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第二部 オタクと中二病。

三十二痛 収拾つかんのと違うかコレ?

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 執事氏がメタな台詞と共に、デスゲーム的なにやらの準備があるとかないとか言いつつ、真野氏の私室をあとにしてから既に約一時間――。

「魔王、今度こそ勝つのは私よ。覚悟は良いでしょうね?」

 前回同様、洗濯板な金床でもキッツキツな競泳水着ですわな衣装のまま、キラッキラな素敵笑顔で口上を切る女勇者氏。

「勇者も懲りないわね? 散々、負けた挙句、また負けフラグで負け予告するなんてね、馬鹿なの?」

 受けて立つと言っても玉座に座ったままの真野氏。
 ファンタジーなことに、いつの間にお召し替えになられたのか俺の知るところでは全くないのですが、巨悪なたわわが迫力満点のボンテージ宜しくな、S属性がダダ漏れ極まる女王、或いは嬢王のような姿になっておいでですからメガネ、ビクッ!


 巨悪なたわわからメガネ――ゲフン。目が離せません。


「負けてないもん! ちょっと調子が悪くて本気出せなかっただけだもん!」

 頬袋いっぱいに向日葵の種子を頬張ったハムスターの如く、頬っぺたをぷくっと膨らまし、小動物的可愛らしさで憤慨なさる女勇者氏。

「ハイハイ。いつもそー言ってるわよね? これで何回目よ?」

 玉座に踏ん反り返って素っ気なく遇らう真野氏。


 いや、負け何回云々のそれ以前にですね、何故に女勇者氏は生きていらっしゃるのでしょうか?
 負けた方は死ぬから、デスゲームって言うん違うん?


「知らない。――ねぇ、魔王。このお菓子、凄く美味しいんだけど? 何処のよ?」

 比喩ではなく、実際にぷくっと膨らむほどお菓子を詰め込んでいた模様。

「行列のできる有名なあのお店自慢の焼き菓子だからね? 勇者、もっと食べる?」

 真野氏もお菓子を嗜んでのニッコリ。

「え、良いの?」「もちもち」

 真野氏と女勇者氏。執事氏が去り際に何処からか出した茶菓子を嗜みつつ、実際の距離はあれど和やかに語り合っておいでです。
 退っ引きならない美少女の御二方が方や玉座、方や石畳みに正座で、何故にそんな超絶素敵笑顔? と、疑問符をつけざるを得ないキャッキャウフフで、優雅にお茶を楽しみながら語り合っておいでです。


 ――って、長ぇって。
 存外、仲良しさんなんでしょうか?
 デスゲームだけにですね――ぷ。失礼。
 今からデスゲームを行うにも関わらず、その和やかな雰囲気はなんなんでしょうか?
 場違い感が半端ないんですけど? 良いんかそんなで?


 あ。真野氏の代わりに戦うのが俺だからでしょうか?


 そんな風に脳内で果敢にツッコミを入れていると――。


「――大変、長らくお待たせ致しました」

 唐突に湧――ゲフン。いつもの通りに現れた、例の如くな角っぽいカチューシャの執事氏。
 手には何故かバラエティ番組などで鉄板的な小道具――フリップと油性マジックをお持ちです。


 ちなみに。油性と言うのが特に重要。
 額に「肉」と書かれて大惨事の未来がメガネ、モヤモヤと垣間見えたり。


「僭越ながら。この私めが、今から御二方に簡単な質疑をさせて頂きます。全て「」にてお答え下さい」


 そっちの「」かよっ⁉︎


 そんなしょーもないバトルが開始された――のですが。


「まずは女勇者氏。貴女は痴女でしょうか?」

「……デス」

「言葉では言い表せないくらい、退っ引きならない痴女と言うことですね?」

「……デス」

「では、そちらの暗黒騎士様が所望すれば、どんな変態プレイでも悦び勇んで差し出す勢いでしょうか?」

「くっ……殺せっ!」

「おやおや。相変わらず諦めがお早い」


 なんだコレ? 意味不明過ぎん?
 もう帰って良いでしょうか?


「では、暗黒騎士様のターン。犬丸出しは実は最高の気分ですか?」

「……デス」「変態ね」

「お嬢様にガン見されて、異常に興奮なさりましたか?」

「……デス」「変態ね」

「象さんお鼻がビックなのね、パオパォーン! となった恥ず――グハァ! 勇ましい姿を見られても興奮しかないと?」

「……デス」

「大きくなった姿……実に興味深いわね」

「激しく同意」「――グハァ!」


 執事氏の意味フな途中と最後のグハァ! はメガネ、クイッ! と華麗にスルーしておいてだ……。
 だがしかし真野氏はステイだ。
 女勇者氏にはジャストモーメントだ。


「ちょっとちょっと真野氏っ⁉︎ さっきから「変態ね」ってなんで相槌打つんですかっ⁉︎ 酷ないっ⁉︎ それもですけれども! 象さんパオパォーン! の件になった途端、キラッキラな怖い笑顔になって、なまら熱い視線で大事な部分を凝視するのはやめてくれませんっ⁉︎ 女勇者氏もですよっ⁉︎」

 玉座に踏ん反り返ってウンウン頷いて肯定しまくる真野氏と、しれっと隣に立って見つめてくる女勇者氏に対し、果敢にもメガネ、ナンデヤネン⁉︎ っとツッコミますが。

「おっと、引き分け。つまりドローですね」

 しれっとそう宣言する執事氏。めっさドヤ顔で。


 おいコラ執事氏。何処らへんが引き分けて、つまりドローなんだ?
 何がしたいの? 最早、収拾つかんのじゃね? 



 ――――――――――
 またしても中二病ってやつは。
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