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1章 ロンテーヌ兄妹

55 成人のパーティー3

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「中は後で見るといい。4日後、王宮に来るように。付き添いはなしだ」

えっ!お爺様ダメなの?しかも王宮って!城の方じゃないじゃん!

「侍者か侍女はよろしいですか?」

「構わんが、同席はできない。護衛もだ。部屋の外で待機となる」

。。。まずい。八方塞がりじゃん。何を話すかはわからないけどさ。

う~んと顎に手を当て悩んでいると、
「何も取って食いはせぬ。心配はいらない。話をするだけだ。私も同席する。あとは、第1騎士団長もだ」

国のトップスリーじゃん。あかん。詰んだ。

「あら。こんな成人したばかりの小娘相手に。。。お戯れを。おほほほほほ」
汗がドバッと出てくる。心臓もドクドクと速い。何か、何か突破策はない?!

「小娘のは承知しているが?」
アダムはニヤッと私を見て、後ろのランドに声をかける。

「あぁ、そうそう、ランド、お前はこちらに身を寄せていたのだな。王女様が探しておられたぞ。数ヶ月前に王都で騒ぎを起こして謹慎をさせられていたが、そろそろ部屋から出る頃だ。王城に護衛で付いて来るのならせいぜい気をつけろよ」
ランドは後ろでがっくり肩を落としている。

「あとは、リットか。。。お前もこちらに居たとは。それにあそこに居るのはマーサ女史だろう?ロダン参謀もご健在のようだし、クライス団長も領主に返り咲き。加えて新商品。。。ロンテーヌ領主は何を狙っているのか」
と、アダムはニヤニヤしながら意地悪なことを言い出した。

そんな事私に言う?何も狙ってねーよ。

「何かの思い違いじゃありませんか?ほほほほほ。たまたまです。たまたま。全ての歯車がたまたま上手くハマっただけですよ。ハマった所で所詮は田舎領。何もございません。アダム様。しかし、ロダンの事をご存知とは、ロダンはそんなにも有名でしたの?」
ちょっと話の方向を変えようか。危ない危ない。

「あぁ、ある意味、私にとっては、だが。あの方の戦略や情報戦は美しいの一言だ。無駄が1ミリもない。加えて、騎士としての腕もある。あの頭脳を田舎に埋もれさせているのが口惜しかったよ。何度か、王のお側へお誘いしたのだが全て断られてしまった。今でも、騎士団達はロダン殿が考えた戦略の資料などを見返す事があるそうだ」

「それほどですか。。。私もすごいな~とは思っていましたが。こんな近くにそれほどまでの人物が!ちょっとロダンの見方が変わりますわね」
ほへ~。すごいを通り越してるよね。超人じゃん!ロダンってホントに謎。

「ロンテーヌ領は今後、新商品のおかげで色々な貴族の思惑に巻き込まれる。ジェシカ嬢も例外ではない。女だからとタカをくくって居ては足元をすくわれるぞ。は公表していないのだからな。女は大概、駆け引きの駒になってしまう。ぼやっとせず、その本性を出していけ」

