な友達、壊すなよ?」
大丈夫かなぁとか突拍子もないことを考えつつ、悪魔さまの後に続く俺だった――。
――――――――――
世界の行く末は、俺の頑張り次第?
気が付くと見慣れた双丘が目に入った。
俺を覗き込むように、大切に抱きかかえてくれている姿勢のままだった。
抱き込む腕をそっと外し、膝枕の上から起き上がる。
「悪魔さまの憑依は……もう解けてる?」
問い掛けても全く微動だにしない。
親密なお友達に戻ってしまっていた。
「――悪魔の認識、改めた方が良いのかも。悪魔が冷酷で残忍、非人道的で卑しいってのは、先人が創り上げた嘘に過ぎないってね」
まるで俺が幼い頃に甘えてた、優しい母のような悪魔さまを思い、そんなことを口走った。
大きく背伸びをした際、窓の付近に日和っていた、小さな生物の気配に不意に気付く。
なんだろうと見やれば、一匹の真っ黒なネズミが、暢気に日向ぼっこをしていた。
「――それは貴様の勘違いだろう? 我らは正しく冷酷で残忍、非人道的で卑しいぞ? 人の肉を喰らう輩もおるし」
首を持ち上げ俺に向けて、そう応えた。
獰猛な爬虫類のように縦に細い瞳孔の金眼――ネズミの物ではない。
「もしかして――ずっと、側に居てくれた?」
「まぁな。貴様の負の感情を嗜んで満腹したのでな? ついでだ。中々に美味だったぞ?」
「どうりで心が軽い筈だよ。――有り難う」
嫌な気分がなくなっていた。
「妙に清々しい……まるで生まれ変わったような?」
「――貴様は生まれ変わったんだよ。悪魔に組みする魔法少女としてな? 言っておくが、見た目はブサメンのままだぞ?」
妙な気配を纏うネズミ――じゃない、ハムスターかな?
「どうせならイケメンにしてくれても良いんじゃね? 悪魔さまならできそう」
「勿論、可能だぞ? 対価をもらうがな? だがしかし、貴様から滲み出る負の感情が消えるのは惜しい……。なので施してやらぬ」
後ろ足で直立姿勢になると、前足でシッシな真っ黒なハムスター。
「あっそ。――ところでその姿はアレか、魔法少女にはマスコットって言うアレだな」
「貴様が寝てる間、そこらの偏った文献を読み漁っておってな? 可愛い生物が良いと判断したのだ。現世からあまりに掛け離れた生物では、貴様も困るだろうと思ってコレに決めた」
「あれ? 憑依しかできんの違った? ハムスターにも擬態できるんだ」
「正しくは乗っ取っただがな。元々のチンケな魂は喰ろうてやった。既に存在しておらぬよ」
「酷いな……と言うことは、もう俺の友達の中には、入ってくれないのか……」
「我がその中に入って共に行動すると――下種共から奇異の目に晒されるが良いのか?」
「構わない! ハムスターよりは理想の子! それが例え人形と呼べるものであってもだ! 俺にはずっと良い!」
「解った、そっちに移ろう。――悦れ、下僕」
ハムスターが途端に脱力し、窓の外へと落下していった。
代わりに俺の親密な友達が、生きた人のように滑らかに動き始める。
「最高かよ! やっぱこうでなきゃ! 風呂も寝るのも常に一緒! これからは出掛けるのも一緒! 生きてきた人生で最も嬉しい! ……はぁはぁ」
「貴様、存外に気持ち悪いな……。衆目の目のこともある。貴様以外には……正しく人間に見えるように手を打っておいてやろう」
「悪魔さま、本当に優しいのな? 本当に悪魔さま?」
「良く言われる。まぁ、貴様には我の下僕――すなわち魔法少女として、筆舌し難い苦難に満ちた地獄を歩んでもらうのだ。このくらいは面倒みても良かろう? 但し、代わりに極上の負の心を定期的に献上せよ。――良いな?」
「了解――あ、傅いた方が良い?」
「良い。面倒臭い。特別に許す。ついでにタメ口で構わん」
「有り難き幸せ~。でもホント、変わった悪魔さまだな?」
「好きにほざいておれ、下僕」
「――早速だけどさ、ちょっと教えてよ? 自分の意思で魔法少女に変身する方法」
「そこのスマホだったか? 手にして念じろ。準備ができたら願え――それだけだ。至極簡単であろう?」
「ちょっとやってみても?」
「――好きにしろ」
スマホを手に、姿見の鏡の前に立つ。
鏡に写るのは、瓶底メガネな醜い体型の見慣れた俺。
そして魔法少女になりたいと、強く念じる。
キュイン、キュイン、キュイン――。
俺のスマホから例の電子音が鳴り響いた。
「――変身っ!」
『認識改変及び原子分解再構成を実施――Standing by』
抑揚のない機械じみた合成音声が響いた!
そして俺の身体が輝きだし――、
着ていた服が弾け飛んで全裸になった。
「うわぁ……謎のバンクシーンは裸になるのか――って、嘘⁉︎」
服どころか皮膚もなくなった!
筋肉組織丸出しの超キモい姿だよ……。
「理科室の人体人形かよ!」
そう思った次の瞬間――、
醜い短足な脚から、長くスマートな脚へ。
太く短い腕から、華奢で長い腕へ。
メタボ腹から、くびれた腰へ。
ダルダルの胸が、たわわな果実へ。
瞬く間に再構成され、少女の見目麗しい全裸に変わっていく俺。
瓶底メガネな俺の顔はまだそのまま。
アンバランス過ぎて、俺ながらドン引き。
身体が形成されると周囲の空間が歪む。
そこから痛いフリフリな衣装が出てきて、恥ずかしい部分から素早く覆っていく――。
だがしかし、ここでも瓶底メガネな俺の顔は、何故かまだそのまま。
何かの嫌がらせだろうか? ドン引きを通り越して変態としか思えず、俺ながらテラヤバい。
「――熱っ⁉︎」
急に顔が焼けるように熱くなった!
見ればボコボコと沸騰したように、顔の肉がグチャグチャになって、着ぐるみの大きなフェイスに変わった。
ここだけホラーなのも、何かの嫌がらせだろうか?
『――Complete. ――変身完了』
最後に独特の合成音声が響くと、輝きが収まった。
そして鏡の前に立つ俺は――。
両手にマジカルトンファーを携えた、魔法少女の着ぐるみ姿になっていた――。
「普段は一瞬だ。貴様が見てみたいと申すので、今回は虚数時間を利用した。――変身プロセスを自身で見た感想はどうだ、下僕?」
「……顔が最後まで残る異様さに、俺ながら引いた。あと魔法少女っぽくなくって、変身ヒロイン? 変身ヒーロー? そんな感じかな?」
「中間を取って変身サーロインでどうだ、下僕?」
「俺は肉か! 肉なのか! それを言うならヒーローインだろうが! 面白くないわ!」
「――冗談だ。さて、変身を堪能したところで、早速、出張ってくれ。どうやら……また天使が降りてきたようだ」
「了解……魔法少女遣い荒いな?」
「神に文句を言え。――行くぞ」
窓枠に立つと、直ぐ様、外に飛び出して行った悪魔さま。
「俺の親密な友達、壊すなよ?」
大丈夫かなぁとか突拍子もないことを考えつつ、悪魔さまの後に続く俺だった――。
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