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第参章 失いゆく、日常――秘密の花園編。
佰拾壱話 再会、其の参。
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「ここらで一息つこう。無理して落ちたら洒落にならん」
やはり負担が大き過ぎたようで、途中で息が上がったクモヨ。
大人二人を運んでいるうえ、糸まで吐かせてるんだ……無理もない。
見兼ねた俺は、考え通り休憩を挟むことにした。
「本当にすまん……」
「フゥ……イエ……ダイジョウブ」
足場にする為、蜘蛛糸のようなモノを硬化させたあと、項垂れて溜息を吐きながら肩で息をするクモヨ。
「ご苦労さん」「……エ⁉︎」
労いと感謝を気持ちから、綺麗な黒髪をゲシゲシと撫でまくってやった俺。
いきなりのことに肩を萎縮させて驚くクモヨだった。
「ワタシ ニ フレル ノ イヤ ジャナイ ノ……」
「そんなわけあるか! 今更ナニ言ってんのやら……。その下半身、身形は気にするな。クモヨはクモヨ。それで良い。実際な、俺も似たようなモノだからな?」
髪を撫でながら和かにハッキリ言ってやった。
俺自身も未知なる友人に再構成されて、ヒトのようでヒトでないモノなんだから、結局は一緒だからだ。
「ですわよ、クモヨちゃん。彼方ですから」
「ママ……それだと意味不明。ボクらにしか解らないって」
「そ、そうでしたわ! 私としたことが、オホホホ~」
「ママって、時々、天然炸裂……ううん、いいや。実はアイもね、元自転車なんだよ~」
「エ⁉︎ ……ウソ デスヨネ……」
とかなんとか。
俺の言葉のあとクモヨを気遣ってか、斗家の面々も各々に語り出した。
クモヨの周りに集まって、栄養調整携帯食料はチーズ味やチョコ味、フルーツ味に加え、取っておきの抹茶味何ぞも取り出して、まるでピクニックにでも来たかのような雰囲気で皆で雑談を交わしたり。
クモヨも嬉しいのか楽しいのか、若干、瞳を潤ませて微笑んで、辿々しくも皆と会話したり食べたり云々。
とてもヒトらしい一面を見せてくれていた。
その所為もあってかなりの時間は掛かってしまうものの、幸い襲撃もトラブルもなく下層へと到達する。
まぁ、正しくは降りっ放しのゴンドラの上に、だがな?
俺の知る限り、普通のエレベーターなら、ヒトが一人通り抜けるのがやっとな筈の点検ハッチ。
そこからどーやって大きな蜘蛛の下半身を抜いて、上層にやって来たのかが少々疑問だった。
だがしかし。
そんな疑問も到達した時点ですんなり解決する運びとなった。
この区画に入る為の出入口――つまり正しい停止位置よりもヒト二人分ほど下にズレ、停止していたってわけ。
その扉自体に壊された様子はなく、単に開けっ放しになっていただけだった。
「さっさと区画に出ちまおう。よっこいせ」
「パパ……爺むさい」
「うるせー! 見た目は二十代でもな、精神年齢はおやぢなんだよ!」
よじ登る際に漏れた俺の掛け声に、不適切な笑顔の未来が茶化してきた。
その後の皆が俺を見やってクスクス笑っていやがった。
俺をダシに場を和ませたんだろう……と思っておく。
気を取り直し出入口から外を見る。
今回はクモヨからある程度は聴かされていたが故に、あまり驚きはしない。
しないのだが……しないと思っていたんだが……現実とは惨い。
予想していた以上にアリサ的電波が全開の場所だったり。
「コレで庭園と仰りますか。……コレの何処らが庭園っつーのかな、アリサは?」
「庭園ねぇ……ボクは知らない。こんな庭園」
「えーと……アイもちょっと……ううん、かなりドン引きかなー」
「庭園と言えば、庭園なのでしょう、彼方」
出入口から皆が呆れ返って見やった区画内部。
東京ドームが余裕で収まるほどに場違いな広さ――この時点で既に庭園何ぞではない。
更に天井には人工太陽と思しき何ぞが周囲を照らし、ココが南国であることを思い出させるに等しい気候。
ご丁寧に人工雲何ぞも浮かんでいたりするから驚きだよな。
目隠しされて連れて来られていたら、まず地下とは思うまい。そんな感じ。
だがしかし、その程度は序の口だ。
奥に聳える住まいらしき建物は――、
屋根の所に風車が付いてるアレだ、アレ。
何故か情緒ある風車小屋ときた。
そこに延びる一本の整備された道は、綺麗に敷き詰められたレンガ通り。
何処ぞのロンドンを思い出させるほどに美しい仕上がりだよ……。
「アリサ……もう見捨てて帰ったろか」
その道の脇にもスルーし難い問題があった。
辺り一帯に禍々しい食虫植物のようなモノが咲き乱れているのだよ。
凄まじい数で。
更に言うと密林のように。
全く持って意味不明、流石の俺的電波脳でも理解が到底及ばないのだから。
此処まで綺麗に整備しておいて、なしてキモグロな食虫植物擬きを植え捲るの、ナニ?
