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1章 ロンテーヌ兄妹

53 成人のパーティー1

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今日の夜は、成人のお祝いパーティーがある。

私は王城から帰るとそのまま寝てしまった。疲れていたのかな?あの王様に会ったしね。


お茶の時間を過ぎた頃、エリに起こされた。
「お嬢様、起きてください。パーティーの準備をしますよ」

エリの手にはパーティー用のドレス。ナダルの店で作った、あの薄いグレーのドレスだ。

ドレスを着て髪のアレンジが終わった頃、ランドが部屋に訪れた。

「今いいか?」

部屋に入って来たランドは満面の笑みだ。

「とても美しいよ。お嬢様。本当にグレーがよく似合う」
と、ランドは私の腰を持ち上げくるくる回りだす。

「わっ!わっ!目が回るわ。ランド。降ろしてちょうだい」

ぐるぐるぐる。本当に目が回る。てか、いきなり何?超恥ずかしいんですけど。

「どうしたの?」
パッパッとエリは無言でスカートを直している。

「あぁ。これを。成人の祝いだ」
と、小さな箱を手渡された。

「えっ!いいの。ありがとう」
ランドからも貰えるんだ!やったー!ラッキー!

箱を開けると手のひらサイズの時計が入っていた。

「キレイ。でもこんな高価な物。いいのかしら?」

「あぁ。蝶が好きなんだろう?あの時見ていた物と異なるが、気に入ってもらえると嬉しい」
ランドは気にするなと笑っている。

あの時?あっ!あの時計屋さんで手に取ったやつ!それより大きいし細工が複雑だ。。。高そうだな。

ランドからか。。。大丈夫だよね。

私が思っていた事が分かったのか、
「成人の儀は家族以外の友人からもプレゼントしたりするんだ。気にするな」
ランドはいつものように頭をなでてくれた。

「そう言う事なら。ありがとう、ランド。大切にするわ」
笑顔で返すと、俺も着替えてくると部屋を出て行った。

「よかったですね。お嬢様。ランド様に先越されましたが、私からはこちらです」
と、エリはいくつもの小さな白色の生花で作った髪飾りを着けてくれた。

「わ~。いい匂いがしてすごくかわいい!ありがとうエリ!」

幸せだな~。こんなに幸せで溶けそうだ。

「では、そろそろお客様がいらっしゃいます。エントランスへ降りて行きましょう」


私は、エリと一緒にエントランスへ降りていく。

お兄様がニヤニヤしながら話しかけてきた。
「ジェシーのドレス姿、見慣れてきたけど、やっぱりすごいな。かわいいよ。馬子にも衣装?とか言うやつか?」

「もう、今日は私が主役なんですからね。お兄様!もう成人したんです。ちょっとはレディ扱いをして下さい」
お兄様は『これは失礼』と、一礼し手の甲にキスをした。

「お兄様、今更なんですが、この手の甲にキスは挨拶なんですか?誰にでもするものなの?」

びっくりした顔でお兄様は教えてくれた。
「そうだな~、高貴なご令嬢や恋人、家族、友人。とにかく、したいと思った人にするんだ。特に決まりはないよ。かと言って、誰にでもって訳じゃない。相手によっては下品な感じや不敬になる場合もある。説明が難しいな」

「じゃあ、今私にしたその心は?」

おははははと笑いながら、
「我が親愛なる妹が美しい淑女になったお祝いだよ。敬意を込めて」
と、お兄様は胸に手を当て一礼する。

「そう言う事なら、よろしくってよ」
と、私も笑顔で返す。

「今日は、クリス様一家が来て下さるそうだ。朝に会ったグレゴリーを覚えているか?あいつは騎士科の後輩なんだが、めちゃくちゃ強いんだ。剣じゃなく体術が得意で、素手で魔獣をったことがあるらしいんだ」

早く話が聞きたいと、お兄様はグレゴリーの登場を今か今かと待っている。

「へ~。お爺様といい、お兄様といい。そのグレゴリー様も。ウチは実は騎士の家系なのかしら?」

「どうだろうな?お父様はバリバリの文系だったそうだけど。実は強かったのかな?」

どうなんだろうね~と、言いながらお客様を待つ。

「クリス様一家がお見えになりました」
と、ロダンは玄関で迎い入れている。お爺様はいつの間にか到着していたようだ。

「おぉ~、よく来てくれた。身内だけの小さな宴会じゃが、今宵は楽しんでくれ」
がははははっと、クリス様とお爺様はさっさと会場へ行ってしまった。

「大叔母様や皆様、大変失礼をしました。私たちも参りましょう」
と、短い挨拶をする。

「いえ、いいのよ。あの二人はいつもあんな感じよ。今日は成人のお祝いなんだもの。お義兄様もうれしいのよ。」
ふふふ、とエレガントな熟女が微笑んでる。

「そう言っていただけると、うれしいですわ」

お兄様はグレゴリーと談笑しながら続いて歩く。その後ろには、叔父様夫婦と小さい女の子が付いてくる。


会場のサロンには立食式の食事と飲み物、ケイトのピアノ演奏が流れ、美魔女マーサがグレゴリーを赤くさせていた。

「ごほん。皆グラスを持ってくれ。では、本日はジェシカの為に皆ありがとう。時が過ぎるのは早い。もう15になってしまった。あんなに小さかったジェシカが。。。こうして儂も何かの縁でまた領主に返り咲いた。ははは。腰が続く限りがんばっていこうと思う」

