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第7章 木枯らしに抱かれて

エピソード41-1

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黒魔術同好会部室―― ある日の放課後

 この日静流は、白黒ミサから呼び出しが掛かっていた。
 いつものように真琴と、ご指名があったシズムを連れ黒魔の部室に行く。

「こんにちは、白黒ミサ先輩」
「いらっしゃませ、静流様」ザッ

 入るなり、部員全員がゴールを決めた時のビスマルクのように、片膝を突いた。
 白黒ミサはうやうやしく頭を下げた。

「もう、そうゆうやつ止めません?」
「とんでもない! 静流様にはいつもお世話になっておりますゆえ」

 挨拶が終わると、部員たちは静流に一礼し、先ほどまでやっていたと思われる作業に戻って行った。

「あ、すいません、先に用事済ませますね。オーイ、二人共、ちょっとイイかなぁ?」

 静流は部員の中から、中学の後輩である、荒木・姫野コンビを探し出し、声を掛けた。

「あ! せんぱぁい、私たちのアレ、見てくれましたぁ?」
「結構気合、入ってましたでしょう?」

 後輩ズが言っているアレとは、二人がサラ・リーマンと共同制作した薄い本の『無免ライダー8823ハヤブサ VS サムライレンジャー』の事だ。
 静流が唯一と言ってイイ程に、夢中になった『薄い本』である。

「見た見た! スゴくよく出来てたよ! キミたちがサラと組んでアレを作ったんでしょ?」パァ

 静流は満面のニパを浮かべ、二人の手を取りブンブンと上下に振った。

「はふぅ。素直にうれしいですぅ」
「むふぅ。サラ・リーマンと手を組んだ甲斐があったね、ノノ」

 後輩ズは、静流に褒めてもらいホクホク顔であった。

「あと、随分待たせちゃったけど、はい、約束のこれ」

 静流は二人の前に、ポケットから何かを取り出し、二人の前に出した。

「うわぁ、綺麗! 私たちの勾玉ですね! 嬉しいですぅ!」

 二人の髪の色と同じ、荒木メメにはライムグリーンの、姫野ノノには琥珀色の勾玉であった。

「結構便利だよ。コレがあれば、同時通訳でサラと念話も出来るし」
「マジですか? 助かりますぅ」
「大事にしますね。せんぱぁい♡」

 勾玉をもらった二人は、ハイタッチをしてクルクル回っている。
 周りの部員たちの垂涎の眼差しを浴びながら。

「真琴せんぱぁい、コレで追い付きましたからね? アドバンテージはチャラですよー?」
「フン、何言ってるんだか?」
「せんぱぁい、時代は年下ですよ?」

 後輩ズは、ドヤ顔で真琴に勾玉を見せびらかしながら言った。

「これから大変ですねぇ? 下級生が入って来たら」
「うう。確かに、先が思いやられるわね……」

 用事を済ませた静流は、二人のミサに向き直った。

「それで先輩方、ご希望のシズムを連れて来ましたけど、何かあるんですか?」
「ココでは何ですので、準備室にどうぞ」

 白黒ミサは、静流たちを奥の準備室に通した。

「モノクロ先輩、何かなぁ? 用事って」
「よく来てくれたね、シズムン」

 シズムからそう呼ばれた白黒ミサ。 
 二人は静流の前で、真剣な顔になった。

「静流様、折り入ってお願いがあるのですが……」
「何ですか改まって。さては、また何か企んでいますね?」
「企んでいない、と言えば、嘘になりますね」
「ほらね。一応聞きますけど、内容次第では承知しませんからね?」

 静流は腕を組み、二人が語り出すのを待った。


「「静流様……シズムンを私たちに下さい!」」
「ほよよ?」


 二人は片膝を突き、シズムに『ジュテーム』のポーズをやっている。
 シズムはとっさの対応が出来ず、理解不能を示している。

「は? いきなり何ですか? 無理言わないで下さいよ。 大体シズムは物じゃありません!」
(実は、物だったりして)

 唐突過ぎる展開に、静流はついていけなかった。

「私たちの進路に関わる事なのです! どうか寛大なご決断を!」
「進路? 大学にでも進学するんですか? 一芸とか?」
「いいえ。一応、芸能事務所に入る予定です」
「何とか、オーディションの最終選考に残りました」
「スゴいじゃないですか! おめでとうございます!」

 静流は、予想していた内容とは違い、ハッピーな結果に喜んだ。

「うわぁ、先輩たちって、真面目にアイドル目指してたんですね? 見直しました!」ニパァ

「ふぁうぅ、眩しい」

 二人は静流のニパを浴び、足元が揺らいだ。

「くうっ、で、ですがまだ確定ではありません。それで、事務所が内定の条件を提示して来まして」
「む? その条件、とは?」

 眉間にしわを寄せ、顎に手をやる静流。

「シズムンを一緒に入れる事。それが条件です」


「「はいぃぃ!?」」 


 それを聞いた静流と真琴は驚愕した。

「何だって? シズムに芸能活動をさせるんですか? 何かの冗談でしょ?」
「いえ、いたって本気です。マジです。大マジです」

 焦った静流が聞き返すも、ミサたちは本気らしい。

「そ、それは難しんじゃない……かな? 大体シズムはド素人ですよ?」

 真琴は驚いて1オクターブ高い声でそう言った。

「大丈夫だよ真琴クン、 慣れれば大したことないさ」

 一同はシズムを見た。

「ほえ? 何ですとぉ?」

 当のシズムは、首をかしげ、理解不能になっている。

「実は、書類選考時に入れたスナップに、手違いでシズムンと撮った写真が紛れ込んでいまして……」
「まさか、わざと入れた……って事はありませんよね?」

 静流は、じとぉーっと言う目で黒ミサを見た。

「め、滅相もありません! なぁ、白」
「ええ。黒の言う通りです! 濡れ衣です! 無実です! 冤罪です!」
「あーはいはい、疑った僕が悪うございました!」
「わかって頂けましたか……よかった」

 ノリが演劇っぽくなって来たので、面倒なので折れる静流。 

「ふう。シズムはただでさえ目立つんです。最近じゃあ追っかけもいる位ですから」

 学園での『女神像除幕式』の動画や、その後に学園の映研が制作したショ-トムービー等が、某動画サイトで物凄い再生数を叩き出し、結構な広告料が生徒会や学園に振り込まれている状況である。
 その噂の渦中のシズムが、この学校に通っているらしいという未確認情報が流れ、学校の周りが何やら騒がしくなっており、静流同様『都市伝説化』している。
 沖田の【結界】が無ければ、今頃は大変な事になっていたであろう。

「私たち2人と、プラスワン的なものを向こうは望んでいます」
「ん? って事は、別に3人でユニットを組んだり、歌とかは無いんですね?」
「ええ。まあ、私たちは所詮、ダシですよダシ。本命はシズムンでしょうね」

 黒ミサは毒づいた。 

「そんなに気に入られてるんですか? シズムが?」
「そりゃもう大騒ぎで。『千年に一人の逸材』とか言ってましたよ」
「うわぁ。なんかヤバい雰囲気になって来たな。それで、生徒会は何て?」
「静流様次第、と言う事でしたね」
「丸投げかよ! 生徒会室に行きます、付いて来て下さい!」
「は、御意」 
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