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第肆章 終りゆく、日常――メフィスト編。

最終話 終息、其の肆。

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 メフィストを葬り去った方法――。

 以前、デパートでの大惨事の折、持ち帰った黒曜石のようなモノの欠片。
 実はそいつの分析を、アリサの研究機関――秘密の花園に依頼していた。

 当然だが、依頼主たる俺も、どんなモノか独自に解析、分析はしてはいたのだ――適当に。
 だがしかし、相変わらず手詰まりときた。
 だってな、一般人の俺だぞ?
 ましてやただのヒトの俺何ぞに、正しい回答を得るまでに至る筈がないだろうに。
 全く解らない未知のモノ――と言うのが解る程度だって。


 そんな感じだったのでいっそのこと、発想自体を別のベクトル方向性で考えてみた――。


 なんでこんなモノ――黒曜石のようなモノが現実世界、現代社会に実在するんだ?
 あり得ない事実があり得てるのはどうしてだ?
 とか言う堂々巡りな疑問を解明することに、一旦、蓋をした。

 そして発想の転換。
 単純明快に否定する方法で模索し始めたのだよ。
 解り易く言うと、抹消。
 つまり殺すにはどうするかについて、だな。

 そんな時だった。
 思い悩み苦しむ俺が偶々ニュースを見てて、アジア圏で猛威を振るう、とある事例に注目にする。


 そして、不意に一つの可能性に行き当たるんだな。


 そいつは、件の新種ウィルスが蔓延っている話題。
 そして、機内で読んだ資料に『ヒトと構成要素が酷使している』と言う点に繋がっていった。

 ここから導き出せる可能性。
 
 あとは至極簡単だった。
 ヒトに害をなす細菌に考えが纏まって、最終的に行き当たったのが『ヒト喰いバクテリア』で有名な細菌。
 まぁ、その名前も本当は正しくはないのだが――。

 実は、細菌と言うモノはヒトの肉を食らうのではなく、毒素を出して組織を液状化――つまり、崩壊させる。
 更にいうと、腐らせるのだ。
 医学で言う、壊死性筋膜炎と呼ばれている症例だな。

 壊死性筋膜炎を引き起こす原因である、劇症型の細菌は、数多くの種類が現実社会に蔓延っているのでな?
 最も一般的なのはA群連鎖球菌つー……ま、難しい話は置いておこう、うん。

 要はその細菌を俺的ルートから独自に入手して、俺なりに対ノウ特化に強化改良――つまり培養した。
 更に言うと、俺的細菌を作ろうとしたのな。


 その結果――例によってやらかした。


 違うな。そんな生易しいレベルではなかった……。
 もしも心ないモノに悪用されよーモノなら、地球がヤバい! テラやばい!

 感染力云々についても俺的細菌なので、当然の如く半端ないのはお約束。
 意思無き肉塊の肉片サンプル、灰色の石のようなモノの欠片、黒曜石のようなモノの欠片に至るまで、あっと言う間の書いて字の如くな一瞬で、跡形もなく喰い尽くしてしまったのだ――。


 不幸中の幸いにも健康なヒト――生きているヒトに害はないっぽい。


 生み出した本人……ヒトじゃないかもだけども、学術的にはヒトの俺には全く効果がなく、有ったのは死んだ肉だけっぽかったから。
 冷蔵庫にあった豚肉で試してみたら効果覿面。
 同様の効果を見て取れたからな……多分、合ってる。

 どうしてこーなった何ぞは、例の如く俺にも解らない。
 超絶ヤバいモノを、この世に生み出してしまっちゃったと言う事実だけが手元に残るハメとなった。


 そいつを俺的ライトセイバーに仕込んで、トドメの際にクソ爺いに流し込んでやったってだけ。


 折角、偶然でも出来たんだから活用しないとな。
 併せて、手を加えた俺的不動化薬や俺的筋弛緩剤云々の、動作を阻害する薬品何ぞも一緒にてんこ盛りで。


 なので――なんだよな、俺のコレ――。


「――と言うカラクリだな」

 俺にしては珍しく、真顔で解り易く噛み砕いて説明した……つもりなんだが。

「――ううむ。話を聴く限り、簡単ではないと私は考えるんだが? 要は不思議――彼方君はファンタジーと言うんだったか? そんなあり得ない細菌だったと。――えっと……彼方君。頼むから気狂――マッドサイエンティストと言うんだったか? そんなのには堕ちないでくれたまえよ? 私の手でお縄を捕りにいくなど、絶対に御免被るぞ」

 余り理解はしていない、難しい顔の大好だったり。
 ただ使い方を間違えると如何に危険なモノかは理解したようで、何ぞ有り得ないことを謎の白い歯をニッカリで俺に宣ってきた。

「ちょっと、ちょっと⁉︎ 黙って聴いてたけど、貴方……本当にナニモノ? アタシでもビックリよ⁉︎ そんなノーベル科学賞もビックリなご都合細菌を、良くもまぁそんなレベルで培養――」

 呆れてモノも言えんわって感じの渋い表情で肩を竦め、俗っぽいことをなんやかんや言い続けるファースト。

「ははは――俺がナニモノかって? 決まってるだろうに――」

 一拍の間を置いて、当たり前に答えてやる――。



「家族をこよなく愛する――だよ」



 ―――――――――― 第壱部、完。



【謝辞】
 筆者の拙い怪文書を飽きずにここまでお読み下さり、本当に有り難う御座いました。
 一年以上も前に晒していたモノを、無理矢理に改稿したのですが……誤字脱字も多く、お恥ずかしい限りです。
 ま、現在も大して変わってませんけどね。(汗)
 そして実は、懲りずにも続きがあります。(笑)
 既におかわりとして晒してますので、そちらもどうぞ宜しくお願いします。_φ(・_・
 
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