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2章 魔法使いとストッカー

54 本のヤバさに気づいたかも

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 『お仕置きの輪』が書かれているページを何度も読み返すが、解呪方法は書かれていない。なぜそんな魔法を思いついたのかとか、本当に日記の延長で魔法の呪文が書かれていただけだった。
 隅から隅まで読んだけど、本当にないなぁ。う~ん。そうこうしていたらロダンが到着した。

「お嬢様、手首の魔法封じの手がかりがあったとか?」

「ええ、でも… 魔法封じっぽい魔法は見つけたのだけれど… 肝心のその魔法の解呪方法が書かれてないのよ」

「そうですか… 他に呪文や魔法陣は書かれていますか?」

「ん? あるわよ。この本は賢者の個人的な日記だったから、先にその部分を読んでいたの。ページの端に書かれていた呪文や魔法陣はさらっと見ただけで飛ばしていたわ」

「では、それを解読してはいかがでしょう? もしかしたら手がかりがあるかもしれません」

「それもそうね」

 ロダンはイーグルと交代し、お兄様と領政の話をし始めた。私はあと少し残っていた日記を読むのを一旦止め、始めのページに戻り呪文や魔法陣を探す。

 統一感はないが、見つかったのは『ピカピカの術』『忘却の彼方』『双子DE身代わり』『神竜の角』『二日酔い止め』『携帯の術』そして『お仕置きの輪』だった。

「ロダン、いくつかあったのだけれど、可能性があるのは『神竜の角』かしら?」

「神竜? グランド様ですか?」

「いえ、水か風の竜と書いてあるわ」

「ほぉ~、具体的には何と?」

「神竜の角に触れながら『~リリース』と唱えると、どんな毒や呪いも解けると書いてあるわ。『サイヤス(初代国王)の奥さんが、奥さん同士の争いで毒を盛られたので、解毒魔法を開発したが、神聖な魔力が必要だったので神竜に手伝ってもらった』と経緯が書いてあるの」

「お妃様同士の争いとはいやはや…」

「だからこの魔法封じにも効くんじゃないかしら? でも『封じ』だから呪いではないわよね。う~ん。この私にかけられた魔法がもし『お仕置きの輪』なら、呪いに当てはまるのかしら?」

 ロダンと私は『う~ん』と二人で頭を傾ける。てか、そもそも他の神竜の居場所ってわかるのかな? 他国だよね?

「その前に、他の国の竜ってどこに居るのかわかるものなの?」

「可能性があるとすればグランド様ですね。聞いてみますか? もしかしたら知っているかもしれませんよ?」

「まだ洞窟に居てくれればいいけど。昨日アダム様に魔法陣を渡してしまったし… 居ないかもよ? そうなるとますます解呪が難しくなるわね」

「そこは大丈夫です。呪文が唱えられるマーサもロッシーニもまだ王城へ召喚されていませんので」

「じゃぁ、間に合うのか。でも出来なかった時が困るわね」

「それはその時に考えましょう。まずは少しでも望みがあるなら、この呪文にかけるのが得策かと」

「じゃぁ、アダム様にグランド様に会えるかどうか、お願いの手紙を書いてみるわ」

「ルーベン様にも同じ手紙をお願いしますね。一応、後見人ですし、洞窟はルーベン様の管轄です」

「… めんどくさいな」

 ここまで静かに話を聞いていたケイトが大きな咳払いをした。やっばっ。

「ごほん。お嬢様、王子様に対してめんどくさいなど… 声に出すのはお止めくださいね」

「… すみません」

 私はケイトの監視のもと、手紙を先に書いた。それにしても賢者の坂井君、面白いな。この『双子DE身代わり』なんて、絶対習得したいし。後で別に書き写しておこっと。

 解呪の手がかりを探す為に途中になっていた日記の続きを再開する。

『~最後に、俺はもう戻れないんだろうな。異世界ものでは定石だし。最後まで俺は四カ国を統一できなかった。いや… このまましない方がいいのか。竜たちの問題もあるし。これで思い残すことは、まぁまぁなくなった。よしよし。って事で、ここからは俺の好きな事をするつもりだ。世界をゆっくり見て周りながら冒険でもしようかな』

 ん? さらっと書いてたけど、竜たちの問題? しかも肝心なところが書かれていない。引っかかるー!

「ロダン、最後まで読み終えたわよ。グランド様に会う前に清書した方がいい?」

「そうですね」

「それで質問なんだけど、この本は個人的な日記だから訳してもいいものかな? どう思う?」

「個人の秘密や悩みなどは省いていいのではないでしょうか。自分がされたら嫌ですし」

「同感。『こんな事書いてあるよ』って感じのまとめを書いておくわ」

「わかりました。後で私も目を通します。あと、もう一つの本もお願いしますね。こんなに早くお嬢様が翻訳できるのなら、グランド様との面会時に全て渡してしまいたいですので」

「そんなに急ぎ? どうしたの?」

「彼らと会う口実を一つでも減らしたいのが本音です。もし間に合わなければ… また考えますので。とりあえずは仕上げる方向でお願いしますね」

 ロダン… もう『嫌いオーラ』を隠しもしないのか。あはは。


 三日後。

「お嬢様、宰相様より来週の水の日に面会の許可が降りました」

「お! 四日後か。それなら二冊とも渡せるわね。は~よかった」

「で? もう一冊はどのような本でしたか?」

「坂井さん… 賢者が晩年に研究した四神の竜についての本よ」

「はぁ? 新竜様の研究… しかし他国も欲しがりそうで、少し危険な感じがしますね。チッ」

「ロダン? 怖いんだけど… それより、これは各竜の特徴とか魔法との関係性なんかが詳細に書かれてるのよ。後で読んで、危険じゃないと私は思う。いや物理的に危険なら、いっそ読まない方が… 内容はともかく、下手に知ってると後々狙われたりして~なんて」

 と、ちょっと怖い顔のロダンにヘラッと笑ってみせる。

「問題ありません。お嬢様だけにこの件の責任を背負わせませんよ。しかし、やはりあいつら… なんてモノをお嬢様に渡してるんだ。わざとか? 日記だけでよかったものを… どう始末を…」

 ロダンは青筋立てながら、もうね、王様たちをあいつら呼びだよ。それに、ケイトったらロダンには『お言葉が』って突っ込まないんだよね。一緒になって頷いて怒っている。

「いやいや、エド様たちも内容がわからなかったから私に翻訳をお願いしたんだし… わざとじゃないんじゃない? とにかく落ち着いて、ね?」

「は~、お嬢様は、だからつけ込まれるんですよ! どこまでお人好しなんですか! 知っているに決まっているでしょう! 中身を丸々理解できていないにしても『こういう事が書かれている本』と口伝で伝わっているはずです。国が何千年と保管しているのですから」

「え~? そうなの?」

「そうです!」

 ロダンはふっかいため息を落としてから、私の警備をさらに強化するようリットと話し合いを始めた。

 でもわかんないじゃんね~。
 本当にエド様たちはわかった上で渡してきたの?
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