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第05話 見かけ倒し
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【百花繚乱!東京青春冒険活劇×第5話“見かけ倒し"】
襲われることは、怖くはない。自分を見失わなければ、大丈夫。
『散れ!そして“無”に還れ!』
かつて銀髪先生が企んだのと同じことを、鋼アルゼは踏襲している。二番煎じに屈する三咲では、もうない。
「私は、逃げない」
鋼アルゼ。
入れ替えると
羽根があるぜ。
更に
跳ね上がるぜ。
【俺に任せろ】
どん!と砂ぼこりが舞って、土の下から筋肉隆々のタンクトップ男が現れる。
彼は一撃でゾンビたちを凪払った。
「誰?」
格闘ゲームのコスプレみたいな風貌の、心強い助っ人。
【猿渡わをん。お前の味方だ】
おおお!一番に師匠と呼ばせている強者の登場だ。
だが、これではあまりにも多勢に無勢だった。
『邪魔するな、負けると分かっていて何故踏ん張る?』
歌うゾンビの首を引っこ抜き、滴る血を振り払ってわをんは答える。
【俺はもう“ドン底”にいるんでね】
堕ちるところまで落ちたら、後は昇るか、這い上がるかしかない。
アルゼは少したじろいだ。
『お、お前の姿など、み、見たくはない!』
真実は。
【破、破、破、破、破!】
猿渡わをんの体に、文字が書き込まれていく。
それはまるで耳なし芳一の夜の姿……。
「あ!」
わをんがガンを飛ばすと、歌うゾンビたちは口をつぐんでゲッソリとした肌を憂う。
それは、“たいそうひんそう”な光景だった。
【俺の目に、濁りはない!】
彼の力は!あらゆる事象から濁点を消し去る力!
故に、自称・師匠!そのガン飛ばしはただの勘!
「ゾンビ歌いそう、濁点消去で“そんひうたいそう”並べ替えると大層貧相!」
アルゼは、あせる。
『俺の歌を聴けぇー!俺の前に、立ちふさがるな!』
大層貧相な群衆の中、痛め付けられたような顔をした音響スタッフが、顔面蒼白になって泣いた。
〈にゃ~!〉
これで、決着。
空が割れて、“虚無”が顔を覗かせる。
何もかも、無ゃ~!
その無から、神崎るれろが身を乗り出す。
今度は弓矢を持っていた。
((あんたの鋼、身ぐるみ剥がして曝してやんよ!))
“い”抜かれて、彼のロック魂の本質が顕になる。
「ロック騙し!」
そう、鋼アルゼに“力”はない。
そう見せ掛けていただけなのだ!
『クソォ……このボケナスがぁ!』
自暴自棄になった彼は、全てのゾンビに辞令を出した。
彼の司令は、四方死期。
『みな、道連れにしてやる!』
意気揚々と高笑い。私たちを皆殺しにするつもりだ。
「そっちがその気なら、戦うまでよ!」
拳と拳がぶつかり合う、その瞬間。
群衆は"貝"になって殻の中に閉じこもった。
バチバチバチ!と明星一番。
《遅くなって悪い、三咲。るれろ、わをん》
何していたの?と聞くまでもなく、言葉を続ける。
《もう、争いごとにはウンザリだ》
なんと、脇にいるのはボケタヌキだった。
【キサマ!】
一番は、わをんを制する。
《彼は、もう仲間だ。彼は“たたかい”を終わらせる方法を知っている》
戦いから“た”を抜けば“貝”になる。
連れてきた甲斐があったというものだ。
『ウウウ……畜生めがぁ……』
さっきまで意気揚々としていた鋼アルゼは、そう言って息を引き取る。
その目はもう、誰も見ていない。
私は彼の最期を看取る。
〈彼は、もう用なしね〉
泣いているスタッフがはき捨てるように言った。
いきようよう
“よう”無しになって、
“いき”引き取って、
誰も“みない”
私が“み”とって、
もう、何も残ら“ない”
《敵はまだいるはずだ》
感傷とは無縁の一番が言った。
【この物語、俺たちは誰かが書いた物語の中にいるんだ】
"地面"から生まれた彼が言うのだから、間違いはないだろう。
私たちは今、"紙面"の中にいる。
((鋼アルゼはオタクだった。私たちと同じ中二病。鋼兄弟においてそれは異端。彼の力は“《腐》捨て威張る《腐》絵ロジック”だったのかもしれない))
並べ替えると“富士ロック・フェスティバル”になった。
余興の終わった会場に、一陣の風が舞う。
誰も彼もがもう知人だ。
「あれ?」
ステージの脇に倒れた白い猫を見つけた。その毛は血で赤く濡れている。
「かわいそう……」
労るように、猫を撫でる。
