ウィッチ・ザ・ヘイト!〜俺だけ使える【敵視】魔法のせいで、両親に憎まれ村を追放されました。男で唯一の魔術師になったので最強を目指します〜

(有)八

文字の大きさ
22 / 44
一章 憎しみの魔女

22話 聖女

しおりを挟む
「仲間たちが貴様のいう敵視ヘイト魔法とやらでおかしくなっているのなら、それを消せばいいんじゃないか?」

 リーフィリアが言うには、俺の魔法効果は一種の催眠・幻覚魔法に似ているという。
 本当は敵意が無いのに『タクトは憎むべき存在だ』と洗脳している感じ、なるほど確かに洗脳っぽい。

「幻覚魔法に関しては防ぐ方法は色々ある。大体は、人間の五感に作用するものばかりだからな」
「魔法にかかっちゃったあとも、対処法はあるのか?」
「ある」

 リーフィリアは即答する。

「光魔法に【浄化ピュリフィケイション】というのがある。人に付いた魔法や、呪いとかも解除できると聞いた」
「じゃあ、光魔法を使える人を探せばもしかしたら……」
敵視ヘイト魔法にかかった人たちを、元に戻せるかもしれない」

 その言葉を聞いて、暗く沈んでいた心に光が差したようだった。
 しかしある疑問が浮かぶ。リーフィリアの言う光魔法というのを、俺は見たことがない。

「使える人は限られている。生まれながらにして光魔法の適性があり、慈悲深く神に仕える者。つまり聖女だ」
「聖女……たしかアークフィランにも大聖堂があったような?」
「まずはそこに行ってみるのがいいだろう。もし聖女がいなくても、光魔法を使える人の情報は聞けるだろうし」

 リーフィリアが立ち上がって服に着いた草を払うと、身支度を始めた。どうやら今から行くつもりらしい。

「でもどうやって街に? 俺が街に入ればすぐに囲まれそうだけど」
「そこはお前――変装しかないだろ」

 リーフィリアは冒険者が使う大型の鞄を漁り始める。
 身長差がどうとか、ぶつぶつ言って取り出したのはいくつかの服だった。
 俺の前に差し出すと真顔で言う。

「これを着ろ」
「え……でもこれ女物じゃ」
「着ろ」

 二言目は笑顔だったが断れない"圧"を感じ、受け取らざるを得なかった。

* * *

「なあ……やっぱりこれ変じゃないか? 逆に目立ってるんじゃ」
「そうか? 似合ってると思うぞ、

 リーフィリアから手渡された服は、全体が紺色のワンピースだった。
 灰色のカーディガンと合わせて、俺は女装して街を歩いている。顔を見られないようにつばが広い魔女帽子で隠しているが、さっきから通り過ぎる人の視線を集めている気がする。

 リーフィリアは悪戯な笑みを浮かべて俺を見ている。絶対面白がっている顔だ。
 文句を言いたいが、協力してもらっているので何も言えない。今は……我慢だ。

「ほら着いたぞ」
「ここが、大聖堂……」

 真っ白な外壁は細かな装飾が施され神秘さがあった。
 見上げると建物の中心には丸く大きなガラス窓があり、ステンドグラスになっていることがわかる。
 三角錐の屋根を持つ塔が二本、空に向けて高くそびえ立っている。

 なんだかひどく場違いな気がして背筋を正す。

「私が話すから、貴様は私の背に隠れていろ」
「わ、わかった」

 青銅で作られた扉を開くと、中には長椅子がいくつも置かれ、中央の通路には青い絨毯が敷かれていた。
 入り口とは反対側になる通路の奥、黒い服に身を包んだ人物がいる。
 その人は祈りを捧げているのか、かしずいてこうべを垂れたまま微動だにしない。

 あの人が、聖女なのか?

 ステンドグラスから差し込む色とりどりの光は、その人物へと降り注いでいた。
 まるで、天からの恩寵おんちょうを受けるかのような姿に神々しさを感じる。
 声をかけることすら忘れて見入っていると、その人は立ち上がり振り返る。

「あら? ようこそいらっしゃいました」
「貴女は聖女様か?」
「“聖女様”はよしてください。わたくしはこのアークフィラン大聖堂の修道士ユノウと申します。確かに街の方々からは聖女なんて呼ばれたりもしますが」

 ユノウさんはとてもゆっくりとした動作で挨拶の会釈えしゃくをする。
 頭の動きに合わせて銀色の髪がなびくと、ステンドグラスの光を吸収し、まるで虹色の髪に見える。

 リーフィリアも普段の粗暴な物言いはせず、言葉を選んで話しているようだ。
 
「私はリーフィリア。後ろのはタクコだ。聖女の貴女に折り入って頼みがある。光魔法を使うことはできるか?」
「はい? 光魔法は修得しておりますが、どういったご用件でしょうか」
「恐らく、街全体に幻覚魔法のようなものが振り撒かれた。それを浄化してほしい」

 突然そのような事を言われて不思議がられると考えていた俺たちに、ユノウさんは意外な返事をした。

「ああ、昨日のアレの事ですかね」
「知っているのか?」
「冒険者様方がモンスターを倒しに行ったと聞いておりました。そのあと少しして、なんというか魔力を感じました」

