118 / 154
第参章 失いゆく、日常――秘密の花園編。
佰弐拾壱話 虚像、其の伍。
しおりを挟む
「すまん、待たせたファースト。コレが記録媒体だとして、更に複製体だと言うのなら、ファースト自身やオリジナルと繋がったりして、情報のシェア何ぞをしてたりするのか? 簡単に言うとだな、サーバーと端末がオンラインのように――って、俺の言ってる意味は解るか?」
「失礼ね! 現代のことくらい、とっくに勉強し尽くしてるわよ! ――答えはノンノン。其々はあくまでも独立したモノよ。用途に応じて細分化された記録ってのが正しいの。個々に得た情報は、オリジナルに全て伝達されるから筒抜けなの。反対にアタシらにはオリジナルのことは解らない……不便よねー。アタシに統合? 複製同士を融合すれば、そこにある分の記録は継承されるのかな?」
「あのな、尋ねてるのは俺。質問に質問で返すの、ナニ? ……ならば、俺とアイを再構成して救ってくれたり、リペアを授けてくれたりしたのは……もしかファーストなのか?」
「うーん、言っちゃうけど。アタシじゃないけど、オリジナルのアタシで間違いはないよ」
「つまり、ファーストとは別の個体……記録体の仕業ってことで良いんだな?」
「ややこしいわね。神に疑問符ってのが何人か居るって言えば解り易い? アタシはその中のひとつで、機能限定の廉価版みたいなモノ。役割は敵対勢力の排除担当ね。それ以外の知識は持ってないし。アリサから聴いたんだけど再構成だっけ? そんなことは絶対にできやしないもん。できるとすれば、アッチのアタシ、音信不通なオリジナルの方よ」
「――すまん。……もう一回、タイムだ」
俺は踵を返し皆の元に戻ると、再び最妃の手を引いて少し離れた。
「か、彼方……ですので、私にはナニもお答えできませんわ」
今度はやや困った顔で、聴こうとして歩み寄った俺より先に返事をする最妃。
つまり、この話しは本当っぽいのな。
リペア譲渡の時に頭に響いた未知なる友人の言葉は、単語主体だったが理知的だった。
ファーストの言ってる通り、俺の知ってる神に疑問符とは別の記録体なのだろう。
未知なる友人以上に流暢に喋ってはいるが、未知なる友人はファーストのように――、
馬鹿っぽくはなかったからな。
結論――ファーストは未知なる友人とは異なる存在。
言わば残念な微笑女で確定――ぷっ。
「――ねぇ? 貴方。今さ、すっごい失礼なこと考えてなかった?」
更に言っとこう。
エスパーかコイツは……。
「あー。纏めるとこうだな? つまり神秘の珠玉何ぞも神の疑問符には違いはないが、個々の役割分の記録を宿しているだけの簡易的なモノだと……それで合ってるか?」
「そそ。所詮、アタシらはただの複製、消耗品に過ぎないって。でも貴方達はこの時代に生きている、替えの効かないオリジナルなんだよ? 用件が済んだならアタシに構わず、アリサを連れてサッサとここから立ち去りなさいって」
「……しかしだな」
「昔は戦乙女もビックリで強かった美女なアタシ……だったと思うけど? でも、ご覧の通りの有様で。今は単なる貴方のお気に入りの容姿をした、単なる役立たずだから。放っておいて良いからさ――ほら、さっさと行った行った」
床に座り込んで、シッシと手で払う仕草のファースト。
フランクな言葉遣いからかな?
