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ダクスへ
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宿屋に帰ったころにはもうすっかり夜になっていた。
食堂にはポールが食事を終えワインを飲んでいる。
「おう。どうだった?」
「ポール聞いてよ!すごかったんだよ。温泉。」
出だしは変な男のせいで悪かったのだが、建物の中に入ってからはすこぶる楽しかったのだ。
建物の中に入ると天井の高くいくつかの部屋に別れ、蒸し風呂の様な状態で冷水のプールの部屋や、温水のプールの部屋、オイルの部屋など多岐にわたっているのだ。中には本を読んだり、ゲームに興じたり各々自由に過ごしており、ちょっとしたレジャー施設の様な場所だった。
むろん風呂場なので、みな裸。
裸の呪いなど気にせず過ごせることが何より気が楽だ。
「パンも売ってたんだよ。はい。土産!」
そう言うとポールに温泉で買ったパンを渡す。
興奮して鼻息の荒い私の話を黙って聞いていたポールは、くっくっと笑うとオデコをびしっと人差し指でついてきた。
「お前、楽しみすぎだろ。」
「もう、はしゃいじゃって、はしゃいじゃって。ジャンはまだまだお子様だな。」
くすくすと笑うリシャールは、ワインを飲みながら相変わらず私の頭をわしゃわしゃとかき乱す。
だって、しょうがないじゃないか。
前の世界でもレジャー施設なんて行った経験ないんだし。
なんだか、二人でデートしてるみたいで、少し嬉しかったんだ。
少しむくれながら、髪を整え、テーブルに置かれる食事に手を付ける。
「明日はどうする? 」
「ああ。明日はアドゥール川付近にでも行くか。」
「市の立つ日ではないけどいいか?」
「しかたあるまい。」
2人の会話を聞いていると、どう見ても観光している様にしか見えない。
何か根拠があっての行動なのだろうとは思うが、こんな食堂で込み入った話をするわけにいかないのだろう。
明日は川かぁ。視察楽しいな。
こうして、観光という名の視察をしつつ、3日目の朝となった。
目の前には黒い馬、茶色い馬。まだらな馬が狭い柵の中を歩いたり、草を食んだりしている。
リシャールの怪我は本当に回復が早く、まだ2週間たってないのに、もう馬にも乗れるらしく、彼を乗せた馬は手綱を引かれるままにゆったりと柵の中で歩みを進めている。
順調に馬を乗りこなしているが、走らせるとまだ怪我に響くらしく、とりあえず一匹の馬を調達し、それをリシャールと二人で乗って帰ることになっていた。
ポールはもちろん朝起きると早々に食事を済ませ、先に馬を走らせて帰ってしまっている。
リシャールと遅ればせながらも簡単に食事を済ませると、二人で乗る馬を買いに来たのだ。
柵の外から見ていると、リシャールが乗馬したまま近づいてくる。
「お前の馬になるんだ。気の合うやつを選べよ。こいつはどうだ?」
「え?リシャールはいらないの?」
「俺には相棒がすでにいるからな。お前が使う馬になる。」
馬はトーナメントで手に入れろと、ペトロスに教わっていたが、お金で解決できるならそれに越したことはない。
リシャールの仕えている人は裕福なのか、よほど急いでいるのか。しかしどちらにしても、お金にそんなに困っていないのは確かなのだろう。
私は馬には乗ったことがないのだが、リシャールと帰りがてら教えてもらうという事になっていたのだ。
気が合うも何も、見るのも触るのも初めてで、どうしろというのだろう。
オロオロしているとリシャールが馬から降りると手招きをする。
「来いよ。ほら。撫でてやるんだ。怖がってるとダメだ。嘗(な)められるからな。」
食堂にはポールが食事を終えワインを飲んでいる。
「おう。どうだった?」
「ポール聞いてよ!すごかったんだよ。温泉。」
出だしは変な男のせいで悪かったのだが、建物の中に入ってからはすこぶる楽しかったのだ。
建物の中に入ると天井の高くいくつかの部屋に別れ、蒸し風呂の様な状態で冷水のプールの部屋や、温水のプールの部屋、オイルの部屋など多岐にわたっているのだ。中には本を読んだり、ゲームに興じたり各々自由に過ごしており、ちょっとしたレジャー施設の様な場所だった。
むろん風呂場なので、みな裸。
裸の呪いなど気にせず過ごせることが何より気が楽だ。
「パンも売ってたんだよ。はい。土産!」
そう言うとポールに温泉で買ったパンを渡す。
興奮して鼻息の荒い私の話を黙って聞いていたポールは、くっくっと笑うとオデコをびしっと人差し指でついてきた。
「お前、楽しみすぎだろ。」
「もう、はしゃいじゃって、はしゃいじゃって。ジャンはまだまだお子様だな。」
くすくすと笑うリシャールは、ワインを飲みながら相変わらず私の頭をわしゃわしゃとかき乱す。
だって、しょうがないじゃないか。
前の世界でもレジャー施設なんて行った経験ないんだし。
なんだか、二人でデートしてるみたいで、少し嬉しかったんだ。
少しむくれながら、髪を整え、テーブルに置かれる食事に手を付ける。
「明日はどうする? 」
「ああ。明日はアドゥール川付近にでも行くか。」
「市の立つ日ではないけどいいか?」
「しかたあるまい。」
2人の会話を聞いていると、どう見ても観光している様にしか見えない。
何か根拠があっての行動なのだろうとは思うが、こんな食堂で込み入った話をするわけにいかないのだろう。
明日は川かぁ。視察楽しいな。
こうして、観光という名の視察をしつつ、3日目の朝となった。
目の前には黒い馬、茶色い馬。まだらな馬が狭い柵の中を歩いたり、草を食んだりしている。
リシャールの怪我は本当に回復が早く、まだ2週間たってないのに、もう馬にも乗れるらしく、彼を乗せた馬は手綱を引かれるままにゆったりと柵の中で歩みを進めている。
順調に馬を乗りこなしているが、走らせるとまだ怪我に響くらしく、とりあえず一匹の馬を調達し、それをリシャールと二人で乗って帰ることになっていた。
ポールはもちろん朝起きると早々に食事を済ませ、先に馬を走らせて帰ってしまっている。
リシャールと遅ればせながらも簡単に食事を済ませると、二人で乗る馬を買いに来たのだ。
柵の外から見ていると、リシャールが乗馬したまま近づいてくる。
「お前の馬になるんだ。気の合うやつを選べよ。こいつはどうだ?」
「え?リシャールはいらないの?」
「俺には相棒がすでにいるからな。お前が使う馬になる。」
馬はトーナメントで手に入れろと、ペトロスに教わっていたが、お金で解決できるならそれに越したことはない。
リシャールの仕えている人は裕福なのか、よほど急いでいるのか。しかしどちらにしても、お金にそんなに困っていないのは確かなのだろう。
私は馬には乗ったことがないのだが、リシャールと帰りがてら教えてもらうという事になっていたのだ。
気が合うも何も、見るのも触るのも初めてで、どうしろというのだろう。
オロオロしているとリシャールが馬から降りると手招きをする。
「来いよ。ほら。撫でてやるんだ。怖がってるとダメだ。嘗(な)められるからな。」
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