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二章 魔法とは
42話 本当の仲間選手権(2)思いやり編
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料理対決はリオンが勝ち、リーフィリアはがっくりと肩を落としている。
味で言えばどちらも本当に美味しかったのだが、育ち盛りの俺には味より量。もっといえば、ガツガツ食えるほうがより良いのだ。すまん、リーフィリア。
「えー次は……『相手の気持ちになって考えよう、思いやり対決ーッ』どんどんぱふぱふ」
「思いやり……対決?」
そんな意気揚々と告げられても、タイトルから何をするのか、まったく想像がつかない。
「今回はユルナとリーフィリアで競ってもらいましょう」
「競うって言っても……一体何をどうやって」
「二人には今から『こんな時タクトならどうするか』を考えて行動してもらいます。相手の気持ちになって考え、相手が喜ぶように動いてください。思いやりとは『人の気持ちを考える』ことですよ」
カナタの説明を聞いても、いまいちピンとこない。カナタ以外の四人が、頭に疑問符を浮かべていると、チョイチョイとリオンに手招きをしている。
「リオン。そこに立ってぐっと目を瞑ってください」
「え? うん、分かった」
目を閉じたリオンの背後に回るカナタ。その手にはいつの間にかブリキのバケツが抱えられている。
バケツからはちゃぷちゃぷと水が跳ねる音がしていた。
この時点で少し嫌な予感がする。
「ねぇカナタ、これから何を――」
「そぉいっ!!」
予感は的中し、俺が「あっ」と止める間もなく、カナタはリオンの頭にバケツを被せたのだ。
「ひゃあああああっ?! ちょっ、カナタ?!」
一瞬にして頭から水浸しになったリオンは、ただただ驚いていた。
カナタの突飛もない行動に、皆が呆気に取られていると……。
「なんと! 仲間のリオンがびしょ濡れになってしまいました! さて、こんな時タクトならどうするでしょう?」
「なるほど、そういうことか……」
え? リーフィリアは今ので何か分かったの?
「つまり、『タクトならこうするだろう』を考えて、今のびしょ濡れのリオンを助けろということか」
ユルナも何か分かったようなことを言っているけど、こんなので勝敗が決まるのか? 思いやりってこういうのだったっけ?
「さあ、もう勝負は始まっていますよ? これは先に動くも良し、相手の出方を窺うのも良し。思いついた方から行動してください」
「ふぇ……ひ、ひどいよカナタぁ……ぐすん」
「ちなみに、早くしないとリオンが風邪をひきます」
自分で水を掛けておいてそれはないだろう……。
リオンは身を小さくして震えている。六月といえどいきなり水浸しは寒いだろうし、俺ならまずはタオルを……ん?
その時、気づいてしまった。
濡れて肌に張り付いた服が、彼女の女性的な部分をより強調している事に。
二つの膨らみは両腕に抱えられてさらに強調されているし、きゅっとくびれた腰のラインも……って、だめだだめだ! 俺は何を考えてんだ。
「――よし! 分かったぞ!!」
俺がそんなことを考えている時、ユルナが動いた。
半ベソをかくリオンに近寄ると、おもむろにリオンの服のボタンに手をかけ、て――え?
