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第2章 ミッション・インポッシブル  ミッション系お嬢様校に潜入ミッション!

エピソード11-8

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国営公園内 占いの館―― 午前

 占いの館に入ると、案内板があった。ひとつのフロアにいくつもの仕切りが
してあり、番号が振ってある。

「ここでは受付でくじを引いて、その番号のブースで占ってもらうんです」 
 くじを引いた結果は、シズムが4番、ヨーコは9番だった。

「終わったらそこに喫茶スペースがありますから、そこで待ち合わせしましょう」
(失敗したわ。二人で占ってもらうという手もあったじゃない!私のバカ!)

「了解。4番かぁ、不吉だなぁ……」
 シズムは4番のブースに着いた。

「こんにちは、っていけねっ日本語通じないんじゃ?」

「大丈夫よ。直接は初めてよね?静流」

「伯母さん!」
 何と、4番のブースにいたのは、モモであった。周囲の空気が重く感じる。

〈オシリス、僕だ〉
 念話を始めた。
〈どうしたの?シズルってまた【夢操作】されてる?〉
〈今の状況を録画しといて〉
〈わかったわ【録画】〉

「さて、何から話せばいいかしら?あまり時間は取れないわよ」

「出来る限り詳しく説明してくれると、助かるよ」

「焦らないで。今はこの占い師を媒体に疑似的に静流に『夢』を見せている状態なの」

「【幻術】のようなもの?」

「そうね。だからじっくり話がしたい所なんだけど、そうもいかないわ」
 モモは静流が大方耳にしていると思われる事項を整理した。

 先ず、モモは静流の母親ミミの双子の姉であること。
 双子は「忌み子」とされ、村ではまともに生きていけない為、偽装し、双子ではないこととして育ったこと。

「ここまではミミから聞いているかしら?」

「うん。ただ母さんには『制約』が掛かっていて、言えないものもあるみたい」

「そんな事だろうとは思っていたわ」

「でも時が来れば解除されるって言ってた」

「残念だけど、それを待っている余裕はないの」

「どういうこと?」

「ミミ側の事情はその程度なのでしょうね。問題はコッチの事情なの」

「伯母さんの事情?」

「私は結局、双子に生まれてしまった事がバレて、異世界に飛ばされた」

「飛ばされたのは私と主人の『庵』、それに我が子『薫』よ。異世界には私たちの居場所は無いに等しかった」

「いくつもの平行世界を渡り、ようやく居場所らしき世界に辿り着いた」

「そこではささやかな幸せがあったわ。薫は剣術に長け、魔法も使えることから魔法剣士となった」

「薫を入れて四人のチームを作り、軍の厄介事とかを扱う仕事、彼らに言わせると「始末屋」というのをやっていたの」

(夢で見た人たちかな?)