こうして私はこの身体を“日和ミーシャ”に乗っ取られた。
【第6話 “偽りのつわり” に続く!】
襲われることは、怖くはない。自分を見失わなければ、大丈夫。
『散れ!そして“無”に還れ!』
かつて銀髪先生が企んだのと同じことを、鋼アルゼは踏襲している。二番煎じに屈する三咲では、もうない。
「私は、逃げない」
鋼アルゼ。
入れ替えると
羽根があるぜ。
更に
跳ね上がるぜ。
【俺に任せろ】
どん!と砂ぼこりが舞って、土の下から筋肉隆々のタンクトップ男が現れる。
彼は一撃でゾンビたちを凪払った。
「誰?」
格闘ゲームのコスプレみたいな風貌の、心強い助っ人。
【猿渡わをん。お前の味方だ】
おおお!一番に師匠と呼ばせている強者の登場だ。
だが、これではあまりにも多勢に無勢だった。
『邪魔するな、負けると分かっていて何故踏ん張る?』
歌うゾンビの首を引っこ抜き、滴る血を振り払ってわをんは答える。
【俺はもう“ドン底”にいるんでね】
堕ちるところまで落ちたら、後は昇るか、這い上がるかしかない。
アルゼは少したじろいだ。
『お、お前の姿など、み、見たくはない!』
真実は。
【破、破、破、破、破!】
猿渡わをんの体に、文字が書き込まれていく。
それはまるで耳なし芳一の夜の姿……。
「あ!」
わをんがガンを飛ばすと、歌うゾンビたちは口をつぐんでゲッソリとした肌を憂う。
それは、“たいそうひんそう”な光景だった。
【俺の目に、濁りはない!】
彼の力は!あらゆる事象から濁点を消し去る力!
故に、自称・師匠!そのガン飛ばしはただの勘!
「ゾンビ歌いそう、濁点消去で“そんひうたいそう”並べ替えると大層貧相!」
アルゼは、あせる。
『俺の歌を聴けぇー!俺の前に、立ちふさがるな!』
大層貧相な群衆の中、痛め付けられたような顔をした音響スタッフが、顔面蒼白になって泣いた。
〈にゃ~!〉
これで、決着。
空が割れて、“虚無”が顔を覗かせる。
何もかも、無ゃ~!
その無から、神崎るれろが身を乗り出す。
今度は弓矢を持っていた。
((あんたの鋼、身ぐるみ剥がして曝してやんよ!))
“い”抜かれて、彼のロック魂の本質が顕になる。
「ロック騙し!」
そう、鋼アルゼに“力”はない。
そう見せ掛けていただけなのだ!
『クソォ……このボケナスがぁ!』
自暴自棄になった彼は、全てのゾンビに辞令を出した。
彼の司令は、四方死期。
『みな、道連れにしてやる!』
意気揚々と高笑い。私たちを皆殺しにするつもりだ。
「そっちがその気なら、戦うまでよ!」
拳と拳がぶつかり合う、その瞬間。
群衆は"貝"になって殻の中に閉じこもった。
バチバチバチ!と明星一番。
《遅くなって悪い、三咲。るれろ、わをん》
何していたの?と聞くまでもなく、言葉を続ける。
《もう、争いごとにはウンザリだ》
なんと、脇にいるのはボケタヌキだった。
【キサマ!】
一番は、わをんを制する。
《彼は、もう仲間だ。彼は“たたかい”を終わらせる方法を知っている》
戦いから“た”を抜けば“貝”になる。
連れてきた甲斐があったというものだ。
『ウウウ……畜生めがぁ……』
さっきまで意気揚々としていた鋼アルゼは、そう言って息を引き取る。
その目はもう、誰も見ていない。
私は彼の最期を看取る。
〈彼は、もう用なしね〉
泣いているスタッフがはき捨てるように言った。
いきようよう
“よう”無しになって、
“いき”引き取って、
誰も“みない”
私が“み”とって、
もう、何も残ら“ない”
《敵はまだいるはずだ》
感傷とは無縁の一番が言った。
【この物語、俺たちは誰かが書いた物語の中にいるんだ】
"地面"から生まれた彼が言うのだから、間違いはないだろう。
私たちは今、"紙面"の中にいる。
((鋼アルゼはオタクだった。私たちと同じ中二病。鋼兄弟においてそれは異端。彼の力は“《腐》捨て威張る《腐》絵ロジック”だったのかもしれない))
並べ替えると“富士ロック・フェスティバル”になった。
余興の終わった会場に、一陣の風が舞う。
誰も彼もがもう知人だ。
「あれ?」
ステージの脇に倒れた白い猫を見つけた。その毛は血で赤く濡れている。
「かわいそう……」
労るように、猫を撫でる。
こうして私はこの身体を“日和ミーシャ”に乗っ取られた。
【第6話 “偽りのつわり” に続く!】
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