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第参章 失いゆく、日常――秘密の花園編。

漆拾玖話 侵入、其の弐。

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「アリサ……個人所有ってレベル違うぞ、コレ。何処ぞの誰かにドンパチ戦争でもやらかす気かよ。――って、俺にブーメランで返ってくるとは!? 俺も軍装だしヒトのこと言えんもんな、うん」


 俺達が塀の中に入るとそこは別世界だった。
 お約束と言えばお約束過ぎる光景に、開いた口が塞がらず驚かずにはいられなかった。


「冗談は置いといて。この厳重さ、ナニ?」

「アリサ叔母さんってナニモノなの、パパ」

「凄いですわね」

「肯定。乗りモノ沢山」

 そこは軍の駐屯基地の装いで前線基地に等しく、まさに秘密基地。
 バリケード的な塀に覆い隠されていた敷地内は、自衛隊の基地ほどにだだっ広い更地だったのだ。

 所々が荒れたままの状態で整備中ではあるが、護衛用か武装ヘリに数台の軍事車両までもが、この敷地に配備されていた。

「この施設に……そんなヤバいモノがあるのか……」

 そこから先にある近代的な建物に視線を移し、呟く俺と皆は急ぎ研究所へと向かった。


 辿り着いて真っ先に出入口を調べる俺。


 どちらかと言えば、収監所か格納庫的な様相だ。
 ドアを軽く叩いてみるが響く音が鈍過ぎた。
 つまり分厚い。更に言うと強度も半端ない。
 重々しい雰囲気の分厚そうなドアに窓等はなく、代わりに監視カメラ付きカード型電子ロックと、生体認証型の施錠装置が備え付けられていた。
 しかも現在も作動したままの状態でな。

「馬鹿正直に玄関からは襲撃せんか。暴走の線が濃厚だが……まだ解らんな」

 ドアに聞き耳を立てながら独り言ちる俺。

 冷たい肌触りを感じるだけで中の音は拾えない。
 ドアを見る限り襲撃された様子もない。
 中に入るにはここを如何にかして開けるか、別の場所を探すしか手はなさそうだった。

「はぁ。恐らく他の出入口も皆同じだよな。流石に胡散臭いだけのことはあったな、うん」

 重々しい出入口にうんざりして溜息が出る俺。

「彼方、どう致しますの?」

 俺の隣に来て心配しそうに尋ねてくる最妃。

「提案。アイが周囲を見てきますか」

 俺に打開案を提示してくるアイ。

「コレ、ボクでも壊すの難しいかも」

 重々しいドアに触れて呟く未来。


 未来の言う通り、破壊は難しいかもだ。
 この分だと建物そのモノにも鉄板何ぞな、補強的何ぞかが入っててもおかしくはないし。


 だがしかし。


「俺を舐めんなよ? 開かぬなら壊してみせようホットモットだ」

 意味のない意味不明な台詞を自信満々に宣い、伊達メガネのノーズパッドに中指を添え、不適切なドヤ顔になって伊達メガネ、キラッ!

「パパ、意味不明」「肯定」「チュイン?」

 呆れ気味に突っ込む双子組らはジト目だが。

「彼方、ナニか良い案が思い付きまして?」

 俺嫁の最妃だけが真面なことを言ってくれる。
 無事に帰ったら昨夜の続きだ! 俺、頑張る!

「所詮はヒトが作ったモノだからな、ヒトに壊せない道理はない筈だ! ――たぶん。それで大概は開いてたからな! ――アニメでは!」

 そこに機械があれば、弄って壊すが俺だからな。

「でも、どうやって? コレは流石にパパでも……」

「疑問。大丈夫?」「チュイン?」

 根拠が説得力皆無な俺が宣う突破案を伝えると、双子組らは再び呆れ顔で困惑し始めやがった。

「開いたら俺を褒め称え崇め奉れよ、未来にアイ。最妃はまた構ってくれると嬉しいな~なんてな」

 疑いのジト目を向けてくる双子組はスルーして、素早くことを成す俺。

「彼方、どんな時でもブレませんわね……勿論、よろしくてよ」

 最妃だけは大きく頷いて肯定の意を伝えてくれる。

 俺的軍装に隠されてもいない単なるポケットに手を突っ込み取り出した、いつもの俺的ツール。
 更に取り出す俺的ガチャポンの蓋を開けると、中身を取り出し電子ロックに貼り付けていく。

「いざ、開くが良い! 曝け出せ、パンドラの箱!」

 脇の専用ホルスターから俺的ドラグーンを引き抜くと、香ばしいポーズで電子ロックを撃ち抜いた俺。

 加減したプラスチック爆弾の威力で、外装だけが綺麗に消し飛ぶ電子ロック!
 外装がなくなって中の複雑な機械が露出する。
 早速、俺的ツールで機械を素早く分解していく俺。

 神に疑問符から譲渡された知識の一端の所為だろうか。
 普段弄っている俺的玩具と大差がないように感じ、複雑であるにも関わらず構造が瞬時に解った俺は、身体が勝手に動いて次々と分解していった。


 そして数分と掛からず――。


「良し、開いたぞ!」

 施錠を示す赤いランプが緑に変わる。

「凄っ!?」「驚嘆」「チュイン!」

 俺のことを見直したのか、双子組らは驚きの表情だ。

「流石に彼方ですわ。機械関連は本当にお手のモノですわね」

 最妃については俺に寄り添って、ご褒美のハグ。


 やった! ビバ! 俺的超お至宝!
 とかなんとか、内緒で喜んだ俺。


 ちなみに、もっかい組み立てろと言われても無理だけどな?

 どーやってバラしたのか覚えてないのも内緒だったり。



 ―――――――――― つづく。
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