「ある日、薫たちはとあるミッションに参加した」

「そのミッションは、軍の研究施設にいる『素体』を奪うというミッションだった」

「軍の施設に潜るって、味方じゃないですか」

「軍内部での派閥争いに利用されたのよ、薫たちは『保守派』の指示で『改革派』の研究施設を襲った」

「『素体』の強奪は成功した。でも薫はその子を軍の『保守派』には渡さなかった」

「それは、確実に殺されるのが解っていたから」

「その子は私が育てた。名を『薫子』と付けた」

「歳は丁度薫と同じ位だったんで、薫の妹として育てた」

「薫子が16歳の時、変化が起きた。魔力が増大し、暴走した」

「暴走って、何があったんです?」

「時空の壁を破った。それであなたたちのいる異世界に干渉した」

「それが薫子さんなのか……」

「だけど世界の修復力が働いて、存在力が足りなくなった薫子を薫が連れ戻した」

「薫さんが?それで今、薫子さんはどこに?」

「私たちがいる世界の深奥『嘆きの川コキュートス』で眠ってもらっているわ」

「何で薫子さんはコッチの世界に来たんですか?」

「それは……静流、あなたに会うためよ」

「ぼ、僕に? 何で? あ、もしかしてあの夢の……」

「そう、あなたは会っている。あの子の自我が目覚める前に」

「それで、僕は何をすればいいの?」

「近いうちに薫子は起きる。そして再びソッチの世界に現われるでしょう」

「薫子はソッチの世界の『整合性』を崩そうとする。例えばあなたを殺す……とか」

「もし、僕が死ぬと何が起こるの?」

「ソッチの世界の修復力が追いつかなくなり、結果的にソッチとコッチ2つの世界が消滅することになるわね」

「ちょっと何? それ。そんなヤバい事に僕はどう対処すればいいの?」

「『制約』と言えば、あなたにも掛かってるのよ?静流」

「僕に『制約』が?」

「私に考えがある。ちょっとズルをして一時的に力を開放させるの。それには『協力者』が必要だわ」

「『協力者』?」

「人選は私に任せて欲しい。決まったら報告するわ」

「その使い魔の子とパスをつないでおいたから、通信状況が良ければ助力出来るわ」

「わかったよ。でも、ただ待っているだけでいいのかな?」

「その時は必ず来るわ。それまで精進することね」
 ザザザッ モモの姿がブレだし、知らないオバさんと重なっている。

「静流、あなたが薫子を止めるのよ(フッ)」
 周囲の思い空気が一瞬で吹き飛んだ。

「はい、いらっしゃい。何を占うかね?」 
 占い師のオバさんは日本語で話しかけて来た。

「日本語、出来るんですか?」

「もちろん、あたしゃ日本人だからね」

「じゃあ、健康運とかでお願いします」
 静流は当たり障りのないことを占ってもらった。

「フムフム、ん?こ、これは」

「何です?何が見えたんです?」
 静流は目の前の水晶を覗き込むが、何も映らない。

「『女難の相』が出ておるな」

「心当たりは、少なからずあります……ね」


国営公園内 占いの館 喫茶スペース―― 午前

 占いオバさんと他愛ない話をした後、喫茶スペースに行く。
「あ、静流様、結構かかりましたね?」

「う、うん、ちょっとね」

「何か不吉な相が出たんですか?」

「ていうか、今はシズムでしょ?」

「イケナイ、てへ(ペロ)」

「ヨーコの方はどうだった?占い」

「聞かないでください、グスッ」

「え? そんなに悪かったの?」

「まあ、占いなんて、気休めみたいなものですよ。……多分」

「そうだね。それで、この後の予定って?」

「えーっと、この後はあっちにある展望台レストランでお昼にして、午後から『英雄博物館』に行きます」


国営公園内 展望レストラン―― 正午

 展望台をエレベーターで30階に上がり、展望レストランに向かう。
 せっかくなので窓際の席へ案内してもらう。

「結構高い……ね」

「展望が付くくらいですから、高くないと」

「実はぼ、私、高いとこ、苦手なんだよね……」
 メニューでオムライスセット&アイスコーヒーをオーダーした。
 最初にサラダ、コーンスープが到着。すぐにオムライスも到着した。
 早速オムライスにとりかかる。卵の火の通り加減が絶妙である。

「うん、美味いよ。ヨーコ」

「シズムは家庭料理がお好みで?」

「そうだね。やっぱり食べ慣れたものがいいよね」
(私にも出来るかしら?オムライス位なら……)

「でもさぁ、オムライスって簡単そうで結構ムズいんだよ?」

「え?そうなんですか?」

「ぼ、私ね、たまに夜ご飯作る時があってね、そういうときって、美千瑠が大体オムライスをリクエストするんで、一応出来るんだよ」

「妹さんが羨ましいです。私も……食べてみたいな」

「機会があったらね」
 シズムは最後に来たアイスコーヒーを飲んでいる。

(静流様とあと何日いっしょにいられるんだろ。ああ、時間よ止まれ)

 そう簡単に止まっては困る。

「ふぅ」

「ねえ、ヨーコ、『英雄博物館』ってあの高い所にあるやつ?」

「そうですね。あそこにはロープウェーで上がります」

「う、ロープウェー?」

「大丈夫ですよ。私が付いてますから」
(こ、これは噂に聞く「吊り橋効果」が期待できたりして)ニヤニヤ

「やけに嬉しそうだね? そんなに楽しみだったの?」

「い、いえ。何でもありませんよぉ」
 ヨーコは実にわかりやすい。
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