4 / 8
林田ガイコツと決めごと その①
しおりを挟む
「いただきます」
笹本 遊佐は昼食を目の前に、手を合わせてそう呟いた。
高校2年生になって初めての昼食ではあるが、教室の中にはいくつかのグループもう形成されている。今日から一年を通して、このグループたちは崩壊と再結成を繰り返しながら、やがて完成体となる。
「こんなにも丁寧な‘いただきます’は久しぶりに見た気がするよ」
隣でおにぎりを頬張りながら田中は言った。
「喋るか食べるのどっちかにしろよ」
「田中の親かよ、笹本」
笑みをこぼしながら林田がそうツッコミを入れた。
「俺が田中の親だったら間違っても子供に効用なんて名前は付けない」
「んぉい~~それだけは言わんでくれ」
「笹本! さすがにそこまで言うと、てぃりてぃが可哀そうだろ」
林田は田中に追撃を食らわす。にしても…………。
「田中と林田さぁ。意気投合するの早くない?」
確かふたりは去年、別々のクラス……だよな。
「昼休みの前に林田とちょろっと話したんだよ。笹本、居なかったろ?」
「そういやなんで教室にいなかったの?」
田中に続いて、林田も質問した。
「委員会だよ、体育委員」
体力テストの手伝いやらで、体育委員は全員借り出されているわけだ。
「やっぱり笹本ってちゃんとしてるよな」
「わかるかも、笹本ってちゃんとしてる」
チャントシテル? どういう意味だ?
「ドユコト?」
「ほら、さっきのいただきますとか、委員会とか。あ! あと部活でも。俺らのキャプテンじゃん」
「田中と笹本って同じ部活なの?何部?」
林田は俺に視線を送った。
「バスケ部だよ」
「はぇぇ」
林田の目を点にして驚いていた。彼に目などないが。
「知らんかった」
と林田は続けた。てか、知らなかったのかよ。
「去年の体育の時間とか、俺がバスケしてるの見てなんも思わなかったの?」
「うまいなぁ、としか」
「えぇ」
驚きたいのはこっちだ。と、ふと田中のいる方角へ目をやると。笑いをごまかすように三個目のおにぎりを頬張っていた。てぃりてぃ野郎が。
「ごちそうさまでした」
弁当箱を閉じて手を合わせると俺はそう言った。
すると田中が林田にほら見ろといった感じで
「ちゃんとしてるだろ」
と言った。
それに対して林田が
「去年からこの調子だったよ。注目すればするほどちゃんとしてる」
とコメントを残した。
「ほかにも、ちゃんとしてる事あるの?」
林田は俺に目をやる。
どうだろう。
「聞かれると思いつかないな」
田中と林田は数秒、顔を見合わせると、林田が
「今日、笹本に密着していいか?」
と言った。
「ほかにも隠されている笹本のちゃんとを暴き出す」
などと言い出した。
林田の表情は巨悪を追うベテランジャーナリストのようだ。彼の骨にはそんな力がある。
「モードが違くないか?」
「それはオッケーと捉えていいんだな?どう思う、林田」
「異論ないです」
どんな解釈がこいつらの脳内で行われてんだよ。
笹本 遊佐は昼食を目の前に、手を合わせてそう呟いた。
高校2年生になって初めての昼食ではあるが、教室の中にはいくつかのグループもう形成されている。今日から一年を通して、このグループたちは崩壊と再結成を繰り返しながら、やがて完成体となる。
「こんなにも丁寧な‘いただきます’は久しぶりに見た気がするよ」
隣でおにぎりを頬張りながら田中は言った。
「喋るか食べるのどっちかにしろよ」
「田中の親かよ、笹本」
笑みをこぼしながら林田がそうツッコミを入れた。
「俺が田中の親だったら間違っても子供に効用なんて名前は付けない」
「んぉい~~それだけは言わんでくれ」
「笹本! さすがにそこまで言うと、てぃりてぃが可哀そうだろ」
林田は田中に追撃を食らわす。にしても…………。
「田中と林田さぁ。意気投合するの早くない?」
確かふたりは去年、別々のクラス……だよな。
「昼休みの前に林田とちょろっと話したんだよ。笹本、居なかったろ?」
「そういやなんで教室にいなかったの?」
田中に続いて、林田も質問した。
「委員会だよ、体育委員」
体力テストの手伝いやらで、体育委員は全員借り出されているわけだ。
「やっぱり笹本ってちゃんとしてるよな」
「わかるかも、笹本ってちゃんとしてる」
チャントシテル? どういう意味だ?
「ドユコト?」
「ほら、さっきのいただきますとか、委員会とか。あ! あと部活でも。俺らのキャプテンじゃん」
「田中と笹本って同じ部活なの?何部?」
林田は俺に視線を送った。
「バスケ部だよ」
「はぇぇ」
林田の目を点にして驚いていた。彼に目などないが。
「知らんかった」
と林田は続けた。てか、知らなかったのかよ。
「去年の体育の時間とか、俺がバスケしてるの見てなんも思わなかったの?」
「うまいなぁ、としか」
「えぇ」
驚きたいのはこっちだ。と、ふと田中のいる方角へ目をやると。笑いをごまかすように三個目のおにぎりを頬張っていた。てぃりてぃ野郎が。
「ごちそうさまでした」
弁当箱を閉じて手を合わせると俺はそう言った。
すると田中が林田にほら見ろといった感じで
「ちゃんとしてるだろ」
と言った。
それに対して林田が
「去年からこの調子だったよ。注目すればするほどちゃんとしてる」
とコメントを残した。
「ほかにも、ちゃんとしてる事あるの?」
林田は俺に目をやる。
どうだろう。
「聞かれると思いつかないな」
田中と林田は数秒、顔を見合わせると、林田が
「今日、笹本に密着していいか?」
と言った。
「ほかにも隠されている笹本のちゃんとを暴き出す」
などと言い出した。
林田の表情は巨悪を追うベテランジャーナリストのようだ。彼の骨にはそんな力がある。
「モードが違くないか?」
「それはオッケーと捉えていいんだな?どう思う、林田」
「異論ないです」
どんな解釈がこいつらの脳内で行われてんだよ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?
さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。
しかしあっさりと玉砕。
クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。
しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。
そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが……
病み上がりなんで、こんなのです。
プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる