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第参章 失いゆく、日常――秘密の花園編。

陸拾弐話 悪戯。

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 アリサが個人所有しているトンデモ特務機関、専属の研究施設でもあるそれ。


 通称、秘密の花園――。


 名前からして、相当、胡散臭い謎施設になるんだが、世界中の色々な場所に点在してるってんだから驚きだ。

 東南アジアに拠点を構えている支部の近くに、秘湯が湧いているので家族をそこ招待するのだと、先日、直筆の招待券を持参して来訪したアリサ。

 秘湯と耳にした双子組が爛々と目を輝かせ、異様に乗り気で喧しく強請ねだるのと、アリサがやたらと急かして妙に推してくるので、この際、手書きチケットの胡散臭さは華麗にスルーして、斗家の面々で招待されてやることにしたのだった。


 尚、俺店は自営業ならではの必殺の荒技、俺的諸事情による臨時休業にしてな。


 今回は斗家の面々に加えて、ワンコ?共も一緒に連れての旅行となる。

 ペットは公共移動手段では荷物扱いとなってしまい、貨物室などに閉じ込められて窮屈させてしまうのが普通。
 従僕共は図体のデカいヤツらばかりなので尚更だな。


 だが今回は、公共移動手段ではなく、アリサ的痛自家用ジェットでの家族旅行となる。


 誰に気兼ねすることなく、乗客と同じ扱いで搭乗可能。
 つまり、客室に連れ込もうが、放ったらかしにしようが、なんら問題はない。
 なので、一緒に連れて行ってやることにしたわけだな。


 胡散臭い謎の施設だけに、護衛と言う役割も兼ねてな?


「うはっ⁉︎ 街、小さっ⁉︎」

「高~い! 速~い! 凄~い!」

 アリサ的痛自家用ジェットでの移動中、飛行機が珍しいのか、窓の外を見て騒がしい、相変わらず小学生なノリで元気溌剌な双子組。

 最妃は俺の肩にしな垂れ掛かかり、スヤスヤと可愛い顔で寝息を立てていた。

 ケルは双子組の側で一緒に窓の外をじっと見やり、ナニやら想いに耽っているようだ。

 昔っから乗りモノが大嫌いなベロに至っては、隅っこの座席下に潜り込んで、涙目で震えている――ちょっと笑ってしまった。

 スゥは俺の向かいの席で、淑女のような上品さで静かに寝息を立てている。

 アリサについては、関係各所からの問い合わせだろうか?
 両手にスマホ状態で目紛しく対応に追われ、メイドさん達と忙しなく動き回っていた。


 さて、俺はどうしているかと言うと――。


 搭乗前にアリサから手渡された、例の事件の調査報告書なるモノ何ぞに目を通し、俺的電波解釈で鋭意考察論破中だったりする。

 手渡された調査報告書には、細々した内容まで記されていた。


 その中でも特に俺的に関心がある記事は三つ。


 一つ目は、兎のようなモノとノウ・キメラ、磯巾着擬きのようなモノの残骸から判明した、体組織や構成要素についての調査報告だった。

 残骸や飛び散った肉塊、触手のようなモノを、ありとあらゆる手段で分析した結果――、


 構成要素がヒトとほぼ同じだったと言う点。


 あの内臓剥き出しの悍しい姿で、アイの外被とほぼ同じだって言うんだから、なんの冗談かと真剣に思ってしまった――。


 最早、ホラー以外のナニモノでもないな、うん。


 構成要素を解り易く纏めると、創作モノで言うところの人工的に作られたモノ。
 つまり、ホムンクルスや人造人間。
 ヒトが創ったわけでも、正しくヒトでもないけども、等しく似通ってるってことだ。

 更に言うと、ヒトの成り損ない、或いはでき損ないって意味でも正解だったわけだ。

 また、兎や犬に烏賊いかたこの遺伝子らしきモノも、融合された状態で細胞に残ってもいたらしい。


 もしかすると、何ぞかの実験の一環だったのやもしれんのな。
 当然、その本当の正しい理由何ぞは、俺の知るところでは全くないのだがな?


 二つ目は、意思無き肉塊から運良く発見された、極小サイズの生体組織的な謎の何ぞ。

 ノミみたいな本体からカビやきのこの菌糸のような、グロい毛のようなモノがわんさか生えたドン引きの画像が添付されていた。


 ちなみに、飯時には絶対に見てはならないほどにキモグロい。


 報道番組で取り扱えば、間違いなく閲覧注意、もしくは見せられないよ! のテロップが所狭しと吹き荒れるほどにヤバ過ぎ。
 夢でうなされること必至な姿だよ。


 当然、地球上に存在しない全く未知の、見たこともない種類のモノだ。


 恐らくだが、この生体組織的な謎の何ぞが遺体に寄生、或いは埋め込まれるかされ、自律か命令かは俺の知るところでは全くないのだが、宿主たる遺体などを動かしていたんだろう。

 コレについては、現在も引き続き解明中らしいと記されている――。


 最後は、俺が最も気になった内容の報告だった。

 黒曜石のような欠けらが、現場に残されていたそうだ。
 それの解析結果に、俺は驚かされたんだよ!