「な、なにするの! ちょっとッ! ユルナ?」
「いいからさっさと脱げ! このままじゃ風邪ひいちゃうだろ! こんな時は風呂に入れるのが一番だ!」
「ちょ、まっ……タクっタクトが見てるからッ!!」
「おおーっと、ここでユルナが濡れた服を剥ぎ取りにかかりました」
リオンの抵抗も虚しく、どんどんと身ぐるみを剥がされていく。曝け出された肌の面積が多くなってきたあたりで、俺は思わず顔を逸らした。
ドタバタと暴れる音とリオンの「あっ」とか「やっ」なんていう、短い悲鳴が聞こえてきて……なんだかソワソワとした気分になる。
「ん? お前最近また大きくなったか? それにこの下着、わりと透け……」
「や……やめてええええええええッ!!」
ゴッという鈍い音が響いた直後、ドサッという重量感のある音がする。
ああ……殴られたな。もう見なくても分かるぞ。
リオンのすすり泣く声が聞こえるが、きっと今振り返れば俺も殴られてしまうのだろう。
……しかし、俺も健全な男の子であるからして、俺の意思とは関係なく首は回れ右をしようとする。
だめだ、耐えろ俺。ひとときの眼福の為に命をかけるのか? いや、でもちょっとだけなら……。
死に際に放ったユルナの一言『透け……』、その短い言葉はとても魅惑的に聞こえた。
だ、だめだ……体が勝手に……。
ゆっくりと振り向き、うっすらと目を開ける。大丈夫、ちょっとだけ……一瞬だけ確認するだけだ。
期待に胸を膨らませて、命懸けで見た視線の先。それは俺の想像していた光景ではなくなっていた。
座り込んで泣くリオンは服を羽織っていたのだ。
隣にしゃがんで寄り添うリーフィリアが、自分の服を貸したのだろう。
「今タオルを持ってくる。待っていろ」
そう言って離れると、ほどなくして戻ってきたリーフィリアは、タオルと着替え、さらに湯気がのぼるティーカップを持っていた。
「隣の部屋でこれに着替えてこい。サイズは問題ないはずだ。あと、よく髪を拭いておけよ。着替えたら暖かい紅茶も飲んでおけ」
「あ、ありがとう……ぐすっ」
そうだ、彼女は言動こそ荒れているが、本当のところは大のお人好しだったんだ。
てきぱきとした対応の良さと優しさ、俺も彼女のお人好しに何度も救われたっけな。
ちょっとでもイケナイ事を考えていた自分が、すごく恥ずかしい。
「ふっ……さすがだよリーフィリア。俺ならそうする事をしっかり読み取ったんだな」
「む? 私は同じ女としてリオンの気持ちを考えただけだったが……そうか、タクトもか」
にこやかな笑顔を見せるリーフィリア。悪いがその笑顔に俺は苦笑いでしか返せない。
い……言えない。下心に負けて裸のリオンを見ようとしたなんて、口が裂けても言えねぇ……。
「――タクトもやはり男でしたか」
「はうっ?!」
ボソリと図星を言い当てられ、心臓が飛び出るかと思った。見るとカナタがジトーっとした目で俺を見つめている。
やばい。俺が想像……もとい妄想してしまっていた事がバレている。この心の声もお見通しだろう。なぁ、そうなんだろう?
「……ふっ」
くっ……やっぱりか……思春期男子の心の中を覗き見るなんて……しかし今は迂闊な事は言えない。
頼む! 余計なことは言わないでくれ!
俺の願いが通じたのか「やれやれ」と言って、俺に耳打ちをしてくる。
「……タクトがリオンの裸を妄想して欲情したことは黙っておきましょう。パーティ仲間に欲情するなんて、冒険者としてご法度ですからね」
「た、助かるよ……」
流石に俺の気持ちを思ってか、公にはしないでくれそうだ。
なんだ、なかなかカナタも『思いやり』があるじゃないか。
「――タダで、とは言ってませんよ。街で評判のお高いスイーツがあるらしいのです。それで手を打ちましょう」
ぐっ……! 前言撤回だ。弱みで強請りやがった。しかし俺の冒険者人生の為……ここは堪えるしかない。
黙って頷いた俺を見てカナタはとても嬉しそうだった。ちくしょう! 青少年の心を弄びやがって!
