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第9章 冬の……アナタ、どなた?

エピソード51-38

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インベントリ内 プレイルーム――

「団体様入りまぁーす!」

 部員の声が響き、レヴィたちが各々の部屋に向かう。

「後程反省会をやりますので、報告はその時に」

「「「「了解!」」」」

 ルームAに入ったのは、アマンダと仁奈だった。

「こんちわぁ~」
「いらっしゃい。オーダーシートをこちらに」

 二人のモブ子は、言われた通りオーダーシートを渡した。

「ふむふむ。先ずはニーナ、キミだ!」
「うっ、呼び捨てにされる感覚……新鮮だな」
「なろ・床と……ASMR?」

 静流はオーダーシートを読みながら、わからないワードに首を傾げた。

「AMSRとは、『音』でイカせるって事♪」
「ふぅん。オッケー理解した!」

 静流はニーナに親指を立てた。 

「それでは始めます。ニーナ、ココに座って」
「はーい」ちょこん

 静流はニーナの後ろにふわっと周り、ニーナの肩上に腕を通すと、アゴ下辺りで優しく手を交差させた。
 そして静流は、耳元でささやき、飴玉を口に含んだ。

「じゃあ、行くよ。【ボリボリボリ……ゴクン】」
「あふぅ……たまんない」

 ニーナの耳元で、静流はわざと音が出る様に飴玉を噛み砕いた。

「これで、良かったの?」
「次、コレ、お願ぁい」
「コレ? わかったよ……」

 静流は次に床ドンの体制になり、ニーナから受け取ったグミを頬張った。

「行くよ【クチャクチュクチャクチュ……】」
「はぁぁぁん♡♡」

 耳元で静流の咀嚼音を聞き、興奮度が臨界点に達したニーナ。 

「あぁ、イイ! 脳天に響くぅ~♡♡」

 ニーナはベッドでのけ反り、昇天した。

「はい、お疲れ様。録音もオッケーみたいだよ」
「ああ……気持ちよかったぁ」

 ニーナは心地よい余韻に浸りながら、ベッドからゆっくり起きた。
 次に静流は、もう一人のモブ子のオーダーシートを見た。

「次にミランダ、キミのオーダーを確認しようか?」
「え、ええ。お願い」

 アマンダはいつもと違い、歯切れの悪い返事だった。

「何々? 『鳴門』?『帆掛け茶臼』?『抱き地蔵』? う~ん、わかんないよぉ」
「フィニッシュは、『松葉崩し』でお願いします!」ハァハァ

 ミランダは、興奮気味にそう言った。

「ゴメン、さっぱりわかんない。宇宙人のコミュニケーションの取り方?」
「大丈夫。私が教えてあげますから」ハァハァ

 ミランダが希望したのは、高校生の静流にはわからなくて当然の、いにしえの性交体位『江戸四十八手』であった。
 本当に検閲をパスしたのか、いささか疑問が残る内容である。

「『四十八手』? 何か聞いた事があるぞ? あれはアマンダさんが……」ブツブツ

 静流が零した『アマンダ』というキーワードに、二人は確信した。

((本物の静流クンだぁ~!))

「で、では簡単に説明しますんで、体を貸して下さい」
「う、うん。一応言っておくけど、本当にエッチなのはダメだからね?」
「わかってるわ。検閲をパスしたんだから、イイって事でしょう?」

 大まかな流れをミランダからレクチャーを受けた静流。

「成程。組体操みたいなもんか。オッケー、大体頭に入った」

 静流が本物と確信するや、ミランダは積極的になった。

「ニーナ、私にもアレ、頂戴」
「え? イイけど?」
「静流クン、トッピングでASMRマシマシでお願ぁい」
「かしこまりぃ♪」
 
 スタートは『鳴門』と言い、静流がベッドに座ると、ミランダがその上に座り、腰を回す変則的な『あすなろ抱き』だった。

「じゃあコレ、お願ぁい」

 腰を回しながら、ミランダは飴玉を静流に渡した。

「了解。【ボリボリボリ……ゴクン】」
「はぁぁぁ……スゴぉい。ジンジンきちゃう♡」

 次の体位は『帆掛け茶臼』と言い、静流はそのままの体制をキープし、ミランダがくるりと回転して静流と対面となり、足を静流の肩にかけた。

「何か、プロレスの技にありそうだね?」
「これだと、『獅子舞』に近くなるわね。ま、どうでもイイわ」

 静流はミランダとの絡みを、安易なスキンシップとして楽しんでいた。
 本来、全裸で行う事だとは、微塵も理解していない。

「次は私を抱っこしたまま、イスに座るのよ?」

 静流は言われた通りに椅子に腰かけ、『抱き地蔵』の体位に移った。
 
「じゃあ次、コレでお願い」

 静流はミランダからチョコレートを受け取り、口に含み、耳元でささやいた。

「じゃあ始めるよ。【カリッ、コリコリ……クチュ、クチャ……ゴクン】」
「ああっ、ニーナが言ってた『脳天に響く』って、この事なのね~」

 いよいよクライマックスとなり、ミランダがベッドに寝そべった。

「さぁ、フィニッシュよ! 私の大好きな体位、『松葉崩し』よ。コッチにいらっしゃい♡」

 ミランダに手招きされ、静流はミランダに跨り、ミランダの右足を持ったまま自分の肩に回した。 

「ええと、こうだったよね?」
「そうそう。上手よ。じゃあ、あの言葉、お願い♡」

 ミランダはトロンとした顔で『神ボイス』をリクエストした。

【ミランダの蜜壺原子炉、グチュグチュのヌチュヌチュのニュルニュルで、ボクの燃料棒が臨界点に達しちゃうよぉ~】


「あっふぅぅぅん♡♡」


 昇天したミランダはのけ反ったまま、暫くフリーズした。
 拘束が溶けたミランダは、ベッドから起き上がった。

「以上で終わりだけど、楽しんでもらえたかな?」

「「ありかとう! とっても良かったよ!」」
 
 入って来た時とは明らかに違って、晴れやかな表情の二人だった。
 出口用ドアに向かう二人の話し声がかすかに聞こえた。

(少佐殿、ズルいですぅ。私もアレ、やってもらいたかったぁ)
(一杯奢るわ。アナタのお陰で120%満喫出来たから……)

 気になるワードが耳に入り、眉間にしわを寄せた静流。

「ん? 今、『少佐殿』って言った?」
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