はははははっと、会場が和やかになる。

「儂は王都に屋敷を構えた今、新商品に力を入れて、次期当主のカイデールの為にもロンテーヌ領を盛り立てたい。皆にも協力を願い出るかもしれん。特にクリス一家には世話になるじゃろう。その時はよろしく頼む。さぁ、今日は特別な日じゃ。使用人達も一緒にジェシカを祝って欲しい。我が領は絆が深いのが取り柄であり、自慢でもある。無礼講じゃ!皆、盛大に祝ってくれ!」
お爺様の挨拶で、パーティーが始まった。

「かんぱ~い。おめでとうございます!」
と、色んなところからお祝いの声が湧く。

「ありがとうございます。皆様」
と、今日1番じゃないかと思うくらいのカーテシーを披露した。めっちゃ角度が決まったぜ!王様の時より。ぷぷぷ。

「ジェシカ様、改めまして。この度は成人おめでとうございます。とてもおキレイになられて。叔父様は鼻高々ですね」
と、父の従兄弟にあたるイーグル様が手の甲へキスをしてくれた。

「ありがとうございます」
もう私も慣れたもんだ。てか、叔父さんなら気にならない。

「ジェシカ様。おめでとうございます。とてもお美しいですわ。さすがは公爵令嬢様です。こんなに素晴らしいドレス、本当に羨ましいですわ」
と、おっとりした感じの叔母からもお祝いをもらう。

「ええ。ありがとうございます。まだ、ドレスに着て貰っている感じがしますの。まだまだですわ」
おほほほほっと。

ドレスが最高なのは知ってるよ。とほほほほ。

「こちらは、娘のルーティーナです。まだ、8歳なので大聖堂は控えさせていただいたんです。ご挨拶は?」
ニコニコしながら叔父さんは小さな女の子の背中を押す。

「本日はおめでとうございます。初めまして。ジェシカ様。私はルーティーナです」
と、ちょんとお辞儀をした。

かっ、かわいいんですけど~!!!ちょんだって!ちょっと照れてる!萌える!

「ありがとう。ルーティーナ。これからは同士仲良くしましょう」

「滅相もない。ジェシカ様。我々は分家ではございません。公爵家のなど恐れ多いことです」
イーグル叔父様はアセアセしています。真面目だな~。

「いいんですのよ。叔父様。私はこんなかわいい妹が欲しかったんですの。それに、我が一族は数が少ないでしょう?仲良くして行きましょう。ね」

「いえいえ。我が家は元一族です。しかしながら、今はロンテーヌ家の一大事ですからね。親族の末席で微力ながら尽力させていただきます。学校では、グレゴリーを使ってやってください。力だけはありますから。学校での側近は決まりましたか?」

ん?側近?王族じゃあるまいし。。。てか要るの?

「側近?皆は居るのかしら?」

「はい。21領主にはだいたい付いています。男性の場合は2人ないし3人ほど。カイデール様には確かロッシーニ君が付いていますよ。カイデール様ご自身は騎士ですので、護衛は必要ないでしょうが。。。何せ、ロンテーヌ領は昔からですからね。いやはや。まだ半年もありますし、今からですかな?」
と、イーグル叔父様は汗をカキカキたじろっている。

気を使わせちゃったね。ごめんなさい。少数精鋭=貧乏だからね。ははは。

「そうなのね。まだ聞いていなかったわ。もし、護衛が必要になったらお願いいたします」
ふふふ、では。と叔父様との話が終わる。

そうなの?21領主ってどんだけなの?学校だよ?大袈裟だな。。。嫌だな~。

「よお、お嬢」
トントンと肩を叩かれ、振り向くとやって来たのはリットである。

するとリットは私の手を取り、
「この会場であなたは女神のごとく光り輝いている。とても美しい。今日が俺の夜会なら。。。いや、止めよう。すまん」

手を離し、言い直す。
「ん゛ん。ジェシカお嬢様、成人おめでとうございます」
と、再度手を取り手の甲にキスをした。

「ありがとう。びっくりしたわ」

今、私はリットに手の甲にキスをされても不快感がない。ちょっと照れるけど。

よし。私も気持ちの整理がついたんだな。

「ははは。まだ、挨拶をしてなかったからな。昼間のドレスもそうだが、これもよく似合っている。グッと大人っぽく見えるよ。キレイだ」
と、ニシシシシと笑ってる。

「そう?ちゃんと成人に見えればうれしいわ。大人の仲間入りね。リットも髪を切って余計にかっこよく見えるわ。っと、そう言えば、リットは学生時代、側仕えって居たのかしら?」

「あぁ。そうだな。2人ほど。いきなりどうした?」

「さっき、クリス叔父様からグレゴリーはどうかって言われて。そんな話ケイトから聞いてなかったから。。。要るものなの?」

「要るっていうか、21領主だけは昔から居るんだそうだ。だから、皆何も気にしてないぞ。そう深く考えなくても大丈夫だろ?どうせお嬢は目立ちたくないとか思ってるんだろ?」

その通りである。人を引き連れて歩きたくない。グレゴリーなんか友達感覚で絶対喋ってくれなさそうだし。見たからに真面目そうじゃん。

「そうなんだ。。。どうしてもと言うなら友人のような子が1人でいいや」
ははは、そうも上手くいくかな~とリットも笑ってくれた。

その時、ツカツカツカっとロダンが早足にお爺様の所へ行き耳打ちしている。

珍しいな。お客様の前なのに。。。


ロダンは何かを言うとまた去って行った。何だろう?


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