ウィッチ・ザ・ヘイト!〜俺だけ使える【敵視】魔法のせいで、両親に憎まれ村を追放されました。男で唯一の魔術師になったので最強を目指します〜

(有)八

文字の大きさ
17 / 44
一章 憎しみの魔女

17話 リーフィリア(2)

しおりを挟む
「よっこら……しょ」

 気絶したリーフィリアをユルナが背に抱える。流石にそのまま放置も可哀想なので、目を覚ますまで家に入れることにしたのだ。
 運び入れる途中、ユルナが不思議そうに首を傾げていた。

「まさか雨を利用するなんて。降るのが分かってたのか?」
「天気が分かるわけないじゃないですか。ですよ」

 ちょうどその時、カナタのの為に、家の裏手にこっそりと移動していたリオンが戻ってきた。

「上手くいった?」
「ええ、助かりました」

 何の事か分かっていないユルナに説明してあげよう。

「リーフィリアにバレないように、リオンには水魔法を使ってもらったんだ。空に向けて、ね」
「じゃあ、あの雨は人工的に?」

 ユルナの問いにカナタが頷く。

「風魔法の【竜巻トルネード】は雨天時にのみ使える魔法です。竜巻のが出来てしまえば、あとはタクトの魔法で水を増やしてもバレにくくなる、と思ったのです」

 俺は内心ホッとしていた。
 雨の降るタイミングもギリギリだったけど、また火の鳥ファイアーバードの時みたいに最大威力でやっていたら、リーフィリアは大怪我をしていたかもしれない。

 魔導具が威力を抑えてくれたから良かったけど……人に向けて魔法を使うのは、どうにも気が引ける。

「あとは、リーフィリアが俺の魔法に気付いて無ければいいんだけど……」

 気絶したリーフィリアが目を覚ましたのは、翌朝になってからだった。

* * *

「くッ……! 殺せ!」
「いやいや……たかが勝負の一回、負けたぐらいで大袈裟な……」

 なだめようとした途端、詰め寄られて胸ぐらを掴まれた。
 リーフィリアはその目に涙を浮かべ、頬を赤く染めながらも俺を力強く睨みつけた。

「ランクAが勝負をふっかけておいて、ランクEの新参冒険者に負けたなんて……これ以上ないはずかしめだ!! きっと私は後ろ指差され、嘲笑される人生を送ることになる……それならばいっそここで殺せ!!」

 なんだろう。この人からは何処となく、カナタとを感じる。

 ふと隣のカナタに視線を向けると、いつものジトっとした目をさらに細めている。
 無言のまま「失礼な」、と目で訴えているようだった。

「お、落ち着いてください! 私たち別にリーフィリアさんに勝ったなんて言いふらさないですし……タクトを離してください!」

 リオンの言葉でやっと俺の胸ぐらから手が離れた。
 リーフィリアは目を覚ましてからずっとこの調子だ。しかし、今度は急にしょげた顔をする。

「すまない……取り乱してしまった。しかし、格下相手に粋がって慢心し……さらに家まで失った私は、自分で自分が許せないのだ……」
「家失ったのは、お前のだらし無さのせいだから当然だけどな?」
「――くっ!!」

 ユルナはリーフィリアに白い目を向けて正論をぶつける。この二人はどうにも馬が合いそうにない。

「殺してくれぬのなら……いっそ自分でッ!」

 リーフィリアは置いてあったリオンの剣を手に取り、自分の首元へその切先を向けた。これには流石にユルナも慌てたの止めに入った。

 こんなところで自決されたら、本当のになってしまうじゃないか。勘弁してほしい。

 剣を取り上げて三人掛かりで床に抑えつけると、身動きが出来なくなった彼女は徐々に全身から力が抜けていった。
 ――すると、今度は突然泣き出した。

「……うぅ……じゃあ、私はいったいどうしたらいいのよぉお!! うわぁーん!!」

 先ほどまでのキツイ口調から一転して、少女のように泣きじゃくる。
 リオンが頭を撫でてやるとポツポツと語り始めた。

「ぐす……私が弱いって知ったら、きっとみんな離れていく……」
「そんなことないと思いますよ? リーフィリアさんは凄い成績ばかりじゃないですか」
「使える魔法がちょっと人より特殊だっただけ……気付いたら、どんどんランクは上がっていっちゃうし、周りはあれもこれもって任務を渡してくるし……」