景観も情緒もクソもあったもんじゃないじゃねーか。
しかもだ、レンガ通りへと触手のように蔓を伸ばして通せんぼときた。
この時点で植物とは違う何ぞなモノじゃね?
俺の知る限り、植物は蔓を触手のようには動かさん。
それは世間一般では、モンスターって言うんだよ?
「なぁ……俺達って虫? 喰う気満々で蔓を伸ばしてるよーにも思うんだが?」
「奇遇だねパパ……ボクもそー思うかな」
「激しく同意」「チュイン;」
「困りましたわね……」
呆れたような困ったような複雑な表情で顔を突き合わす俺達。
そして――。
「――燃やすか」
不適切な笑顔で伊達メガネ、キラッ! な俺は一言宣った。
徐に俺的軍装の隠されてもいないポケットに手を突っ込み、揮発油が詰まった俺的ガチャポンを取り出して投げ込もうとした。
その時――。
「待つのよ?」「ハッハ!」「フフン!」
通せんぼされたレンガ通りの蔓の奥から、凄く聴き慣れた一人と二匹の声を耳にした――。
―――――――――― つづく。
やはり負担が大き過ぎたようで、途中で息が上がったクモヨ。
大人二人を運んでいるうえ、糸まで吐かせてるんだ……無理もない。
見兼ねた俺は、考え通り休憩を挟むことにした。
「本当にすまん……」
「フゥ……イエ……ダイジョウブ」
足場にする為、蜘蛛糸のようなモノを硬化させたあと、項垂れて溜息を吐きながら肩で息をするクモヨ。
「ご苦労さん」「……エ⁉︎」
労いと感謝を気持ちから、綺麗な黒髪をゲシゲシと撫でまくってやった俺。
いきなりのことに肩を萎縮させて驚くクモヨだった。
「ワタシ ニ フレル ノ イヤ ジャナイ ノ……」
「そんなわけあるか! 今更ナニ言ってんのやら……。その下半身、身形は気にするな。クモヨはクモヨ。それで良い。実際な、俺も似たようなモノだからな?」
髪を撫でながら和かにハッキリ言ってやった。
俺自身も未知なる友人に再構成されて、ヒトのようでヒトでないモノなんだから、結局は一緒だからだ。
「ですわよ、クモヨちゃん。彼方ですから」
「ママ……それだと意味不明。ボクらにしか解らないって」
「そ、そうでしたわ! 私としたことが、オホホホ~」
「ママって、時々、天然炸裂……ううん、いいや。実はアイもね、元自転車なんだよ~」
「エ⁉︎ ……ウソ デスヨネ……」
とかなんとか。
俺の言葉のあとクモヨを気遣ってか、斗家の面々も各々に語り出した。
クモヨの周りに集まって、栄養調整携帯食料はチーズ味やチョコ味、フルーツ味に加え、取っておきの抹茶味何ぞも取り出して、まるでピクニックにでも来たかのような雰囲気で皆で雑談を交わしたり。
クモヨも嬉しいのか楽しいのか、若干、瞳を潤ませて微笑んで、辿々しくも皆と会話したり食べたり云々。
とてもヒトらしい一面を見せてくれていた。
その所為もあってかなりの時間は掛かってしまうものの、幸い襲撃もトラブルもなく下層へと到達する。
まぁ、正しくは降りっ放しのゴンドラの上に、だがな?