俺の元から上機嫌になって離れていったカナタは、リーフィリアの腕を取って上に掲げた。
「では、この勝負……リーフィリアの勝ちです!」
「こんなので良かったのか? 何か釈然としないが……まぁ、いいだろう」
『思いやり』勝負はリーフィリアに軍配が上がり、幕を下ろした。
残すところは、最終種目。『支える』のみとなった。
……というか、床で伸びているユルナは起こさなくていいのか? ピクリとも動かないぞ。
* * *
隣の部屋で着替えてきたリオンは、普段着慣れない服なのかもじもじとしながら戻ってきた。
「こ、これ……露出が多くて、なんだか恥ずかしい……」
胸元はかなり広く開いており、肩もがっつりでている。
セーターのようなロング丈の服が、ちょうどリオンの膝上あたりが裾になっていた。
ハーフパンツを穿いているのだろうが……見方によっては、その下を穿いてないようにも見える。
「ああ、普段はその上にローブを着るからな。それぐらい布が少ないほうがちょうどいい」
「じゃあローブも貸してくださいよお……!」
服装が変わるだけで急に『大人のお姉さん感』が出たリオンに、少しだけ見惚れてしまった。
味で言えばどちらも本当に美味しかったのだが、育ち盛りの俺には味より量。もっといえば、ガツガツ食えるほうがより良いのだ。すまん、リーフィリア。
「えー次は……『相手の気持ちになって考えよう、思いやり対決ーッ』どんどんぱふぱふ」
「思いやり……対決?」
そんな意気揚々と告げられても、タイトルから何をするのか、まったく想像がつかない。
「今回はユルナとリーフィリアで競ってもらいましょう」
「競うって言っても……一体何をどうやって」
「二人には今から『こんな時タクトならどうするか』を考えて行動してもらいます。相手の気持ちになって考え、相手が喜ぶように動いてください。思いやりとは『人の気持ちを考える』ことですよ」
カナタの説明を聞いても、いまいちピンとこない。カナタ以外の四人が、頭に疑問符を浮かべていると、チョイチョイとリオンに手招きをしている。
「リオン。そこに立ってぐっと目を瞑ってください」
「え? うん、分かった」
目を閉じたリオンの背後に回るカナタ。その手にはいつの間にかブリキのバケツが抱えられている。
バケツからはちゃぷちゃぷと水が跳ねる音がしていた。
この時点で少し嫌な予感がする。
「ねぇカナタ、これから何を――」
「そぉいっ!!」
予感は的中し、俺が「あっ」と止める間もなく、カナタはリオンの頭にバケツを被せたのだ。
「ひゃあああああっ?! ちょっ、カナタ?!」
一瞬にして頭から水浸しになったリオンは、ただただ驚いていた。
カナタの突飛もない行動に、皆が呆気に取られていると……。
「なんと! 仲間のリオンがびしょ濡れになってしまいました! さて、こんな時タクトならどうするでしょう?」
「なるほど、そういうことか……」
え? リーフィリアは今ので何か分かったの?
「つまり、『タクトならこうするだろう』を考えて、今のびしょ濡れのリオンを助けろということか」
ユルナも何か分かったようなことを言っているけど、こんなので勝敗が決まるのか? 思いやりってこういうのだったっけ?
「さあ、もう勝負は始まっていますよ? これは先に動くも良し、相手の出方を窺うのも良し。思いついた方から行動してください」
「ふぇ……ひ、ひどいよカナタぁ……ぐすん」
「ちなみに、早くしないとリオンが風邪をひきます」
自分で水を掛けておいてそれはないだろう……。
リオンは身を小さくして震えている。六月といえどいきなり水浸しは寒いだろうし、俺ならまずはタオルを……ん?
その時、気づいてしまった。
濡れて肌に張り付いた服が、彼女の女性的な部分をより強調している事に。
二つの膨らみは両腕に抱えられてさらに強調されているし、きゅっとくびれた腰のラインも……って、だめだだめだ! 俺は何を考えてんだ。
「――よし! 分かったぞ!!」
俺がそんなことを考えている時、ユルナが動いた。
半ベソをかくリオンに近寄ると、おもむろにリオンの服のボタンに手をかけ、て――え?