 ああ、この人はずっと強がってるタイプだったのか。
 あの威圧的な態度と性格は、周りの期待に答えようと虚勢を張り続けていたのか。

「リーフィリアなら一人で大丈夫、とか言われてパーティは組んでくれないし。私だって一人じゃ怖い時もあるのに……」

 強いからこそ、周りから距離を置かれてしまう。そして強がってまた一人になる。
 孤独のループの中で、彼女はずっと一人で抱えていたのだ。

「私も、皆みたいに『普通の冒険者』になりたかった……ッ」

 両手で顔を塞ぎ、わんわんと泣き散らす彼女はとても弱々しく思えた。

「……はぁ、『深緑の魔女』様がなにみっともない姿晒してんだよ」

 壁にもたれ掛かって話を聞いていたユルナが、突然リーフィリアの胸元に掴みかかった。

「ちょっとユルナ!」
「リオンは黙ってな!」

 リーフィリアの顔を引き寄せて、鼻先を突き合わせる形でユルナは口を開いた。

「自分の気持ちを口に出さないお前を、誰が信用するんだ? 仲間ってのは信頼と信用で成り立ってんだ。個人の力の強さなんて、仲間に求めてねーんだよ」
「……」
「力が弱くたって……信頼する仲間と一緒なら、どんな敵でも困難でも乗り切ろうって思える。お前が昨日の勝負で負けたのは魔法の強さだけじゃない、仲間を助けようとするだ」

 ユルナはそう言い放つと、突き飛ばす様に手を離した。
 普段のリーフィリアなら言い返すところだろう。だけど彼女は何も言わずに、床に座り込んだまま俯いていた。

「――だから、本音をちゃんと伝えた相手にぐらい、甘えてもいいんじゃねーの?」
「――ッ!」

 ユルナの手が、リーフィリアに向けて差し出されていた。
 笑顔で手を伸ばすユルナに、リーフィリアは一瞬戸惑った表情を見せる。

「こんな私でも仲間ができるのか……?」
「ツンツンしてるより、今のお前のほうが親しみやすいと思うぞ」

 そっと差し出されたユルナの手をリーフィリアが掴むと、ぐんとひっぱり上げ立たせた。
 リーフィリアは涙を拭うと、その顔はとてもすっきりとした様子だった。
 そして、今まで言えなかったであろう言葉を口にした。

「私を、パーティに入れてくれないか……?」
「ごめん! それは無理だ!」

 誰しもが想定していた美談を、ユルナは一言で覆した。
 驚きのあまり他の三人は、口をぽかんと開けて固まっている。俺も例外ではない。

「今のところパーティメンバーは四人で足りてるし、リーフィリアは私たちのランクと離れすぎてるからな! でもその調子で声掛けてけば、きっと仲間は見つかるさ!」

 ぐっと親指を上に向けて、健闘を祈るポーズをする。

 突然の掌返しを食らって、リーフィリアはまた泣くか、怒るか……。

「――私をもてあそんだな」

 掴んでいたユルナの手を払い退けて、以前までの怖い顔つきへ変わる。どうやら怒るルートに入ったらしい。

「……この羞恥、絶対に許さないからなッ! カナタ、タクト! 貴様らも覚悟しておけ!」
「俺たちなんにも言ってないぞ!?」
「うるさいうるさい! 覚えていろよ!」

 身を翻し凄まじい速さで家を飛び出したリーフィリアを、止める人はいなかった。

「うんうん、元気になったみたいだな。これで家も守れたし、いわく付きも解決!」

 本当に解決したのか不安でしょうがない俺たちは、深くため息をつくのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

外れスキル【アイテム錬成】でSランクパーティを追放された俺、実は神の素材で最強装備を創り放題だったので、辺境で気ままな工房を開きます

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティで「外れスキル」と蔑まれ、雑用係としてこき使われていた錬金術師のアルト。ある日、リーダーの身勝手な失敗の責任を全て押し付けられ、無一文でパーティから追放されてしまう。 絶望の中、流れ着いた辺境の町で、彼は偶然にも伝説の素材【神の涙】を発見。これまで役立たずと言われたスキル【アイテム錬成】が、実は神の素材を扱える唯一無二のチート能力だと知る。 辺境で小さな工房を開いたアルトの元には、彼の作る規格外のアイテムを求めて、なぜか聖女や竜王(美少女の姿)まで訪れるようになり、賑やかで幸せな日々が始まる。 一方、アルトを失った元パーティは没落の一途を辿り、今更になって彼に復帰を懇願してくるが――。「もう、遅いんです」 これは、不遇だった青年が本当の居場所を見つける、ほのぼの工房ライフ&ときどき追放ざまぁファンタジー!

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

処理中です...