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回想
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しおりを挟む次の日、戴冠式は盛大に執り行われた。
二日酔いと青アザの双方の腫れた顔で式に参加したリシャールは、夜も連日で催された宴には参加せず、部屋でふて寝した。
招待客たちがランスをあとにする中、リシャールは自堕落に城内を徘徊しながら過ごし、ポールとジェフロアにガミガミと叱られながらも、一向に聞いた様子もなくその日も庭をブラブラとしている。
次はピュルテジュネ王の元にゆく予定なのだが、リシャールの気が乗らないようだった。
「先日はそのー。悪かったな。ちょっと悪酔いしちまって。」
リシャールは、ジェフロア、それにフィリップ、そして先日彼が絡んでしまった少年に出会い、バツが悪そうに話しかけた。
ジェフロアは笑いながら背を伸ばしてリシャールの肩にぶら下がるようにして肩を組む。
彼らは比較的一緒に過ごす時間が多かったせいか、他の兄弟たちよりも仲が良かった。
「リシャールも反省するんだな。」
「おぃ。ジェフ。そりゃねぇだろ。俺だって悪いと思ったら謝るくらいするぞ。」
「俺の記憶の中では、今回が初めてだな。」
リシャールはジェフロアの頭をガシリと捕え、脇に抱え込むとガシガシとかき回し、横ではフィリップがニコニコしている。
「確かにそうかもね。僕も見た覚えが無いよ。ははは。」
「っち。まぁ。良いけどよ。・・・お前も、悪かったな。」
リシャールはジェフロアを開放すると、後ろに控えていた少年に声をかける。
話しかけられた彼は、遠慮がちに会釈をした。
「彼は、クリストフと言うんだ。僕の親友だ。もちろん、ジェフロアもね。」
フィリップはそう言いながら、クリストフの肩に手をかけ自分とジェフロアの間に招き入れる。
ジェフロアが嬉しそうにクリストフの肩を抱くと、クリストフはジェフロアの髪を丁寧に直してやりながら、3人で顔を合わせクスクスと笑っている。
「ふん。お前ら楽しそうだな。まぁフィリップも王になったことだし。大変だろうが、頑張れよ。」
そう言うとリシャールはさっさと城に向かって歩き始める。
リシャールに歩みを合わせようとするジェフロアだが、足の長いリシャールは進むのが速く、少し小走りに追いかけた。
「なんだよ。リシャール。他人事みたいだな。俺は行かないけど、クリスマスは父上の所にいくんだろ? 」
「あぁ。まぁな。・・・胸糞わりぃあの女もいんのかなぁ。」
後ろからのんびりと付いて歩いてきていたフィリップが少し大きな声で答える。
「アデル姉さんはアンジェで静養しているマグリット姉さんの所に行くって言ってましたよ。マグリット姉さん、子どもを亡くして随分落ち込んでいるからって、色々準備して。つい先日に出かけましたよ。」
「・・・そっか・・・あいつらのは・・・仲いいって言うのかな? 」
リシャールは立ち止まると、フィリップに聞いているのか、独り言なのか判らない様子でボソリと言った。
フィリップは尋ねられたと判断したようで、少し首をかしげながらリシャールの顔を見上げる。
「? 仲、良さそうでしたよね・・・? 」
「はぁー。女ってのは、わかんねぇな。まぁ。うるせぇのがいねぇなら気楽でいいね。ルーアンに行きがてら狩りに行くとするかな。」
「え。リシャール。リヨンスに行くの? いいな。俺も行きたいけど・・・。今回はやめとこうかな。」
「ああ。お前ら子どもはおままごとでもしてろよ。」
しっし、と虫を払うかの様な仕草しながら再びリシャールは大股で歩き始めた。
「ははは。リシャールの酔い方見てると、大人とは思えなかったけどね。・・・怪我には気をつけて。」
その言葉を受けて、リシャールは大きな口を開けて豪快に笑いながら振り返るとフィリップを一瞥する。
「おぃおぃ。そりゃ、襲撃の予告か? はっはっは。まぁせいぜい背後から襲われないように気をつけとくよ。」
「リシャール!! なんて言い草だよ! 俺たちお前の背後なんか狙わねだろ! なに言ってんだよ! 」
ジェフロアが本気で怒った様子で怒鳴っている。
それを軽く受け流し、歩きながら振り返ることなく後ろに手を上げる。
「あぁ。そうだな。わりぃな。・・・じゃ、ジェフも元気でな。」
次の日の朝、リシャールはフィリップ王に挨拶をすると、ルーアンからリヨンスへと向かった。
ーーーあとがきーーー
リヨンスは正式には「LYONS LA FORET」で旧名はサン.ドニ.アン.リヨン。森の中に街があるそうです。日本ではちょっと想像つかないので、行ってみたい場所のひとつです。
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