明星一番! オトナ族との闘い。

百夜

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第13話 唯一無二の希望の光

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【酒池肉林!東京青春冒険活劇×第13話“唯一無二の希望の光”】

“か”足すトロフィーの力は強力だ。

ごますりで誤魔“化”すのはお茶のこさいさい、イ“カ”ス椅子を手に入れたり、足る者にた“か”るのも日常茶飯事。
そして、彼の身体を流れる血には“価”値がある。

カナカナカナカナ……と夏の蝉が鳴けば、“か”は仮名文字になってそれ自体が“カ(ちから)”となる。
無限に+されて増幅し続ける“力”。

『私の血を飲んで、共に永遠に生きないか?』

澤田ゼッケン。その生き様は、まさに“蚊”だ。

「“神”にでもなったつもりなの?沢山の若いメイドに囲まれて。あなたは裸の王様よ?」

“かみ”の本質を“み”破っても、やはり“カ(ちから)”は敗れない。
だからこそ、“勝たす”トロフィーと呼ばれるのだ。

『いつまでも一番を頼るのは止めるんだな、三咲。こっちに“鞍”替えして、“楽”に生きよう』

諭すような囁きは、オトナ族が使う高度な洗脳技術に他ならない。

「貴方はすっかりオトナ族の一員ね」

今の世は格差社会、彼に逆らうことは一生できないだろう。

『フン、オトナ族だって?笑わせる。私たちはもう、充分にオトナだろ?』

立ち上がると、若いメイドが毛皮のコートを彼にかける。ゴージャスな宝石が散りばめられた下品なステッキも用意された。

「若い人たちをそうやって騙して。恥ずかしくないの?」

ガリ勉だった澤田ゼッケンが叶えた願望は、己を頂点とする案外稚拙な代物だった。

『儒教では、年下の者は年上の者を敬わなければいけない』

脂汗をかいたゼッケンの顔がぬめりぬめりと接近してきたので、思わずワインを飲み干した。

目の奥がジンとして、倒れそうになる。

『私は、この世の生き字引なのだ』

いきなり儒教
“いきじ”引きで
なりゆき酔う

『夢の中に生きろ!』

人差し指と中指だけで、私は額を弾かれて倒される。

慌てて近くのメイドを掴むと服が破れる。
カチカチカチカチと時計の音がした。

「“作り”もの!?」

胸のあるべき箇所で歯車が回転している。
はべらせていたメイドたちは、澤田ゼッケンを慰めるための自動人形だった。

ゆっくりと、落ちていく身体……。

「そういうことだったのね!」

中二病の秘密。
卒業してから過ごした不毛な時間。
神出鬼没な明星一番。
鋼3兄弟の暗躍。
腑抜けになる者、ならない者。

全てのピースが揃った時、見えてきた絵はたった1つの単純な事実。

「絶望するとでも思った?一番のことを忘れるとでも?そんなことには、ならない!」

腐ったメイドの足を支える木の棒を取る。
気を失って、女は倒れる。

「やっと“き”付いたの。事実を素直に受け容れることが、私にとっては“きぼう”なのよ」

“ゆ”“め”の中は、
“つくり”もの。
気付けば全てが“ゆ”っくり“め”に動く。

『あがぁあぁあぁああ!!』

棒を振るうと、澤田ゼッケンは椅子ごと倒れた。

「闇に沈めぇ!!!」

ゆっくりめの時間の中で、ゼッケンは不敵に笑う。

『勝ったつもりでいるだろうが、私はひっくり返して見せる。どんな状況でもだ』

だが、今度ばかりは三咲の方が上手だった。

「私には、みんなに誇れる仲間がいるのよ。夢の中ではなくて、現実にね!」

意外な言葉は、ひっくり返しても変わらない。

“いがい”はそのまま遺骸になる。
気付いた私は“生き甲斐”を取り戻した。

夢と現の狭間から、鋼チョスが現れる。

【私から奪ったものを返してもらおうか?】

彼は、この夢の中にとっての闖入者(“ちん”にゅうしゃ)。

力と“カ(ちから)”がぶつかり合う。

カチン!

時計の針が完全に停止した。

【最終話 “遠い日の誓い、軽すぎる思い” に続く!】
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