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33【アムル目線1⠀】
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「どういう事よ!?」
手紙を読み、呆然とした。
「アムルお嬢様、どうされました?お顔の色が優れません」
「・・・何でもないわ。もう寝るわ、出ていって」
「かしこまりました」
急に私が声荒げたので不思議そうな面持ちになった召使いを全てを追い出し、高鳴る鼓動に何度も深呼吸し、冷めたお茶を一気に飲みこんだ。
机に置かれた、ベルツ侯爵家の封蝋が押された封筒が目に入り、ゾッとした。
お父様と私の連名で届いた手紙だった為、私が貰い開けた。
周りから、婚約の申し込み、結婚の申し出、だとはやされ、私もそう思っていた。
先週のあの忌まわしい事があり少し不安だった。
あの後、私は店の前で置き去りにされた上に、ルミナに手を出すな、と釘を刺された。
だが、私もルミナの顔など見たくない。あの時の私はルミナに負けた。
拾いたくもない踏まれた菓子箱を拾わされ、誰一人として私を助けるわけでもなく、店員までもが侮蔑の表情で私達を見ていた。
あんな店二度と行かないわ!
だけどこの手紙をくれるということは、あの時は感情が昂っていただけで後悔し、謝罪と婚約の申し込みが書いてあるのだろう、と思った。
それが、まさかこんな内容だとは思わなかった。
内容は、ベルツ侯爵家とプリライ伯爵家との絶縁宣言。
それも、当主自らの直筆サインと家紋の押印入り。
正式な書類だ。
しかもその理由が、私が許されない虚偽の情報を流したからだと言う。
これでは、全て私のせいだ。
冗談じゃない。
全部、ルミナとあの男のせいだわ!
恐らくあれが、パトロンなのだ。年寄りかと思ったが、恋人だと上手く話を合わせてくれる、上級貴族の令息を捕まえていたんだ。
まんまと嵌ってしまったわ。
だがそれを説明した所で、今更この絶縁宣言はなくならない。
ベルツ侯爵様に最近やっと認められ、仕事を貰えたとお父様が喜んでいた。
それが、あの女のせいで、全て崩れ落ちた。
一気に血の気が引き、震えが止まらない。
いいえ、よくよく考えてみれば、別にベルツ侯爵家だけが全てではない。
ある意味あの程度で絶縁宣言をしてくる度量の狭さを知れて喜んでくださるわ。
そうよ。そうだわ。
それに、心配しなくてもお父様がきっと解決して下さるわ。
さあ、もう寝よう。明日はルミナの前でクリスと仲良く昼食を食べてやるわ。
ふふっ。楽しみだわ。
私は、いい気分で寝室に向かった。
手紙を読み、呆然とした。
「アムルお嬢様、どうされました?お顔の色が優れません」
「・・・何でもないわ。もう寝るわ、出ていって」
「かしこまりました」
急に私が声荒げたので不思議そうな面持ちになった召使いを全てを追い出し、高鳴る鼓動に何度も深呼吸し、冷めたお茶を一気に飲みこんだ。
机に置かれた、ベルツ侯爵家の封蝋が押された封筒が目に入り、ゾッとした。
お父様と私の連名で届いた手紙だった為、私が貰い開けた。
周りから、婚約の申し込み、結婚の申し出、だとはやされ、私もそう思っていた。
先週のあの忌まわしい事があり少し不安だった。
あの後、私は店の前で置き去りにされた上に、ルミナに手を出すな、と釘を刺された。
だが、私もルミナの顔など見たくない。あの時の私はルミナに負けた。
拾いたくもない踏まれた菓子箱を拾わされ、誰一人として私を助けるわけでもなく、店員までもが侮蔑の表情で私達を見ていた。
あんな店二度と行かないわ!
だけどこの手紙をくれるということは、あの時は感情が昂っていただけで後悔し、謝罪と婚約の申し込みが書いてあるのだろう、と思った。
それが、まさかこんな内容だとは思わなかった。
内容は、ベルツ侯爵家とプリライ伯爵家との絶縁宣言。
それも、当主自らの直筆サインと家紋の押印入り。
正式な書類だ。
しかもその理由が、私が許されない虚偽の情報を流したからだと言う。
これでは、全て私のせいだ。
冗談じゃない。
全部、ルミナとあの男のせいだわ!
恐らくあれが、パトロンなのだ。年寄りかと思ったが、恋人だと上手く話を合わせてくれる、上級貴族の令息を捕まえていたんだ。
まんまと嵌ってしまったわ。
だがそれを説明した所で、今更この絶縁宣言はなくならない。
ベルツ侯爵様に最近やっと認められ、仕事を貰えたとお父様が喜んでいた。
それが、あの女のせいで、全て崩れ落ちた。
一気に血の気が引き、震えが止まらない。
いいえ、よくよく考えてみれば、別にベルツ侯爵家だけが全てではない。
ある意味あの程度で絶縁宣言をしてくる度量の狭さを知れて喜んでくださるわ。
そうよ。そうだわ。
それに、心配しなくてもお父様がきっと解決して下さるわ。
さあ、もう寝よう。明日はルミナの前でクリスと仲良く昼食を食べてやるわ。
ふふっ。楽しみだわ。
私は、いい気分で寝室に向かった。
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