 俺所有の神秘の珠玉と、全く同一のモノらしい。


 それ以外は全く解らずでお手上げってオマケもつく。

 俺的電波解釈でも半信半疑な報告内容だったんだが、手元にある神秘の珠玉は抽象的な言い方をすると――、


 生きている何ぞなモノだった。


 もしかすると、外宇宙生命体そのモノなのか、或いは成れの果てなモノなのかと推論すると、神に疑問符なる正体は、神秘の珠玉ではないのかと、不意に思ってしまった。

 意外にも、俺達の近くに存在していて見ているのではないかと、前々からそんな気がしてならなかったしな。

 実際、未来救出時の俺の願いにも応じたし、俺を若返らせたりもしているんだしな。


 もしもだが、神秘の珠玉が神に疑問符だったと仮定すると、こう解釈もできる――。


 神秘の珠玉がここ最近、全く反応がないってのは、俺の再構成とかに力を貸し与え過ぎた所為で、貯えてた謎の何ぞなファンタジーパワー的なモノを消耗し過ぎたとか、だな。

 創作モノのお約束だと、生命エネルギーとか生体エネルギーとか言うヤツだ。


 本当にそんなだとすると、俺が若返る意味にも繋がっていく――。


 若返らせて活性化させた謎の何ぞな生命か生体かは知らん謎エネルギーっぽい何ぞが一番有力だが、他にも寿命や知識、血肉とか……そんな何ぞかだな?

 それをノウみたく喰ったり取り込んでたりして、少しずつ備蓄しながら回復してたりとかしてな? ――って考えに行き着ける。

 まぁ、色々と助けてもらって、実際、感謝はしてるからな。
 命に別状がなく生活に支障さえなければ、それならそれで俺的には一向に構わんのだが――。


 はっはっは……ナイナイ、ないわ~。
 俺ながら余りにもファンタジー的思考に寄り過ぎて、容赦なく草生やしてまうわ、うん。


 とにかくだ。ヒュービーがナニなのか少しでも判明して、ヤツらの謎に近付けただけも御の字としておくべきだな。

 ヒュービーは外宇宙生命体でほぼ確定だとして、知的かどうかはとりあえず仮定として保留にしておくか。

 あとは……そうだな。
 致命的な弱点とかが解れば、俺的にも願ったり叶ったりなところなんだが。

 更に欲を言えば、家族に頼らず俺自身のみで、直接、ヒュービーとやり合える素敵技能的何ぞを、再構成時に付与してくれてたりしていたら有り難かったんだが……。
 流石にそいつは我儘が過ぎるな。

 そう言えば、過ぎた力は身を滅ぼすってのが、現実、創作共にお約束だったな。

 俺の切なる願いが成就され、未来が過ぎた力を手にした時には、俺は代償に死にかけ――違うな。
 消失仕掛けたんだっけな、はっはっは。

 冷静に考えたら、それ以上の代償にナニされるか、ナニ持ってかれるのかも解らんのな。


 やっぱり、ホラー以外のナニモノでもないわ!


 ひと通り目を通して俺的電波検証を終えた俺は、確認していた資料を閉じると、伊達眼鏡と一緒に座席脇に置くいた――。


「お前は何処に居るんだよ……一体、ナニモノでナニがしたい? 否、俺やアイにナニかをさせたいのか……神に疑問符とやらさん」

 背もたれに身体を深く預け天井を見上げると、目頭を軽く揉んでマッサージしつつ静かにそう呟いた俺。

「だがしかし、そうだな……ひとつだけ。この願いだけは叶えてくれないか……神に疑問符とやらさん」

 常から願っていた想いを続けて呟く――。

「アイは掛け替えのない俺家族なんだ……。怪我や病気の万一の時に診てやれる何ぞか……そうだな……知識とか道具の類いとかになるんだろうか? それだけでも俺に与えてはくれないだろうか?」

 ナニ気に気になった最妃の胸元に収まっている、俺的ペンダントに目をやって心から切望する。

 そして、眠っている最妃の無邪気な寝顔にそのまま視線を移した。

「――ぷっ、ぐっすりだな。まぢ可愛い過ぎだろ……」


 そんな寝顔を見ていて、俺のいけない悪戯心に火がついた!


 あどけない寝顔の頬っぺたをツンツンしてみたり、無防備に曝け出している俺的超お至宝の双丘の山頂を突っついてみたり、ぷにぷにと摘んで揉みしだいてみたり。


 不適切な笑顔になって、隣で眠りこける最妃に、それはもう色々と悪戯して遊びまくる俺。


「――ぷっ、ナニしても起きないのな? しかし……珍しい。よっぽど疲れているんかね?」

 散々、堪能したあとで双丘に腕を引っ付けた俺は、腕から伝わってくる至高の柔らかさと温もりに、安心感を貰って眠気が襲ってくる。

 現地到着まで、まだまだ時間もあるようなので、最愛の最妃の髪を優しく撫でて、そっと寄り添う俺。


「おやすみ……良い夢を」

 いつもと変わらない優しい好みの香りに包まれて、少しだけ眠ることにした――。



 ―――――――――― つづく。
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