。。。本性を出せって?そりゃ~はっきり物を言う、前に出るタイプだから、お嬢様としては敬遠されるだろうけど。デメリットも出てくるよね。

「えぇ、でも、目立つのが嫌でして。卒業後はこそっと領にこもって遊ぼうかと思っております。ですので、学校では地味な令嬢として影になる事を狙っていますの」

「はんっ。そんな世迷言。お前の気性ではできないだろ。この私、宰相に物怖じせず堂々と喋る小娘がどこに居る。せいぜい被った猫が剥がれんようにがんばるんだな」

アダム様は挑発するね~。しかもお前って。ダチかよ。でもね~私は乗らないよ。

「まぁ、ほどほどに足掻いてみますよ」
と、ニッコリ。

ふふふふふ、はははははと大人な会話を終了した。なんか会社の取引先のような会話だったな。はは。

は~。4日後か。。。憂鬱。

お兄様はまだエイダ様に捕まっている。グレゴリーはその後ろで無表情だ。あれは、甘いエイダ様の言葉に無の境地になってるな。あはは。一方で、お爺様とトリスタン領主は談笑している。その後ろでは、美魔女マーサがハミルトン相手に話してる。ハミルトンがテンション上がってるのかな?やけに前のめりで話しているなぁ。っと、マーサは私に気づき扇子の影からパチンとウィンクをしてくれた。ははは、ハミルトン相手にされてないじゃん。そりゃそうか。反対側にはクリス様一家が皆で食事を楽しんでいる。ルーティーナがケーキを頬張っているよ。かわいい!ほのぼの三世代家族に癒されるわ~。エリは部屋の隅で微笑みながらその様子を見てるし。食事と言えば、ジャックが私の好きな料理ばかり出してくれるって言ってたよね~。あとでお礼を言わないと。って、ケイトは?あぁ、一応身分的に下がってしまったのかな?今は平民だけど元は子爵だしそんなのよくない?あっ!ケイトにも今朝万年筆を貰ったんだった!

なんて、会場を見渡しながら今日のパーティーの様子を心に刻む。ハプニングはあったが、一気に増えた仲間達や家族に囲まれた、こんな楽しいパーティーを開いてもらって私は幸せだ。

「お嬢、そろそろお開きの時間だ」
ボソッと耳打ちしたリットは、私をお爺様の元へ誘導した。

私に気づいたお爺様はロダンを見、一つ頷いて口を開いた。

「ごほん。失礼。皆様方、今宵も月の女神が夜空に輝く時間になったようです。本日は孫のジェシカの為にお祝いにお越しいただきありがとうございました。名残惜しいですが、今夜はこれにて」
と、お爺様と並んで一礼し、成人のパーティーの幕が下りた。


部屋へ戻る前に、ロダンに王様からの手紙を渡し、夜のテラスへ足を運ぶ。ケイト達には下がってもらった。

秋が始まった夜のテラスは少し冷えて頭がスッキリする。この時間の裏庭は月明かりに照らされてキレイだな~と思いながら、ぼ~と4日後の事を考える。

王様と宰相と騎士団長。さっきのアダム様との会話でチクっと言っていた事が気になる。

『何を狙っているのか?』

そんな風に見えるのか。。。物の見方は三者三様。宰相の思惑か、または王様の思惑か。騎士団長かもしれない。あの時言葉にわざわざしてくれたので気付けたんだよね。って事は、宰相は敵ではない?気付かせてくれた?

は~。宰相、アダム様。最後は対等に話していたように感じたな~。これからどんなスタンスでいけばいいのか。今更、15歳のお子様発言もできないし。。。

は~っと大きなため息をついて椅子で仰向けにのけぞった時、頭上でリットが覗き込んでいた。

「わ~!びっくりした!どうしたの?」
私は思わず椅子から立ち上がる。

「あぁ、姿が見えたから。なんか悩み事か?随分大きなため息だったけど。。。あぁ、王宮行きの事か」
そう言えば、リットは後ろで聞いてたんだよね。

「うん。そう。どうしようかな~って。ここ、少し冷ってするから頭を冷やしたくて。それより、リットも今日は疲れたでしょう?もう休んだら?護衛はいいわよ」

「一曲踊ろう。月明かりがキレイだ」
いきなりリットは笑顔で私の両手を取り、簡単なステップを踏んでリードを始めた。

「えっ!もう!リット!」
と、始めのうちは抵抗したが、私も楽しくなってきて踊ってしまう。

「お嬢、本当にお疲れ様。今日は色んな事が起こりすぎたなぁ。あの宰相様が来たしな~。これからもお嬢の周りは騒がしいんだろうなぁ。。。でも、ちゃんと近くにいるよ。俺はお嬢を守っていくから心配するな」

あぁ、不安が伝わったのかな?優しくされると泣けてくる。

「ええ。いつもありがとう。頼りにしているわ」
と、リットは突然ダンスを止め、私の髪に何かを着けた。

「ん?何?」

「髪飾りだよ。気軽に着けれる物だから安心してくれ。普段用だ。俺からの成人のお祝い。あとで部屋の鏡ででも確認してくれ。よく似合っている」
リットは髪飾りを触りながら笑顔を見せる。

「ありがとう。リット」

「ここは冷える。王宮の事が心配だろうが、明日、ロダン様に相談したほうがいい。部屋まで送るよ」

リットに送って貰った部屋には、下がっていいと言ったのにケイトが待ってくれていた。

ケイトは、『さぁさぁ』と寝る準備の世話を焼いてくれ、私が寝るまでとベット脇の椅子に座ってくれる。



明日、ロダンに相談しなくちゃ。。。


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