「な、なにするの! ちょっとッ! ユルナ?」
「いいからさっさと脱げ! このままじゃ風邪ひいちゃうだろ! こんな時は風呂に入れるのが一番だ!」
「ちょ、まっ……タクっタクトが見てるからッ!!」
「おおーっと、ここでユルナが濡れた服を剥ぎ取りにかかりました」
リオンの抵抗も虚しく、どんどんと身ぐるみを剥がされていく。曝け出された肌の面積が多くなってきたあたりで、俺は思わず顔を逸らした。
ドタバタと暴れる音とリオンの「あっ」とか「やっ」なんていう、短い悲鳴が聞こえてきて……なんだかソワソワとした気分になる。
「ん? お前最近また大きくなったか? それにこの下着、わりと透け……」
「や……やめてええええええええッ!!」
ゴッという鈍い音が響いた直後、ドサッという重量感のある音がする。
ああ……殴られたな。もう見なくても分かるぞ。
リオンのすすり泣く声が聞こえるが、きっと今振り返れば俺も殴られてしまうのだろう。
……しかし、俺も健全な男の子であるからして、俺の意思とは関係なく首は回れ右をしようとする。
だめだ、耐えろ俺。ひとときの眼福の為に命をかけるのか? いや、でもちょっとだけなら……。
死に際に放ったユルナの一言『透け……』、その短い言葉はとても魅惑的に聞こえた。
だ、だめだ……体が勝手に……。
ゆっくりと振り向き、うっすらと目を開ける。大丈夫、ちょっとだけ……一瞬だけ確認するだけだ。
期待に胸を膨らませて、命懸けで見た視線の先。それは俺の想像していた光景ではなくなっていた。
座り込んで泣くリオンは服を羽織っていたのだ。
隣にしゃがんで寄り添うリーフィリアが、自分の服を貸したのだろう。
「今タオルを持ってくる。待っていろ」
そう言って離れると、ほどなくして戻ってきたリーフィリアは、タオルと着替え、さらに湯気がのぼるティーカップを持っていた。
「隣の部屋でこれに着替えてこい。サイズは問題ないはずだ。あと、よく髪を拭いておけよ。着替えたら暖かい紅茶も飲んでおけ」
「あ、ありがとう……ぐすっ」
そうだ、彼女は言動こそ荒れているが、本当のところは大のお人好しだったんだ。
てきぱきとした対応の良さと優しさ、俺も彼女のお人好しに何度も救われたっけな。
ちょっとでもイケナイ事を考えていた自分が、すごく恥ずかしい。
「ふっ……さすがだよリーフィリア。俺ならそうする事をしっかり読み取ったんだな」
「む? 私は同じ女としてリオンの気持ちを考えただけだったが……そうか、タクトもか」
にこやかな笑顔を見せるリーフィリア。悪いがその笑顔に俺は苦笑いでしか返せない。
い……言えない。下心に負けて裸のリオンを見ようとしたなんて、口が裂けても言えねぇ……。
「――タクトもやはり男でしたか」
「はうっ?!」
ボソリと図星を言い当てられ、心臓が飛び出るかと思った。見るとカナタがジトーっとした目で俺を見つめている。
やばい。俺が想像……もとい妄想してしまっていた事がバレている。この心の声もお見通しだろう。なぁ、そうなんだろう?
「……ふっ」
くっ……やっぱりか……思春期男子の心の中を覗き見るなんて……しかし今は迂闊な事は言えない。
頼む! 余計なことは言わないでくれ!
俺の願いが通じたのか「やれやれ」と言って、俺に耳打ちをしてくる。
「……タクトがリオンの裸を妄想して欲情したことは黙っておきましょう。パーティ仲間に欲情するなんて、冒険者としてご法度ですからね」
「た、助かるよ……」
流石に俺の気持ちを思ってか、公にはしないでくれそうだ。
なんだ、なかなかカナタも『思いやり』があるじゃないか。
「――タダで、とは言ってませんよ。街で評判のお高いスイーツがあるらしいのです。それで手を打ちましょう」
ぐっ……! 前言撤回だ。弱みで強請りやがった。しかし俺の冒険者人生の為……ここは堪えるしかない。
黙って頷いた俺を見てカナタはとても嬉しそうだった。ちくしょう! 青少年の心を弄びやがって!
俺の元から上機嫌になって離れていったカナタは、リーフィリアの腕を取って上に掲げた。
「では、この勝負……リーフィリアの勝ちです!」
「こんなので良かったのか? 何か釈然としないが……まぁ、いいだろう」
『思いやり』勝負はリーフィリアに軍配が上がり、幕を下ろした。
残すところは、最終種目。『支える』のみとなった。
……というか、床で伸びているユルナは起こさなくていいのか? ピクリとも動かないぞ。
* * *
隣の部屋で着替えてきたリオンは、普段着慣れない服なのかもじもじとしながら戻ってきた。
「こ、これ……露出が多くて、なんだか恥ずかしい……」
胸元はかなり広く開いており、肩もがっつりでている。
セーターのようなロング丈の服が、ちょうどリオンの膝上あたりが裾になっていた。
ハーフパンツを穿いているのだろうが……見方によっては、その下を穿いてないようにも見える。
「ああ、普段はその上にローブを着るからな。それぐらい布が少ないほうがちょうどいい」
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