 敵視ヘイト魔法を感じ取れたということに驚いたが、ユノウさんは続けて話す。

「それと後ろの……タクコさん? あなたからも同じ魔力を感じていますよ」
「――ッ!?」

 思わずリーフィリアの背に隠れてしまったが、ユノウは小さく笑って昨日の事を語り出した。

 異様な魔力を感じ取ったユノウさんは、すぐに大聖堂全体へ光魔法の障壁を張ったらしい。
 時間が経ち外の様子を見ると、街にいる全ての人に何かが纏わりついていると気付いた。
 それは残り香のように今も街に漂い続けているという。

「――ここに居た私と何人かの人たち、十二人の修道女はその影響を受けてはいません。アレがどういった魔法なのか、私は調べていたのです」

 と、いうことはユノウさんは俺を敵視していないのか? 恐る恐るリーフィリアの横に並んでみる。
 特に怒り出すとかは無さそうだ。今度は思い切って帽子を取り顔を見せる。

「あら? 女の子かと思っていました」
「うっ……へ、変装の為に仕方なくです」

 なぜ変装を? と言いたげだったので俺は隠さず話す事にした。

「ユノウさんが感じた異様な魔力、原因は俺はなんです。俺は、魔法が使えます」
「……場所を変えましょうか。こちらへどうぞ」

 ユノウさんは左手にある通路へ歩いていく。話難いことだと俺の様子から察したのだろう。リーフィリアにも促され、俺たちはユノウさんの自室へと案内された。

 室内はかなり質素でベッドと机、小さな本棚とクローゼットしか置かれていない。本棚には黒い装丁の分厚い本がいくつも並んでいる、聖書だろうか。

 部屋の扉が閉まったのを確認して、俺は話の続きを始めた。

 憎しみの魔女から魔力を受け取り、魔法が使えるようになった事。
 その魔法は人から敵意を向けられるもの。
 そして、ゴーレムを倒してから皆の様子が変わってしまった事。

 ユノウさんは終始黙っていたがそれは、真剣に話を聞いてくれているからこその無言だった。

「事情は分かりました。しかし、憎しみの魔女が生きていた事とそのような魔法があるというのは、信じ難いですね」
「でも事実なんです! お願いします、皆に掛かった魔法を浄化出来ませんか?!」
「出来ない事も無いのですが……この街の人口は十万人弱います。それを全て取り除こうとすると私の魔力が足りません。全て浄化できるのに一年か……あるいはそれ以上時間を要します」

 人の魔力は有限。使い果たせば動けなくなり、魔力枯渇によって意識を失うことはよく理解している。
 魔力の量を増やすには食事や睡眠で徐々に回復させるか、ポーションなどの魔力補充を行う必要がある。

「ポーションを飲み続け、浄化するのは現実的ではありません。あれは一時的なものですからね」

 しかしそれでは遅すぎる。リオン達を浄化出来たとしても、この街に留まることが出来ない。
 それに、それだけの時間ユノウさんに無理をさせる事になる。

 リーフィリアも同じことを考えていたのか、俺の言葉を代弁する。

「他に手は無いのか?」
「魔力を増強させる魔導具などがありますが、店で手に入る物ではどれも付け焼き刃ですね。宝具級の物……それこそ憎しみの魔女が使ったとされる杖なら、何十倍にも魔力を高められると聞きましたが。本当にそんな物があるのかすら怪しいですし」
「杖……?」

 世界には伝説の宝具と呼ばれる魔導具が存在するらしい。

 竜を倒したとされる宝剣と竜が持っていた宝珠。
 一突きで山をも貫く宝槍。
 全ての攻撃、呪いすら防ぐ宝盾。
 そして、魔女が使っていた宝杖。

 どれもおとぎ話に出てくるような眉唾の物だ。
 しかし、憎しみの魔女は確かに存在しこの世界を作り変えた。
 魔女の杖と聞いて、俺は魔女と出会った時のことを思い出していた。

「あった……」
「ん? どうした?」

 婆さんが俺に向けて構えた杖。
 強い光を放ち、気づけば婆さんは姿を消していて、地面には杖が転がっていた。

「――確かにあった! 魔女の婆さんが持っていた杖! それがユノウさんの言う宝杖なんじゃないか?!」
「まさか――あれはおとぎ話の創作では」

 驚く二人に対して、俺は気持ちを固めていた。
 もし違ってもいい。また別の方法を探すだけだ。
今はただ目の前に垂れ下がる糸を掴んでみよう。

「俺、故郷に帰ってみるよ」

 そこに、魔女の宝杖があると信じて。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

外れスキル【アイテム錬成】でSランクパーティを追放された俺、実は神の素材で最強装備を創り放題だったので、辺境で気ままな工房を開きます

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティで「外れスキル」と蔑まれ、雑用係としてこき使われていた錬金術師のアルト。ある日、リーダーの身勝手な失敗の責任を全て押し付けられ、無一文でパーティから追放されてしまう。 絶望の中、流れ着いた辺境の町で、彼は偶然にも伝説の素材【神の涙】を発見。これまで役立たずと言われたスキル【アイテム錬成】が、実は神の素材を扱える唯一無二のチート能力だと知る。 辺境で小さな工房を開いたアルトの元には、彼の作る規格外のアイテムを求めて、なぜか聖女や竜王(美少女の姿)まで訪れるようになり、賑やかで幸せな日々が始まる。 一方、アルトを失った元パーティは没落の一途を辿り、今更になって彼に復帰を懇願してくるが――。「もう、遅いんです」 これは、不遇だった青年が本当の居場所を見つける、ほのぼの工房ライフ&ときどき追放ざまぁファンタジー!

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

処理中です...