話していてどうにも憎めないヤツなんだよなぁ。
このまま放っておくのも……うーん。
「……ファーストが複製体なのは解った。しかしだなファーストはファースト、それで良くね? 自我もあるんだし。更に言うと独立してんだろ? ならば複製体のファースト自体もオリジナルと呼べるモノで合ってると俺は思うぞ?」
「貴方……本当にヒト?」
「学術的にはヒトだが、正しくはヒトっぽい何ぞな? ファースト……この海底遺跡だっけか? いっそ破棄してしまえ」
「貴方……ナニを突然、藪から棒に言うの?」
「自分を護る自分って、ナニ? 護るべき自分が居ないのであれば、それ自体に意味がなくね?」
床に座り込むファーストに手を差し伸べる俺。
勿論、他意のない普通の笑顔で俺達の元へと招いたのだ。
それはつまり、一緒に行こうと言う意味でだ。
と、その時だった――。
「な、何ぞ⁉︎」
突如、地響きのような音を立て、大きな揺れが起きた――。
そのあとも小さな地震、余震のような揺れが不規則に続く。
「アリサ、ファースト。招かれざる客何ぞが上で駄々を捏ねてんじゃねーのか? この場所は大丈夫なのかよ!」
ちょっと焦り気味で尋ねる俺。
ファーストもアリサも慌てふためく素振りはなかった。
なので大丈夫だろうとは思うが……。
地下五キロメートルに生き埋め何ぞ、絶対に御免被るからな。
「大丈夫だと思う……一応、結界みたいなモノは張ってあるし……」
ファーストが天井を見上げて答える。
上の昇降機の出入口付近に残骸すらなかったのは、そーゆーことだったんかい。
やや自信なさげに伝えてくるのが、俺的に些か不安なんだけども。
それにしてもお約束な結界ときたか。
最早、創作モノのファンタジーか何ぞだな、現実世界ってのも怪しいくらいに。
更に言うと、ご都合過ぎて笑うしかないわ。
「核弾頭が直撃しても大丈夫なのよ? だって、Shelterも兼ねてるのよ?」
対してアリサは、めっさ自信満々に俺的お至宝な双丘を張ってドヤ顔で言う。
その割に意外と脆かったように思うぞ?
俺如きのこさえた玩具で簡単に突破できる程度だからな……防壁シャッターとか。
「とにかくだ、脱出を急ぎたいんだが。出口は当然、他にも用意されてるんだろ?」
ちょっとした油断が大惨事に繋がる。
上でナニが起こっているのか全く不明なら尚更だよ。
大体、緊急時の脱出用通路何ぞは、こう言う時の為に必ず設置しておくのがお約束……てか、一般常識だからな? 在って然りだ。
だがしかし――。
「「無いわよ?」」「は?」
全く同じタイミングでユニゾンして、不穏当な言葉を宣ってくれやがったファーストとアリサ。
この揺れの中、いつ止まるか解らん昇降機で五キロメートルも上がれってのか?
未来じゃないが……あー、頭痛が痛い。
―――――――――― つづく。
「失礼ね! 現代のことくらい、とっくに勉強し尽くしてるわよ! ――答えはノンノン。其々はあくまでも独立したモノよ。用途に応じて細分化された記録ってのが正しいの。個々に得た情報は、オリジナルに全て伝達されるから筒抜けなの。反対にアタシらにはオリジナルのことは解らない……不便よねー。アタシに統合? 複製同士を融合すれば、そこにある分の記録は継承されるのかな?」
「あのな、尋ねてるのは俺。質問に質問で返すの、ナニ? ……ならば、俺とアイを再構成して救ってくれたり、リペアを授けてくれたりしたのは……もしかファーストなのか?」
「うーん、言っちゃうけど。アタシじゃないけど、オリジナルのアタシで間違いはないよ」
「つまり、ファーストとは別の個体……記録体の仕業ってことで良いんだな?」
「ややこしいわね。神に疑問符ってのが何人か居るって言えば解り易い? アタシはその中のひとつで、機能限定の廉価版みたいなモノ。役割は敵対勢力の排除担当ね。それ以外の知識は持ってないし。アリサから聴いたんだけど再構成だっけ? そんなことは絶対にできやしないもん。できるとすれば、アッチのアタシ、音信不通なオリジナルの方よ」
「――すまん。……もう一回、タイムだ」
俺は踵を返し皆の元に戻ると、再び最妃の手を引いて少し離れた。
「か、彼方……ですので、私にはナニもお答えできませんわ」
今度はやや困った顔で、聴こうとして歩み寄った俺より先に返事をする最妃。
つまり、この話しは本当っぽいのな。
リペア譲渡の時に頭に響いた未知なる友人の言葉は、単語主体だったが理知的だった。
ファーストの言ってる通り、俺の知ってる神に疑問符とは別の記録体なのだろう。
未知なる友人以上に流暢に喋ってはいるが、未知なる友人はファーストのように――、
馬鹿っぽくはなかったからな。
結論――ファーストは未知なる友人とは異なる存在。
言わば残念な微笑女で確定――ぷっ。
「――ねぇ? 貴方。今さ、すっごい失礼なこと考えてなかった?」
更に言っとこう。
エスパーかコイツは……。
「あー。纏めるとこうだな? つまり神秘の珠玉何ぞも神の疑問符には違いはないが、個々の役割分の記録を宿しているだけの簡易的なモノだと……それで合ってるか?」
「そそ。所詮、アタシらはただの複製、消耗品に過ぎないって。でも貴方達はこの時代に生きている、替えの効かないオリジナルなんだよ? 用件が済んだならアタシに構わず、アリサを連れてサッサとここから立ち去りなさいって」
「……しかしだな」
「昔は戦乙女もビックリで強かった美女なアタシ……だったと思うけど? でも、ご覧の通りの有様で。今は単なる貴方のお気に入りの容姿をした、単なる役立たずだから。放っておいて良いからさ――ほら、さっさと行った行った」
床に座り込んで、シッシと手で払う仕草のファースト。
フランクな言葉遣いからかな?