俺の知る限り、普通のエレベーターなら、ヒトが一人通り抜けるのがやっとな筈の点検ハッチ。
そこからどーやって大きな蜘蛛の下半身を抜いて、上層にやって来たのかが少々疑問だった。
だがしかし。
そんな疑問も到達した時点ですんなり解決する運びとなった。
この区画に入る為の出入口――つまり正しい停止位置よりもヒト二人分ほど下にズレ、停止していたってわけ。
その扉自体に壊された様子はなく、単に開けっ放しになっていただけだった。
「さっさと区画に出ちまおう。よっこいせ」
「パパ……爺むさい」
「うるせー! 見た目は二十代でもな、精神年齢はおやぢなんだよ!」
よじ登る際に漏れた俺の掛け声に、不適切な笑顔の未来が茶化してきた。
その後の皆が俺を見やってクスクス笑っていやがった。
俺をダシに場を和ませたんだろう……と思っておく。
気を取り直し出入口から外を見る。
今回はクモヨからある程度は聴かされていたが故に、あまり驚きはしない。
しないのだが……しないと思っていたんだが……現実とは惨い。
予想していた以上にアリサ的電波が全開の場所だったり。
「コレで庭園と仰りますか。……コレの何処らが庭園っつーのかな、アリサは?」
「庭園ねぇ……ボクは知らない。こんな庭園」
「えーと……アイもちょっと……ううん、かなりドン引きかなー」
「庭園と言えば、庭園なのでしょう、彼方」
出入口から皆が呆れ返って見やった区画内部。
東京ドームが余裕で収まるほどに場違いな広さ――この時点で既に庭園何ぞではない。
更に天井には人工太陽と思しき何ぞが周囲を照らし、ココが南国であることを思い出させるに等しい気候。
ご丁寧に人工雲何ぞも浮かんでいたりするから驚きだよな。
目隠しされて連れて来られていたら、まず地下とは思うまい。そんな感じ。
だがしかし、その程度は序の口だ。
奥に聳える住まいらしき建物は――、
屋根の所に風車が付いてるアレだ、アレ。
何故か情緒ある風車小屋ときた。
そこに延びる一本の整備された道は、綺麗に敷き詰められたレンガ通り。
何処ぞのロンドンを思い出させるほどに美しい仕上がりだよ……。
「アリサ……もう見捨てて帰ったろか」
その道の脇にもスルーし難い問題があった。
辺り一帯に禍々しい食虫植物のようなモノが咲き乱れているのだよ。
凄まじい数で。
更に言うと密林のように。
全く持って意味不明、流石の俺的電波脳でも理解が到底及ばないのだから。
此処まで綺麗に整備しておいて、なしてキモグロな食虫植物擬きを植え捲るの、ナニ?
景観も情緒もクソもあったもんじゃないじゃねーか。
しかもだ、レンガ通りへと触手のように蔓を伸ばして通せんぼときた。
この時点で植物とは違う何ぞなモノじゃね?
俺の知る限り、植物は蔓を触手のようには動かさん。
それは世間一般では、モンスターって言うんだよ?
「なぁ……俺達って虫? 喰う気満々で蔓を伸ばしてるよーにも思うんだが?」
「奇遇だねパパ……ボクもそー思うかな」
「激しく同意」「チュイン;」
「困りましたわね……」
呆れたような困ったような複雑な表情で顔を突き合わす俺達。
そして――。
「――燃やすか」
不適切な笑顔で伊達メガネ、キラッ! な俺は一言宣った。
徐に俺的軍装の隠されてもいないポケットに手を突っ込み、揮発油が詰まった俺的ガチャポンを取り出して投げ込もうとした。
その時――。
「待つのよ?」「ハッハ!」「フフン!」
通せんぼされたレンガ通りの蔓の奥から、凄く聴き慣れた一人と二匹の声を耳にした――。
―――――――――― つづく。
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