婚約破棄された後は、何故かもう1人の幼なじみに恋人の手ほどきをされてます【R18】[完]

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「だから、アトラス自分で食べれるから、渡してよ」
「ダメだよ。ルミナは切るのが遅いから私が切ってあげるよ。それにいい大きさに切らないと、口に入らないよ」
「いいよ!たかがケーキなんだから。ゆっくり切って、ゆっくり食べるから。ちょっとフォーク返してよ!」
「私がしてあげるから。はい、あーん」
「だから、自分で食べれるってば。ちょっと、クリス、ナッジャも何か言ってよ!」
「何か、言いたいことがあるなら、言ってみて」
「ないですよ。ほら、ルミナ、食べさせて貰いなよ」
「そうだよ。恋人同士なら、普通だな」
「3対1で、私の方が正しいね。ほら、口開けて」
二人の答えに満面の笑みを見せた。
「どういう理屈よ!」
今日は、4人で喫茶店に来ている。いわゆるダブルデートだ。
まだ、クリスとナッジャはお付き合いはしていないが、学園で見る限りいい雰囲気の時が出てきた。
だから、アトラスにお願いして、皆で出かけたのだが、勿論普通のデートではない。
全てに於て貸切だ。
芝居を見に行ったが、建物全部朝から晩まで貸切で、お昼も高級店を貸切、そうしてランレイからお奨めしてもらった喫茶店も、貸切。
もう、意味がわかんない。
お昼もほぼアトラスが切り分けてくれてうんざりしていたのに、ここまで来てこの始末だ。
流石に、疲れるよ。
「ほら、渡してよ」
「ダメだよ。ほら口開けて」
「お昼の時にしたでしょ。もういいよ。自分で食べる」
「だからね、落としたら大変だよ。ルミナはただ口を開けてくれたらいいから。全部私がしてあげるからね」
「自分で出来るから大丈夫。それに恥ずかしいよ」
「私達隣の席行くから大丈夫。ね、ナッジャ」
「お、おお」
2人が慌てて立ち上がった。
「アトラス、睨まないの!ねえ、2人共一緒に食べようよ」
「いや、隣の方が落ち着くし、広いから、そっち行くわ。ね,ナッジャ」
「お、おお」
そう言うと、2人は急いで隣の席に移った。
「はい、あーん」
にこやかに笑いながら、フォークにほんの少しだけケーキを私に見せた。
「その困った顔も可愛いよ、ルミナ」
はあ、と溜息しか出ないし、何も言ってもきかないな、と諦めもあるがそれはそれで言いなりになるようで、ちょっと悔しい。
「ねえ、アトラス」
「何?」
とりあえず、出されたケーキを口に入れ食べた。
「耳貸して」
「何?」
フォークを置き、耳を私に向けてくれた。
「早く食べ終わって、逢い引き小屋に行こうよ。アトラスと2人きりになりたいな」
「っ!!」
耳が真っ赤になった。
「いや?まだ見せてない下着着てきたのになぁ」
「・・・ルミナは最近大胆だよ」
「だから、いやなの?」
すねたような顔したら、急いで首を振った。
「そんなことあるわけない」
「じゃあ急いで食べないとね。ほらフォーク渡して。じゃないと、いーかない」
ふい、と顔を背けると急いで私の手にフォークを渡してきた。
「それはだめだよ、はい」
「宜しい。ほら、早く食べよう」
「分かった」
「うん。美味しい」
ケーキを大きく切って頬張る。
最近こうやってアトラスの手綱を引くこと覚えてしまった。
婚約してからは益々溺愛になったけど、私だって負けてないんだから。
「私も、アトラスを溺愛してるんだからね」
そっと耳打ちすると、耳まで真っ赤になるアトラスが可愛かった。

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