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第9章 冬の……アナタ、どなた?

エピソード56-19

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マンドレイクの間――

この後行われる忘年会の、最終確認を行っている睦美たち。

「ええと、 静流キュンを含む男性陣は、 乾杯を済ませたあと……」

 宴会の件で静流と密約を交わした睦美が、宴会の段取りを確認していた。

「うぇ? 静流クンたちも一緒にゲームとかするんじゃないんですかぁ?」
「ええ。 今回は趣向を変え、 男女別に忘年会を楽しむ事とします」
 
 睦美は余裕のある笑みを浮かべ、平然とそう言った。
 まだ納得していないリリィとルリに、アマンダが補足した。

「男女比が9:1で女の方が多いのよ。 それだと、どこかで気を使っちゃうでしょ?」
「ふぅん……そんなもんですかねぇ?」

 リリィはそう言って口をとんがらせた。 

「それで? 静流様を含む男性陣はドコで忘年会を? とってもとっても気になりますぅ……」
 
 ルリは一番気になる事を睦美に聞いた。

「そちらについては、 丁度おあつらえ向きの席がありましたので、 そちらに参加してもらいます」
「何ですか? その含みのある言い方……ますます気になりますぅ」

 尚も食い下がるルリに、アマンダがフォローを入れた。

「それなら安心して。 別口で接待があるからそっちに引き取ってもらうから」
「接待? 何ですかそれ? ぬぬぬ……安心できません!」

 ルリはさらにアマンダを追求した。

「各基地の司令クラスが今夜、 ココに集まって忘年会をやるの」
「司令クラスって……佐官、いや将官レベルの上級将校たち、 って事ですよね? ううむ……」

 リリィはそれを聞いて、顎に手をやりながら小さく唸った。

「その上級将校たちが参加するってワケだから、 相当豪華な宴になりそうね?」
「それなら問題ないか……ってなるワケないでしょ!? だってその中には……」

 何故か焦り始めたリリィに、アマンダは感心した。

「流石リリィ、 優れた洞察力ね。 一つ問題があるとすれば……」
「……三船八郎司令、 ですね?」
「そう。 そこが問題なのよ……」
 
 アマンダは溜息をついた。

「あのエロジジィ、 何かしでかすとは思ってたケド、 まさかね……」  
「何をやらかすつもりなんです?」
「噂だと『アノ部隊』を招集するらしいわ……」

 アマンダの言い回しに、リリィが反応し、眉をひそめた。

「それって、 まさか……」
「そう。 軍が誇る接待のエキスパート『キューティー・デビルズ』よ」

 部隊名を聞いて、ルリにも思い当たる事があったようだ。

「あの部隊ですか……前に団体で性病検査に来ましたね……」
「そんな連中が、 いたいけな静流クンの相手を!? ヤバいんじゃないですか?」

 リリィが突然焦りだした。

「一応手は打っておいたから、 大丈夫とは思うけど……多分?」

 アマンダの歯切れの悪い言い方は、説得力がなかった。

「まぁ、 高級将校を前にしたら、 少なくとも高校生二人にちょっかいは出せなでしょう?」

 睦美は少し引きつりながらそう言った。

「確かに。 そうゆう奴らだけに、 未成年に手を出すようなリスキーな行為は避けるでしょうね」

 アマンダの意見に、その件についてはリリィは一応納得したようだ。
 しかしルリは、まだ言いたい事があった。

「でもでも、 忘年会に静流様が一緒じゃなかったら、興奮も半減しちゃいますぅ……」
「それについては大丈夫です。 その為に静流キュンに頑張ってもらいましたから」

 ルリの問いに、睦美は自信満々で答えた。

「期待してイイのね? 睦美さん?」
「ええ。 きっと皆さんのご希望に沿ったものになると思います」



              ◆ ◆ ◆ ◆



 ゼフィランサスの間――

「ふぅ……ただいまぁ」

 露天風呂から帰って来た静流。
 部屋には薫をはじめ、全員が揃っていた。

「お! 帰って来たか」
「おいおい静流! 顔真っ赤だぞ? のぼせたのか?」

 薫と達也に声をかけられた静流。

「う、うん……ちょっと長湯しちゃったかな?」
「それはいけません! もっと近くで顔を見せて下さいっ」

 ジルは少し嬉しそうに静流の顔を覗き込んだ。

「フムフム……湯あたりはしていないようですね……ぬふぅ」
「ですから、 ホントにのぼせただけですって……」

 ジルに至近距離で顔を舐め回すように視姦され、静流はゆっくりとジルと距離を取った。

「もうちょっとで宴会だぞ? 大丈夫かよ?」
「大丈夫。 ちょっと横になりたいかな……」

 達也に心配されるが、静流はそう言ってベッドに寝転んだ。
 そんな静流を見て、薫が声をかけた。

「ひょっとしてお前、魔力使い過ぎた?」
「え? 何でわかるんです?」

 薫の指摘に、図星だった静流は驚いて薫を見た。

「大体わかるぜ。 お前今、 女の事ばっか考えてるだろう?」
「えっ!? 静流が? まさかぁ……」

 薫の指摘に、達也は驚嘆の声を上げた。

「さっき、 露天風呂で見ちゃったんだ……」
「な、ナニを見ちゃったのかなぁ? 静流クン?」

 静流のぼやきに、達也は食いついた。

「メルクの……アソコ」
「はぁぁぁ!?」

 そう言った静流は、頭に浮かんだイメージを消そうと、首を左右に振った。
 それを聞いた薫は、大きく頷いた。

「無理もない。 アイツの身体には微量だが【幻惑】の魔法がかけられてるな……」
「アニキ、 そんなもん何でメルクにかかってるんだ?」
「それはな、 あの身体が『それ目的』で造られているからだ」

 薫の指摘に、静流が反応した。

「確かに、メルク自身が言ってました。 自分はパイロットの性欲処理係だって……」
「魔力を消耗してる上に、 アイツのアレを見ちまったんだ。 おかしくならない方がおかしいぜ……」

 静流は不安げに薫に聞いた。

「薫さん、 この『状態異常』にも似た変な気分、 どうすれはイイんです?」
「なぁに簡単な事だ。 『欲望』に素直になればイイ」

 そう言って薫は、悪戯っぽく笑った。
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