話していてどうにも憎めないヤツなんだよなぁ。
このまま放っておくのも……うーん。
「……ファーストが複製体なのは解った。しかしだなファーストはファースト、それで良くね? 自我もあるんだし。更に言うと独立してんだろ? ならば複製体のファースト自体もオリジナルと呼べるモノで合ってると俺は思うぞ?」
「貴方……本当にヒト?」
「学術的にはヒトだが、正しくはヒトっぽい何ぞな? ファースト……この海底遺跡だっけか? いっそ破棄してしまえ」
「貴方……ナニを突然、藪から棒に言うの?」
「自分を護る自分って、ナニ? 護るべき自分が居ないのであれば、それ自体に意味がなくね?」
床に座り込むファーストに手を差し伸べる俺。
勿論、他意のない普通の笑顔で俺達の元へと招いたのだ。
それはつまり、一緒に行こうと言う意味でだ。
と、その時だった――。
「な、何ぞ⁉︎」
突如、地響きのような音を立て、大きな揺れが起きた――。
そのあとも小さな地震、余震のような揺れが不規則に続く。
「アリサ、ファースト。招かれざる客何ぞが上で駄々を捏ねてんじゃねーのか? この場所は大丈夫なのかよ!」
ちょっと焦り気味で尋ねる俺。
ファーストもアリサも慌てふためく素振りはなかった。
なので大丈夫だろうとは思うが……。
地下五キロメートルに生き埋め何ぞ、絶対に御免被るからな。
「大丈夫だと思う……一応、結界みたいなモノは張ってあるし……」
ファーストが天井を見上げて答える。
上の昇降機の出入口付近に残骸すらなかったのは、そーゆーことだったんかい。
やや自信なさげに伝えてくるのが、俺的に些か不安なんだけども。
それにしてもお約束な結界ときたか。
最早、創作モノのファンタジーか何ぞだな、現実世界ってのも怪しいくらいに。
更に言うと、ご都合過ぎて笑うしかないわ。
「核弾頭が直撃しても大丈夫なのよ? だって、Shelterも兼ねてるのよ?」
対してアリサは、めっさ自信満々に俺的お至宝な双丘を張ってドヤ顔で言う。
その割に意外と脆かったように思うぞ?
俺如きのこさえた玩具で簡単に突破できる程度だからな……防壁シャッターとか。
「とにかくだ、脱出を急ぎたいんだが。出口は当然、他にも用意されてるんだろ?」
ちょっとした油断が大惨事に繋がる。
上でナニが起こっているのか全く不明なら尚更だよ。
大体、緊急時の脱出用通路何ぞは、こう言う時の為に必ず設置しておくのがお約束……てか、一般常識だからな? 在って然りだ。
だがしかし――。
「「無いわよ?」」「は?」
全く同じタイミングでユニゾンして、不穏当な言葉を宣ってくれやがったファーストとアリサ。
この揺れの中、いつ止まるか解らん昇降機で五キロメートルも上がれってのか?
未来じゃないが……あー、頭痛が痛い。
―――――――――― つづく。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
10
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる